下痢止めの強さ ロペミンとコデインリン酸の比較

ロペミンとコデインリン酸 下痢止めとしての作用の強さや副作用の違い

ロペミンは純粋な下痢止め、リン酸コデインは咳止めとしてよく見ますが下痢に対しても適応を持っている。

下痢が続いて悩んでいる患者さんが、ロペミンからコデインリン酸に変更となっていたのですが、この2剤どちらが下痢止めとしては強力なんでしょうか。

まずは基本情報、作用機序から。

基本情報

ロペミン(ロペラミド)

適応:下痢症
用法:1日1~2㎎ 分1~2
禁忌:感染性下痢、偽膜性大腸炎、6か月未満の乳児
動態:Tmax≒4.0-6.0h

コデインリン酸塩

適応:鎮咳、鎮痛、激しい下痢症状の改善
用法:1日60mg(力価) 分3
禁忌:多数
動態:Tmax≒0.5-2.0h 

作用機序

下痢は水分分泌の亢進や腸管運動の亢進など様々な原因により起こるが、ロペラミド、リン酸コデインは共に腸管運動を抑えることで下痢を緩和する。

ロペラミド

腸壁内コリン作動性ニューロン機能を抑制し、また、腸管の輪状筋方向の伸展により誘発されるアセチルコリンとプロスタグランジンの放出を抑制する。
また、腸管内の水分、Na、Clの分泌を抑制し吸収する方向に逆転する。

※アセチルコリンだけでなく、プロスタグランジンでも腸管運動は亢進される。

コデインリン酸

腸管内のオピオイド受容体を刺激することで腸管運動を抑制する。



次にどちらのほうが止瀉作用が強いのかについて。

止瀉作用の強さ

蠕動運動の抑制作用の比較ロペラミドのインタビューフォームに記載されている。

ヒマシ油誘発下痢に対するロペラミドの止瀉作用を検討した結果、ヒマシ油投与1時間後における下痢を阻止するロペラミド塩酸塩のED50値は0.082mg/kgで、8時間後まで下痢発現を阻止する ED50 値は 3.54mg/kg であり、ロペラミドの止瀉活性は塩酸モルヒネ、リン酸コデイン、硫酸アトロピンより高かった
(ロペミンインタビューフォーム)
ED50を比較すると、ロペミンはリンコデより20倍程度強いことになるが、通常量はロペミン1回1㎎、リンコデは20mgなので臨床上は同程度となりそうです。

後述する文献の中では、慢性下痢患者に対してロペラミド(4.6㎎)、コデイン(103.5㎎)のトイレ回数の改善具合は同程度だったと報告されている。


副作用の比較

ロペミン

ロペミンの重篤な副作用にはSJS・TEN、イレウス、アナフィラキシーがある。

その他の副作用は頻度が高い順位腹部膨満感(0.32%)、発疹(0.11%)となっており、大きな問題となりそうなものはない。

ただし、1歳未満の乳児においては成人では見られないような中枢系の副作用も報告されているため注意。用量(0.02-0.04㎎/kg/day)を超えると発現しやすいため厳守。


コデインリン酸

コデインリン酸は重篤な副作用に依存性、呼吸抑制、錯乱、気管支痙攣、麻痺性イレウスがある。

また、呼吸抑制の問題から12歳未満への小児への投与は禁忌。


忍容性の比較

副作用の傾向が若干ことなる2剤ですが、どちらのほうが継続しやすいのでしょうか。

こちらの文献では、臨床試験を途中で継続できなくなってしまった人数は同じくらいで、ロペミンでは腹痛や便秘、コデインでは中枢神経系の副作用による脱落が多かったとのこと。
ということで、副作用は全く異なりますが、忍容性は同じくらいなのかもしれません。

まとめ

臨床用量ではロペミンもリンコデも同程度の強さ。

ロペミンは腹痛・便秘の副作用、リンコデは中枢系の副作用により継続できなくなる患者が多い模様。

 2017年8月18日

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