ARBでは心不全による死亡率を減らせない?

ARBを使用しても死亡率や入院を減らすことはできない? ガイドラインのエビデンスとの比較


以前心不全治療薬について、ガイドラインを中心にエビデンスをまとめた(心不全治療薬の選択とエビデンス)が、コクランライブラリで気になるシステマティッレビューを見つけた。

Angiotensin receptor blockers for heart failure.
(Cochrane Database Syst Rev. 2012 Apr 18;(4):CD003040. )


対照患者

症候性(NYHA分類II~IV度)の心不全を有しする左室駆出率(LVEF)≦40%と定義した左室収縮機能不全、またはLVEF>40%と定義した駆出率温存の年齢を問わない男女


対照試験

ARBとACE阻害薬又はプラセボのランダム化比較試験24試験(25051名)

結果

死亡率、入院率、能力障害
→ARBはプラセボまたはACE阻害薬より良好ではなかった

ACE阻害薬にARBを追加投与
→ACE阻害薬単独投与に比べて、死亡リスクおよび全ての入院、能力障害のリスクは低下しなかったが、併用投与患者の方が副作用による早期の投与中止が多かった


結果詳細


・22件の研究(LVEF≦40%の患者17,900名 平均2.2年追跡)

プラセボに比べてARBは
総死亡率[RR 0.87(95%CI 0.76~1.00)]→低下なし
総入院により測定した総罹病率[RR 0.94(95%CI 0.88~1.01)]→低下なし

ACE阻害薬と比べてARBは
総死亡率[RR 1.05(95%CI 0.91~1.22)]→差なし
総入院率[RR 1.00(95%CI 0.92~1.08)]→差なし
心筋梗塞[RR 1.00(95%CI 0.62~1.63)]→差なし
脳卒中[RR 1.63(95%CI 0.77~3.44)]→差なし
有害作用による投与中止[RR 0.63(95%CI 0.52~0.76)]→ARBのほうが優れている

ARBとACE阻害薬の併用では
有害作用による投与中止[RR 1.34(95%CI 1.19~1.51)]→増加


・2件のプラセボ比較研究(LVEF>40%の患者7,151名 平均3.7年追跡)

プラセボに比べてARBは
総死亡率[RR 1.02(95%CI 0.93~1.12)]→低下なし
総入院により測定した総罹病率[RR 1.00(95%CI 0.97~1.05)]→低下なし



さらにARBやACE阻害薬の副作用に記載のある腎機能障害について、12万人について調べたところ投与開始から2ヵ月以内に30%以上低下した患者が1.7%おり、それらの患者では総死亡率が2倍近くになっていたとの報告もある。
(BMJ. 2017 Mar 9;356:j791.)


ガイドライン上にはカンデサルタンによる心不全の進行抑制、死亡率低下に関するエビデンス(ARCH-J試験、CHARM alternative試験)に関して記載がある。

カンデサルタンのみで見たら大丈夫なんでしょうか?

 2017年11月7日

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