LDLコレステロールの基準値 

LDLコレステロールの基準値 動脈硬化学会と人間ドック学会のもめごと


平成26年、日本人間ドック学会は150万人のデータをもとに、LDLコレステロールの基準値を変更する方針との発表がありました。

新基準値案は動脈硬化学会のガイドラインとは全く違う値となっており、これに対し日本動脈硬化学会は見解を発表しました。


それぞれの基準値は以下の通り。
(H28,1.22現在人間ドック学会のHPの基準値は60~119となっており、あくまで基準値案

コレステロールの基準値


この新基準に対してH26.4.4に出された日本動脈硬化学会の見解の要点は以下の通り。


・人間ドック学会の基準値の設定は、がんなどの病歴がなく、高血圧・ 糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症などで薬を服用しておらず、BMI<25kg/m2、収 縮期血圧<130/85mmHg で喫煙習慣がないなどの条件に合致する超健康人のデー タを解析しただけにすぎない


・女性では閉経前後から LDL コ レステロールが高くなるため、女性のみ年齢に応じて基準値が高く設定されてしまっている。


あたかも全患者の基準値であるかのように表現されているが、冠動脈疾患発症のリスクの高さに応じた基準値を設定すべきである。


・動脈硬化学会の基準は、層化無作為抽出された集団の19年追跡調査である NIPPON DATA80に基づいた絶対リスクの評価がされているが、人間ドック学会の基準は疾病予防が考慮されていない




結局のところ、
人間ドック学会のは健康な人の基準であり、疾病予防のための基準ではない!!

といった見解。


その後、お互いに何度か見解が発表されている



H28.8月人間ドック学会から以下の追加説明


”本年4月に、本学会は150万人のデータを基に作成した健診基本検査の「基準範囲」を 策定し中間報告を致しました。しかし中間報告後、大変残念ながら「基準範囲」の正しい 意味が全く理解されないまま、あたかも健診判断値が緩和とか、正常範囲の数値が変わる とか一部マスコミに報道されたことは大変残念でございました
~中略~
本学会としても今回示した「基準範囲」につき、正しい理解を頂くようホームページや パンフレットを通じ広報して参りました。しかし、さらに追加の説明をしてご理解を深め て頂く必要性があると考え、ここに改めて再度「基準範囲」の説明をさせて頂きます。 
~中略~
「基準範囲」とは、国際的定義に従えば「いわゆる健康人の検査測定値を統計学的に解析 し、測定値分布の中央部分の 95%の測定値を含む範囲であります。「基準範囲」は健康人だけから得られた、その分布幅を示すデータであり、検査値を判断する一種の物差しとし て大変有用であります。しかし、これは病気の診断やリスクの評価、さらには治療の目標 のために作成されたものではありません


結局、人間ドック学会の初回の発表の仕方が誤解を生んでしまったということなんですね。


あくまで、
人間ドック学会の新基準健康な人の値を統計的に解析した値であり、治療のための目標ではない


なので、通常薬局にくる治療が必要な患者さんは、疾病の予防を目的としなければ意味がなので、今まで通り140以下を目指せばいいのですね。

話は変わりますが、コレステロールは低ければ低いほど疾患リスクが下がる(実際は下がりません)という記事を目にしたので次回はこの件を考察したいと思います。
こちらの記事です。



コレステロールの摂取基準の廃止について

別件ですが、2015年食事摂取基準の改定により、コレステロール摂取量の上限もなくなりました

このような改定になったのは、コレステロールの摂取量を減らしたからと言って、コレステロール低下作用がみられないとの統計結果がでているためです。

しかし、これは健康な人に対する話であり、日経IDで取り上げらていたメタ解析によると、冠動脈疾患のリスク因子の1つである糖尿病を持つ患者に限定すると、卵消費量が最も多い群の最も少ない群に対する相対リスは1.54(同1.14-2.09)となり、有意な関係が認められたとのこと。(BMJ.2013.346:e8539)

つまり、高LDL、高血圧、糖尿病などの基礎疾患がある場合には、コレステロール摂取量増大によって冠動脈疾患のリスクが高まる可能性があるため、摂取量を無制限にするのは危険なようです。

既にLDLコレステロールが高い方は、摂取量の基準がないからといって食べてすぎていいわけではないので注意です。




まとめ
危険因子、年齢等を考慮し、治療が必要となった場合のLDLコレステロールの基準値は140以下。

人間ドック学会の新基準案治療の必要有無は関係なく、健康診断のデータを解析しただけのもの。

食事摂取基準廃止は健常人に対するもの。基礎疾患がある人は引き続き注意。

 2017/01/22

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