処方解析 ~心房細動・心不全患者~

No.1 心房細動・心不全患者の処方箋


処方はDrによってかなり偏りがある。
クリニックの門前薬局だとそこの処方箋しか見る機会がない。

うちは総合病院前かつ施設も多く受けているのでいろいろなDrの処方を見ることができる。

もっと多くの処方内容を見て、勉強していけたらなと普段思うので、自分のところで見る処方内容を自分なりに解析した記録を載せていこうと思います。


処方内容

ベニジピン4㎎ 1錠 
ビソプロロール5㎎ 1錠 
ダイアート30㎎ 1錠
スピロノラクトン25㎎ 1錠
エナラプリル2.5㎎ 1錠
1日1回 朝食後

エリキュース2.5㎎ 2錠 
1日2回 朝夕食後


患者背景

・心房細動
・心不全
・気管支喘息
・高血圧

処方解析

気になった点は

・心房細動による抗凝固療法はワーファリン、DOACなんでも良いのか
・喘息既往歴があるが、ビソプロロールは問題ないか
・ダイアート、スピロノラクトンが選ばれた理由

これらを中心に解析してみました。

心房細動に対して

心房細動による心原性塞栓症の予防にエリキュース2.5㎎が処方されている。
(80歳以上 or Scr1.5以上 or 体重60㎏以下では1回2.5㎎)

心原性塞栓症の予防には抗血小板薬ではなく、抗凝固薬(ワーファリン、DOAC)が用いられる。

DOAC、ワーファリンは共に心房細動による脳梗塞予防に対してエビデンスレベルAとされているが、DOACのほうが同等以上とされている報告が多い。

納豆などの食事制限を受けたくない人はDOAC、腎機能障害がある場合はワーファリン。

現在のところDOAC間(イグザレルト、エリキュース、プラザキサ、リクシアナ)の有効性や安全性に大差はない

心不全に対して

β遮断薬のビソプロロール、ACE阻害薬のエナラプリル、ループ利尿剤のダイアート、アルドステロン拮抗薬のスピロノラクトンが心不全に対して処方されていると思われる。



β遮断薬(ビソプロロール)
β遮断薬のうち、心不全に対してエビデンスが確立しているのはビソプロロール、カルベジロールの2剤。(β遮断の違いと使分け)

カルベジロールはβ非選択性のため喘息患者には禁忌
ビソプロロールはβ1選択性のため投与可能
ただしβ2を全く遮断しないわけではないため喘息発作には注意(慎重投与)

ビソプロロールを心不全に使用する場合は0.625㎎~開始し、徐々に増量していく。
維持量は1.25㎎~5㎎

さらに今回の患者さんの場合、心房細動も持っているため、レートコントロール目的でもβ遮断薬は有効と考えられる。



ACE阻害薬(エナラプリル)
ACE阻害薬は心不全患者の生命予後、心血管イベントの改善作用が大規模臨床試験で証明されている。※1
(ただし、ARBやACE阻害薬がプラセボと有意差がなかったとするシステマティックレビューもある:ARBでは心不全による死亡率を減らせない?)

ACE阻害薬とARBは死亡率、心血管イベント抑制効果は同等。※1
ACE阻害薬は空咳に注意。

アルドステロンブレイクスルー(アルドステロンが増えてしまう減少)は、機序的にはACE阻害薬で起こるものと考えられそうだが、ARBでも起こる。



ループ利尿剤(ダイアート)
心不全による労作時呼吸困難・浮腫みを改善するうえで、ループ利尿薬は最も優れているが、電解質異常やRA系亢進などにより、長期的にみると予後悪化因子になるという報告がある。※1

ループ利尿薬のみで十分な利尿作用が見られない場合はサイアザイド系の併用を試みる。

ループ利尿薬はサイアザイド系と比べ血圧低下作用が少ないため、血圧に影響を与えたくない場合に使いやすい。

ダイアート、ルプラック、ラシックスの順で作用時間が長い。
利尿作用はダイアートダイアート30mg≒ルプラック4~8mg≒ラシックス20㎎

ダイアートはラシックスより死亡率改善作用が良いとの報告がある。(利尿剤の使い分け)



アルドステロン拮抗薬(スピロノラクトン)
重度心不全患者に対して死亡率低下のエビンデンスあり。※1

スピロノラクトンはカリウム保持作用があり、同じくカリウムを上昇させる恐れのあるACE阻害薬、ARB3剤併用により死亡・入院を増加させるとの報告があるため注意。※1

カリウム製剤との併用は禁忌だが、低下カリウムの場合やループ利尿薬を服用している倍には併用されることもある。

同じアルドステロン拮抗薬のセララと比較すると、ホルモン様作用による副作用はスピロノラクトンのほうが多いが、禁忌はセララより少ない。


※1 慢性心不全治療ガイドライン2010

 2017/12/14

関連記事