透析患者さんへのビスホスホネート製剤投与

透析患者さんにビスホスホネート製剤は投与可能か?


先日透析患者さんのAさんが来局されました。

長年透析をしており、処方変更なんてめったに見ない患者さんでしたが、今回ボノテオ50㎎が追加になっていました。

私の薬局の近くには多くの透析患者さんが来局されますが、ビスホスホネート製剤を投与されている患者さんは他に見たことがありませんでした。

このような経緯からビスホスホネート製剤が透析患者に投与可能か調べてみました。



ビスホスホネート製剤(ボノテオ)の代謝経路


ボノテオ50㎎の添付文書を見てみると、

 ・透析、腎機能障害患者に対して禁忌の記載はなし
 ・慎重投与に重篤な腎障害(排泄が遅延する恐れあり)
 ・尿中未変化体排泄率(腎排泄)0.25%-0.27%48時間)

 
腎排泄0.25%なのに、腎障害があると排泄が遅延?? 


と疑問に思う方もいるかもしれませんが、ボノテオは50㎎飲んでもほとんど吸収されません。(バイオアベイラビリティー:1.2%)

吸収されたごくわずかな量(BA1.2%で計算すると50㎎×0.012≒0.6)が全て尿中に排泄されると、尿中排泄率は0.6/50mg ×100=1.2%(0.25㎎にはなりませんでしたが)ということですね。

ボノテオに限らずビスホスホネート製剤は肝臓(CYP)やグルクロン酸抱合等は全く代謝を受けず腎排泄されます。


ビスホスホネート製剤の蓄積性


透析患者さんでは薬剤が蓄積するのか?

これについては 不明  です。

ビスホスホネート製剤は骨への移行性が高く、24時間後には血中濃度が検出限界以下になってしまいます。
そのため腎障害でどの程度血中濃度が上昇するかは不明。(IFより) 

また、血中に存在しないため、透析による除去もされないと考えられています。

では、蓄積しているかもしれないボノテオを透析患者さんに投与して問題ないのか?

以下はメーカーさんの解答です。
  
ビスホスホネート製剤は骨に長期間骨に沈着してくれます。
このおかげで製剤上の工夫なしで1週間、1か月製剤と簡単に開発されてきました。

析患者でも基本的に骨に沈着しており、血中濃度が上昇するわけではないため問題はないとのこと。

なるほど…血中濃度は上昇しない(検出限界以下)から別に問題ないんじゃないってことですか。


透析除去されず、肝代謝を全く受けないというのを見ると、透析患者さんでは1回飲んだら一生体から抜けないんじゃないかと思いましたが…

実際は透析除去でもわずかに抜けていると思わるのと、静注した際のデータを見ると糞便中にもわずかに含まれているためそんなことはないようです。


余談ですが、ボノテオ11回の場合1㎎ですが、1ヵ月製剤は50㎎です。
1㎎×30日で30㎎ではなく50㎎となったのは、50mのほうが1㎎を毎日服用していた場合の臨床成績と近かったからとのこと。


透析患者に禁忌のビスホスホネート製剤

ビスホスホネート製剤の中でも、透析患者(腎障害)に禁忌となっている薬剤もあります。
 
透析患者に禁忌:リセドロン(商品名:アクトネル、ベネット)、エチドロン(商品名:ダイドロネル)
H29.1.15時点

ですが、禁忌理由は排泄遅延による蓄積となっており、上記理由を踏まえればこちらも投与はできるのではないかと思われます。



まとめ

透析患者さんに対してビスホスホネート製剤は減量なしで投与しても問題ない(と考えられる) 
・添付文書上は禁忌の薬剤もある。リセドロン(アクトネル、ベネット)、エチドロン(ダイドロネル)
 2017年1月15日

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