鎮痛薬の強さ比較

痛み止め・解熱剤(NSAIDs)の強さ比較 使い分けは? 

これまでカロナール、イブプロフェン、ロキソニン等を比較してきたが、今回は各NSAIDsについて比較されているデータを網羅的に拾ってみました。


※個々の比較は以下の各薬剤別の記事参照。

基本

鎮痛剤の種類

強オピオイド(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ブプレノルフィン)
弱オピオイド(コデイン、トラマドール)
非オピオイド(NSAIDs、アセトアミノフェン)

当たり前ですが、基本は強オピオイド>弱オピオイド>非オピオイドの順で強い。

オピオイドに関しては割愛。


鎮痛剤(NSAIDs)の強さ

人によって異なるし、たいして変わりないもの、正直比較する意味はないのかもしれませんが、様々な試験結果を一覧にしてみました。

以下は薬価収載されている主なNSAIDsとその適応。

NSAIDsの種類

成分名 商品名 発熱適応※1 鎮痛適応 備考
アスピリン バファリン 感冒の解熱
アセメタシン ランツジール × PD(イドメタシン)
アンピロキシカム フルカム × PD(ピロキシカム)
アンフェナク フェナゾックス ×
イブプロフェン ブルフェン
インドメタシン インテバン
エトドラク ハイペン × COX2選択
オキサプロジン アルボ ×
ケトプロフェン ケトプロフェン × 内服なし
ザルトプロフェン ペオン × COX2やや選択性
ジクロフェナク ボルタレン
スリンダク クリノリル ×
スルピリン スルピリン × ピリン系
セレコキシブ セレコックス ×
チアプロフェン スルガム ×
チアラミド ソランタール 塩基性NSAIDs
ナブメトン レリフェン × COX2選択性
ナプロキセン ナイキサン ×
ピロキシカム バキソ × COX2選択性
プラノプロフェン ニフラン
フルフェナム酸 オパイリン
フルルビプロフェン フロベン ×
プログルメタシン ミリダシン × PD(インドメタシン)
メフェナム酸 ポンタール
メロキシカム モービック × COX2選択性
モフェゾラク ジソペイン ×
ロキソプロフェン ロキソニン
ロルノキシカム ロルカム × COX2選択性

※急性上気道炎における解熱の適応があるもの
※PD:プロドラッグ
バファリンA330、インテバンSPは販売中止



解熱剤としての強さ
表の通り、解熱剤として使用できる薬剤は限られている。

解熱剤の個人的な印象は、
・バファリン:最近はほとんど使われない。何故でしょう。A330は販売中止
・インテバン:胃腸障害が多いので、あまり使われていない印象。販売中止。PDのインフリー、アセメタシンはある。
・ポンタール:喉痛いときにシロップの処方を見る程度。
・スルピリン:ピリン系。原末と注射しかない。処方見たことない。
・ボルタレン:ロキソニンでダメな時にたまに見る。鎮痛処方が多い。
・ロキソニン:胃腸障害がボルタレンより少なく処方頻度が多い。
・ブルフェン:カロナール効かない小児に。カロナールと同等以上。副作用も同程度。
・ソランタール:COX阻害ではないが、一応アスピリン喘息に禁忌。胃にやさしい。

インタビューフォームの情報
・アスピリン1500mg/日とポンタール1500mg/日で同等。
・ボルタレンはインテバンよりやや強い。(動物、用量無視)
・ロキソニンはインテバンの1~3倍(動物、用量無視)
・ブルフェンはアスピリンの20倍。(動物、用量無視)


合わせられるものを合わせると、
ボルタレン(≧?)ロキソニン≧インテバン、ブルフェン、(ソランタール?)>カロナールといったところでしょうか。

ソランタールはCOX阻害作用ではないので、胃腸障害は少ない。
また、NSAIDsで蕁麻疹や血管浮腫が出てしまった場合でも問題なく使えるとの報告がある

他の薬剤との比較試験が見つからないので、強さは不明ですが、マイルドと言われている。


鎮痛作用の比較と個々の特徴
こちらはほぼすべての薬剤で適応あり。
リウマチや歯科領域の適応が有無等違いはありますが、とりあえず鎮痛作用を比較いている試験を羅列してみました。(基本各インタビューフォームより。有効率:軽度改善は除外、腰痛、変形性関節症に関してはほとんどの薬剤で70-80%以上なので記載していない。)
それ以外に別途報告がある薬剤はその内容を記載。

※スルピリン、チアラミドはデータなし
※用量は1回量ではなく、基本1日量、用法は添付文書での用法
※比較試験の結果有効性が示されたと記載のあるものは同等と表現。(同等以上の可能性もあり)
※試験の質や臨床的に意味がないもの、非臨床試験の結果等エビデンス不十分なものも記載。

アスピリン(バファリンA330→販売中止)

・他剤比較試験なし。リウマチに対する有効率は30-50%。


アセメタシン、インドメタシン、プログルメタシン(ランツジール、インテバン:販売中止、ミリダシン90mg)

・アセメタシン、プログルメタシンはインドメタシンのプロフドラッグで解熱・鎮痛作用はインドメタシンと同等との記載。
・アセメタシン:リウマチに対する有効性35%。その他も50%前後と低め。ただし、インテバンSPの試験を見ると65%となっている。アセメタシンとインドメタシンは同等とされているので矛盾する。やはり直接比較ではないのであくまで目安。


アンピロキシカム、ピロキシカム(フルカム13.5mg、27mg、バキソ10mg、20mg)

・胃腸障害軽減目的でピロキシカムをPD化したものがアンピロキシカム。
・アンピロキシカムはピロキシカムと比べ、鎮痛作用は同等、胃腸障害は減少しているとの記載。
アンピロキシカムVSアセメタシン:鎮痛作用同等(動物)、胃腸障害はアンピロキシカムで少なかった。
・アンピロキシカム、ピロキシカムともにリウマチに対する有効性30-40%。
抗炎症作用、鎮痛作用がロキソプロフェン、ナブメトン、インドメタシンより大きいとの記載。(動物)
→インテバン、ランツジール≒フルカム、バキソ(動物、用量無視)



アンフェナク(フェナゾックス50mg)

・ジクロフェナク、インドメタシンより胃腸障害が比較的少ないとの記載。
ジクロフェナク、インドメタシンと同等以上の鎮痛作用を示す。(二重盲検比較試験)
・抗炎症作用はジクロフェナクより強く、インドメタシン、ケトプロフェンと同等。(動物)
・鎮痛作用はジクロフェナク、ケトプロフェンより強く、インドメタシンと同等。(動物)
・リウマチに対する有効性は30-60%。
→フェナゾックス≒インテバン≧ジクロフェナク、ケトプロフェン



イブプロフェン(ブルフェン100mg、200mg)

・鎮痛作用はアスピリンの30倍、解熱作用はアスピリンの20倍との記載。(動物)
・リウマチに対する有効性は40-70%
・小児適応あり(5歳~)
→イブプロフェン>アスピリン(動物、用量無視)


エトドラク(ハイペン100mg、200mg)

・以下3剤との比較試験がある。エトドラク400mg/日とインドメタシン75mg/日(対リウマチ、関節症)、ジクロフェナク75mg/日(対腰痛)と同等、ケトプロフェン150mg/日(対外傷、術後)より優れている。※1
・ただし、リウマチの有効率は25%との記載。
・軽度~中度腎障害では用量調整不要との報告あり。※12
・安定した肝機能障害(肝硬変)では用量調整不要との報告あり。※11,12
→エトドラク400mg≒インドメタシン75mg≒ジクロフェナク75mg≧ケトプロフェン150mg



オキサプロジン(アルボ100mg、200mg)

・鎮痛作用はアスピリンよりはるかに強いとの記載。(動物)
・リウマチに対する有効性は50%。
→オキサプロジン>アスピリン(動物、用量無視)


ザルトプロフェン(ペオン80mg)
・鎮痛作用はインドメタシン、 プラノプロフェン、ジクロフェナク、ケトプロフェン、メフェナム酸、ロキソプロフェンよりも約3~28倍の強い効果(動物)
・リウマチに対する有効性は25-55%。
→ザルトプロフェン>インドメタシン、 プラノプロフェン、ジクロフェナク、ケトプロフェン、メフェナム酸、ロキソプロフェン(動物、用量無視)


ジクロフェナク(ボルタレン25mg)

・口腔領域の術後鎮痛ジクロフェナク75mg/日はインドメタシン75mg/日は同等(二重盲検)
・※1にはインドメタシン、イブプロフェンより強いとの記載。
・鎮痛作用はロキソプロフェンより強い。(動物)
・抗炎症作用はフルフェナム酸より強い。
・リウマチに対する有効性は45-50%。
・変形性関節炎に対して最も有効であったとするメタ解析あり。※6,9
・ジクロフェナク (150 mg/日) は、セレコキシブ (200 mg/日)、ナプロキセン (1000 mg/日)、イブプロフェン (2400 mg/日) よりもリウマチ、変形性膝関節症に有効。※10
・ジクロフェナク150㎎≒ナプロキセン500㎎との報告あり※13
・ジクロフェナク12.5㎎でアセトアミノフェン(カロナール)500㎎程度との報告もあり※14
・腎機能低下患者に対して使う場合でも減量不要。※15 (ただし腎機能悪化に注意。)
→ジクロフェナク75mg≒(≧?)インドメタシン75mg≧ロキソプロフェン、イブプロフェン
→ジクロフェナク15mg>セレコキシブ200㎎、ナプロキセン1000㎎、イブプロフェン2400㎎


スリンダク(クリノリル50mg、100mg)

アスピリン(対肩関節周囲炎)、インドメタシン(対頸肩腕症候群)と同等(二重盲検比較試験、用量不明)
・鎮痛作用はイブプロフェンの10倍強い。(動物)
→スリンダク≒インドメタシン≒アスピリン>イブプロフェン


セレコキシブ(セレコックス100mg、200mg)

・変形性膝関節症、腰痛:ロキソプロフェン180mg/日とセレコキシブ200mg/日で同等(二重盲検比較試験)
・リウマチ:ロキソプロフェン180mg/日とセレコキシブ400mg/日で同等(二重盲検比較)
→セレコキシブ200mg≒ロキソプロフェン180mg


チアプロフェン(スルガム100mg、200mg)

インドメタシン、 アスピリン、イブプロフェンと同等(二重盲検比較、用量不明)
・鎮痛作用はインドメタシンと同等以上。(動物)
→チアプロフェン≒インドメタシン≒アスピリン≒イブプロフェン


ナブメトン(レリフェン400mg)

・リウマチ、変形性関節症:ナブメトン800mg/日とインドメタシン75mg/日で同等(二重盲検比較)
・ナブメトンの活性は、インドメタシンの 1/45、ピロキシカムの 1/40、ジクロフェナクナトリウムの 1/8、ナプロキセンの 1/6 であったが、アスピリ ンの 1.8 倍の活性(動物)
→ナブメトン800mg≒(≦?)インドメタシン75mg(≦?)ピロキシカム、ジクロフェナク


ナプロキセン(ナイキサン100mg)

・イブプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナクとの比較試験があるが、内容不明。
→イブプロフェン≒インドメタシン≒ジクロフェナク?


プラノプロフェン(ニフラン75mg)

・鎮痛作用はインドメタシン,イブプロフェン,アスピリンより強い。(動物)
・リウマチへの有効性は33%。
→プラノプロフェン>インドメタシン、イブプロフェン、アスピリン(動物、用量無視)


フルフェナム(オパイリン125mg、250mg)

・リウマチ以外:オパイリン750mg/日とイブプロフェン600mgで同等(二重盲検比較)
オパイリン750mg/日とアスピリン1500mgで同等(二重盲検比較)
→フルフェナム750mg≒イブプロフェン600mg≒アスピリン1500mg


フルルビプロフェン(フロベン40mg)

フルルビプロフェン120mg/日は、アスピリン2000mg/日(対リウマチ、変形性関節症、腰痛)、インドメタシン75mg/日(リウマチ、変形性関節症)、イブプロフェン600mg/日(リウマチ、腰痛)と同等(二重盲検比較)
・リウマチに対する有効性は45-80%。
→フルルビプロフェン120mg≒アスピリン2000mg≒インドメタシン75mg≒イブプロフェン600mg


メフェナム酸(ポンタール250mg)

・リウマチ:メフェナム酸1500mg/日はイブプロフェン1200mg/日より優れていた。※2
・リウマチ:メフェナム酸1500mg/日はフルルビプロフェン150mg/日、スリンダク150mg/日で大きな差はなし(二重盲検比較)※3
・捻挫:メフェナム酸1500mg/日はピロキシカム20mg/日で同等?※4
→メフェナム酸1500mg≒イブプロフェン1200mg≒フルルビプロフェン150mg≒スリンダク150mg(≒?)ピロキシカム20mg


メロキシカム(モービック5mg、10mg)

・リウマチ:メロキシカム10mg/日とピロキシカム20mg/日で同等(二重盲検比較)
・変形性膝関節症:メロキシカム10mg/日とジクロフェナク75㎎mg/日で同等(二重盲検比較)
・腰痛、肩関節周囲炎,頸肩腕症候群:メロキシカム10mg/日とインドメタシン75㎎mg/日で同等(二重盲検比較)
→メロキシカム10mg≒ピロキシカム20mg≒ジクロフェナク75mg≒インドメタシン75mg


モフェゾラク(ジソペイン75mg)

・歯科領域:モフェゾラク150mg/回とメフェナム酸500mg/回で同等。※5
・腰痛、肩関節周囲炎,頸肩腕症候群:モフェゾラクはロキソプロフェン、ジクロフェナクと同等。(用量不明)
→モフェゾラク150mg≒メフェナム酸500mg(≒?)ロキソプロフェン、ジクロフェナク


ロキソプロフェン(ロキソニン60mg)

・リウマチ:ロキソプロフェン180mg/日はインドメタシン75mg/日と同等(二重盲検比較)
・腰痛、肩関節周囲炎,頸肩腕症候群:ロキソプロフェン180mg/日はイブプロフェン900mg/日と同等(二重盲検比較)
・抜歯後:ロキソプロフェン60or120mg/回はメフェナム酸500mg/回と同等。
→ロキソプロフェン180mg≒インドメタシン75mg≒イブプロフェン900mg
→以前の記事:セレコキシブ≒ロキソプロフェン


ロルノキシカム(ロルカム2mg、4mg)

・リウマチ:ロルノキシカム12mg/日はインドメタシン75mg/日と同等(二重盲検比較)
・変形性膝関節症、腰痛、肩関節周囲炎,頸肩腕症候群:ロルノキシカム12mg/日とジクロフェナク75㎎mg/日で同等(二重盲検比較)
・抜歯後:ロルノキシカム8mg/回はメフェナム酸500mg/回と同等。(二重盲検比較)
→ロルノキシカム12mg≒インドメタシン75mg≒ジクロフェナク75mg



ざっくりなまとめなので、今後文献や詳細不明な部分のデータ、以前比較した記事をまとめながら随時更新予定。
最終的にすべて力価順に並べてみたいですね。


薬物動態:作用発現時間、作用持続時間

インタビューフォームより抜粋(記載がないものは文献検索)
成分名 商品名 COX選択性 用法 Tmax T1/2 発現時間 尿中未変化体
排泄率
アスピリン バファリン配合錠A330 1日2-3回 0.69 0.83 IF記載なし 不明
イブプロフェン ブルフェン 1日3回 2.1 1.8 IF記載なし 検出限界以下
インドメタシン
ファルネシル
インフリー 1日2回 5.6 1.5 IF記載なし 4%
(インドメタシン)
エトドラク ハイペン COX-2選択 1日2回 1.4 6.03 IF記載なし 15-16%
ザルトプロフェン ペオン COX-2やや選択性 1日3回 1.17 α:0.87
β:9.08
IF記載なし 少ない
(数値不明)
ジクロフェナクナトリウム ボルタレン SR:1日2回
錠剤:1日3回
SR:7.0
錠剤:2.7
SR:1.51
錠剤:1.2
錠剤:15-45min わずか
(数値不明)
スリンダク クリノリル 1日2回 (代謝物)4.3 α:3-4
β:15-18
IF記載なし 1)ほぼなし
(活性代謝物)
セレコキシブ セレコックス COX-2選択性 1日2回 2 5-9 IF記載なし <3%
チアラミド ソランタール 1日3回 0.9 1.59 IF記載なし 少ない
(数値不明)
ナプロキセン ナイキサン 1日2-3回 2-4 14 IF記載なし 不明
ピロキシカム バキソ/フルカム COX-2選択性 1日1回 36 IF記載なし 0.8%
プラノプロフェン ニフラン 1日3回 1.9 α:1.3
β:5.4
0.5~1h 1.3%
フルフェナム酸 オパイリン 1日3回 3 1) 5-22 IF記載なし 12.2%※3
メフェナム酸 ポンタール 6h 毎 2 不明 IF記載なし 不明
メロキシカム モービック COX-2選択性 1日1回 27 IF記載なし <0.8%
ロキソプロフェン ロキソニン 1日3回 (代謝物)0.8 1.3 30分 2.2%
ロルノキシカム ロルカム COX-2選択性 1日3回 0.5 2.5 IF記載なし 検出限界以下




NSADIs間での有効性の違いはあるか

がん性疼痛に対してはNSAIDs間での差はないとされている。

また、慢性腰痛に対してもNSAIDs間で有効性に差があるとするエビデンスはない。
※6ガイドラインに以下の記載がある。

"慢性腰痛に対するNSAIDsの有効性を検証したシステマティックレビューでは、プラセボと比較して鎮痛効果と運動機能の改善は軽微であり、NSAIDsの種類による有効性の違いは見いだせないとしている。"

ただし、※6,9のように変形性関節症にはジクロフェナク150mg/日が最も有効とするシステマディックレビューもあったり、疾患ごとにエビデンスを有する薬剤あり。


NSAIDs間での消化管出血リスク


消化管出血のリスクの違い

消化管出血リスクについて消化性潰瘍診療ガイドラインに以下の図が記載されている。

COX2選択性薬剤は明らかにCOX非選択性より消化管出血リスクが少ないとのこと。


消化器症状全般の違い

消化器症状(下部、上部消化管合併症)のリスクになると、セレコキシブでもプラセボより増加しているが、他の薬剤と比較すると低め。

※観察研究のみを対象としたメタアナリシス※7



各ガイドラインにおける記載

慢性疼痛治療ガイドライン※6

エビデンスレベルついて
1:使用するorしないことを強く推奨
2:使用するorしないことを弱く推奨

エビデンスレベル
A~Dの順にエビデンスレベルが高い

NSAIDs

・NSAIDsの運動性疼痛に対するエビデンスは1A(使用することを強く推奨)
・神経障害性疼痛に対するエビデンスは2D(使用しないことを弱く推奨)
慢性腰痛症に対するNSAIDsの有効性を検証したシステマティックレビューでは、プラセボと比較して16週目まで有意に改善はしていたがその大きさは小さい
・解析対象のRCTが観察期間が短期であり、長期使用の安全性は不明
・米国内科学会「腰痛に対しる非侵襲的治療のガイドライン」では、慢性腰痛に対して運動療法、リハビリでも改善しない場合にNSAIDsが第一選択とされている。
変形性関節症に対する76のRCTを解析したシステマティックレビューでは、NSAIDsはプラセボと比較して有効。(特にジクロフェナク、ナプロキセン、イブプロフェンで効果が高く、ジクロフェナクが最も効果が見られていた。
変形性膝関節炎に対する局所療法(外用剤)の有効性を検討したシステマティックレビューにおいて、ケトプロフェン、ジクロフェナクがプラセボより10~15%程度改善
・セレコキシブの有効性を検証したシステマティックレビュー(36のRCTを解析)では、従来のNSAIDsと比較してわずかにセレコシブ有意。
・神経障害性疼痛に対して有効性を示す質の高い試験はなし。


アセトアミノフェン(カロナール)

・腰痛に対して急性腰痛に対してはQOLの改善無し、慢性腰痛に対しても有効性を示す質の高いRCTが存在しない。(システマティックレビュー)
・アセトアミノフェンに比較してセレコキシブが優位に鎮痛効果が高い。(RCT)
・変形性関節症に対して、アセトアミノフェンの有効性はRCTによって結果が乖離→アセトアミノフェン3000~4000mg/dayで有効性なし、3000㎎+運動療法の併用では有効。
・システマティックレビューでは、アセトアミノフェンの有効性は非常に低く、短期間に限られるとされている。
・米国内科学会ガイドラインでは2017年に慢性の腰痛治療にアセトアミノフェンは推奨していない。
・片頭痛に対しては1000mgにてプラセボより有意に有効。


ノイロトロピン

・神経障害性疼痛ガイドラインでは2次選択
・慢性疼痛ガイドラインでは推奨2エビデンスDと低い。(RTCが3報あるが、古く小規模であるため)。安全性は高いので他無効時に選択肢として。


変形性膝関節症のガイドライン※8

アセトアミノフェン

4 g/日以下は軽症から中等症の膝OA治療の経口鎮痛剤となりうる。効果がない場合、または重症な疼痛や炎症が生じた場合は,効果や副作用の種類を考慮して他の薬物理療への変更を考慮すべきである。


NSAIDs

症候性の膝関節OA患者では,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を最小有効用量で使用すべきであるが、長期投与は可能な限り回避する.消化管障害(GI)リスクの高い患者では選択的COX-2阻害薬または非選択的NSAIDsとともに消化管保護のためプロトンポンプ阻害薬もしくはミソプロストールの併用投与することを考慮する。ただし、CVリスク因子のある患者では、非選択的薬剤か選択的COX-2 阻害薬かを問わず、NSAIDsは注意して使用する。

外用のNSAIDsおよびカプサイシン(トウガラシ抽出物)は、膝関節OA患者における経口鎮痛薬/抗炎症薬への追加または代替薬として有効である。

※上記推奨はRCTのメタ解析の報告があり、推奨Ⅰa






※1 麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン第3版 公益社団法人日本麻酔科学会
※2 Med J Aust. 1976 Nov 27;2(22):819-21.
※3 Curr Med Res Opin. 1979;5(10):754-8.
※4 Curr Med Res Opin. 1988;10(10):645-51.
※5 高橋庄二郎 他:日本口腔外科学会雑誌 1990;36(10):2403-2414  
※6 慢性疼痛治療ガイドライン
※7 Drug Saf 2012; 35 (12): 1127-1146
※8 変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告OARSIによるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン(日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会による適合化終了版)
※9 BMJ 2021; 375 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.n2321 
※10 Arthritis Res Ther. 2015 Mar 19;17(1):66. doi: 10.1186/s13075-015-0554-0.
※11 Clin Pharmacokinet. 1994 Apr;26(4):259-74. 
※12 Clin Rheumatol. 1989 Mar;8 Suppl 1:25-35. 
※13 Am J Med. 1986 Apr 28;80(4B):81-7.
※14 J Orofac Pain. 2003 Summer;17(3):237-44.
※15 J Family Med Prim Care. 2021 Jul;10(7):2450-2456. 
 2018年12月22日

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