ARBの特徴と使い分け 強さの比較
ARBの種類
・アジルサルタン(アジルバ)
・オルメサルタン(オルメック)
・テルミサルタン(ミカルディス)
・カンデサルタン(ブロプレス)
・イルベサルタン(イルベタン、アバプロ)
・バルサルタン(ディオバン)
・バルサルタン(ディオバン)
・ロサルタン(ニューロタン)
作用機序
ARBはアンギオテンシンⅡ受容体(AT受容体)のうち、AT1を選択的に阻害することで、降圧作用、心肥大やNa貯留を抑制する。
各薬剤の特徴
アジルサルタン(アジルバ)
・適応は高血圧のみ。
・最大投与量40㎎。T1/2≒12h
・降圧作用が強力といわれている。
・透析で除去されない。
・透析で除去されない。
オルメサルタン(オルメテック)
・適応は高血圧のみ。
・最大投与量40㎎。T1/2≒7.5h
・降圧作用はアジルバの次に強力。(同等とも※1)
・アルドステロンブレイクスルーを起こしにくい。※2
・アルドステロンブレイクスルーを起こしにくい。※2
・透析での除去データなし(タンパク結合99%のため除去されない可能性大。)
テルミサルタン(ミカルディス)
・適応は高血圧のみ。
・最大投与量80㎎。T1/2≒20h
・半減期が最も長く、早朝高血圧に向いている。
・ほぼ完全肝代謝型(胆汁排泄)。(尿中未変化体0.02%↓)
・胆汁分泌の悪い患者、重篤な肝機能に禁忌。
・胆汁排泄のためCYPには影響しない。
・PPARγ活性化=脂質代謝の改善、糖尿病の改善作用がある可能性?※3,4
・胆汁排泄のためCYPには影響しない。
・PPARγ活性化=脂質代謝の改善、糖尿病の改善作用がある可能性?※3,4
・透析で除去されない。
カンデサルタン(ブロプレス)
・適応は高血圧、腎実質性高血圧、慢性心不全。
・最大投与量は高血圧12㎎、その他8mg。T1/2≒20h
・12㎎錠は心不全の適応なし。
・心不全、心血管イベント抑制のエビデンス大。(対プラセボ66.7%)
・透析で除去されない。
・透析で除去されない。
イルベサルタン(イルベタン、アバプロ)
・適応は高血圧のみ。
・最大投与量は200㎎。T1/2≒13h±15
・CYP2C9及びグルクロン酸により代謝(尿中未変化体0.3-1.3%)
・CYP2C9阻害作用はほとんどなく相互作用は問題にならない。
・透析で除去されない。
バルサルタン(ディオバン)
・適応は高血圧のみ。
・最大投与量は160㎎。T1/2≒4h
・6歳以上の小児に適応あり。(35㎏<で20㎎、35㎏≧で40㎎)
・半減期が短いため1日2回のほうが安定する。
・AT1選択制が大きい。
・透析で除去されない。
・透析で除去されない。
ロサルタン(ニューロタン)
・適応は高血圧、タンパク尿を伴う糖尿病性腎症。
・最大投与量は100㎎。T1/2≒2-4h(活性代謝物含む)
・重篤な肝機能障害に禁忌(尿中未変化体3-7%)
・降圧作用は弱いため血圧を下げず臓器保護を目的に投与可能。
・尿酸排泄促進作用がある。(URAT1という尿酸再吸収に関わるトランスポーターを阻害※3)
・透析で除去されない。
・透析で除去されない。
降圧作用の強さ
アジルバ≧オルメテック>ミカルディス≒ブロプレス≒イルベタン>ディオバン>ニューロタン
※日経DIに記載されていた順番、用量記載なし※3
アジルバ20㎎≧ニューロタン25mg≒ディオバン40mg≒ミカルディス20mg≒イルベタン50mg≒ブロプレス4mg≒オルメテック10mg
※参考した比較試験の詳細は下記
※アジルバ>オルメテックはアジルバ80㎎VSオルメテック40㎎の試験※日経DIに記載されていた順番、用量記載なし※3
アジルバ20㎎≧ニューロタン25mg≒ディオバン40mg≒ミカルディス20mg≒イルベタン50mg≒ブロプレス4mg≒オルメテック10mg
※参考した比較試験の詳細は下記
臨床試験結果をまとめ、換算表を作成すると以下の通り。
ロサルタン | バルサルタン | テルミサルタン | イルベサルタン | カンデサルタン | オルメサルタン | アジルサルタン | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
用量 | 25mg | 40mg | 20mg | 50mg | 4mg | 10mg | 20mg↓ |
ACE換算 | ≒エナラプリル5㎎ | なし |
アジルバはエナラプリルとの比較なし。
アジルバ40㎎>オルメテック40㎎、アジルバ20㎎>ブロプレス4㎎を考慮するとアジルバ20㎎以下で同等となる量があると思われる。
ちなみに某大学病院の院内フォーミュラリーの際に作成された換算表では、イルベタンは75㎎、アジルバは降圧作用が他より高いため換算表からは除外されている。
各薬剤の臨床試験結果は以下の通り。
ロサルタン
比較試験①高血圧症 [第Ⅲ相二重盲検比較試験]
1) 本剤の臨床的有用性について、ACE阻害薬エナラプリルマレイン酸塩を対照薬とした二重盲検比較試験により検討した。本態性高血圧症患者に、本剤25~50mg又はエナラプリルマレイン酸塩5 ~10mg を1日1回12週間投与したところ、本剤はエナラプリルマレイン酸塩と比べ同等の降圧効果及び有意に高い安全性を有することが示され、本剤の有用性が認められた 。(インタビューフォーム、審査報告書に非劣勢の記載)
→ロサルタン25㎎≒エナラプリル5㎎
バルサルタン
第III相二重盲検比較試験は、軽症~中等症の本態性高血圧症患者331例を対象とし、エナラプリルを対照薬として、ダブルダミー法を用いて実施された。用量は本薬が40mgを初回投与量とし、80、160mg、対照薬は5mgを初回投与量とし、10、20mgとそれぞれ十分な降圧効果が得られるまで増量することとされた。~中略~本薬はエナラプリルと同等の降圧効果を示し…(審査報告書)→バルサルタン40㎎≒エナラプリル5㎎
テルミサルタン
比較試験軽・中等症の本態性高血圧患者225例を対象として、テルミサルタン製剤20mg及びエナラプリル5mgを初期投与量とし、降圧効果が不十分で忍容性が良好な場合にはテルミサルタンカプセル製剤80mg、エナラプリル20mgまで増量可能とした治療期12週間の二重盲検比較試験を実施した結果、テルミサルタンカプセル製剤の有効性が認められた。(インタビューフォーム、審査報告書に同等の効果と記載)
→テルミサルタン20㎎≒エナラプリル5㎎
イルベサルタン
実薬対照二重盲検群間比較試験が実施された。用法・用量は、2~4週間の観察期の後、第I薬(本薬50mg又はエナラプリル5mg)を1日1回朝食後に内服し、血圧がほぼ正常化(収縮期血圧149mmHg以下かつ拡張期血圧89mmHg以下)しないか、又は治験責任医師(又は治験分担医師)が不十分と判断する場合は第II薬(本薬100mg又はエナラプリル10mg)に変更して通算12週間投与した~中略~本薬のエナラプリルに対する非劣性が検証された。(審査報告書)→イルベサルタン50㎎≒エナラプリル5㎎
カンデサルタン
第III相比較試験は、本薬の開発を通じて唯一の二重盲検試験としてマレイン酸エナラプリル1日5~20mg漸増を対照として行われた。「有効率」の比較検定では対照薬と同等であり、「概括安全度」と副作用発現率では対照薬に優ったとされた。カンデサルタンの用量が記載されていないが、読み進めていくと「期用量は第III相二重盲検比較試験で検討された4mgと設定する」との記載があるので、4㎎と思われる。
(審査報告書)
→カンデサルタン4㎎≒エナラプリル5㎎
オルメサルタン
→オルメサルタン10㎎≒エナラプリル5㎎
アジルサルタン
二重盲検比較試験Ⅰ度又はⅡ度本態性高血圧症患者を対象にアジルサルタン投与群に1日1回20mg(8週間) 及び40mg(8週間)の計16週間投与、並びにカンデサルタン シレキセチル投与群に8mg及び 12mgを同一用法にて投与した二重盲検比較試験の結果は以下のとおりである。 トラフ時座位血圧変化量(LOCF法)は、アジルサルタン投与群(n=311)において対照群の カンデサルタン シレキセチル投与群(n=309)に比べ有意な差が認められた。
→アジルサルタン20㎎>カンデサルタン8㎎
また、先ほどの※1より
→アジルバ80㎎>オルメサルタン40㎎
腎障害に対する投与
・添付文章では、重篤な腎機障害投与すると急激に腎機能が悪化する場合があるため、クレアチニン値2-3以上、eGFR15未満等の場合は慎重投与となっている。(薬剤によりやや数値が異なる)
これはARBにより糸球体内圧が下がることで濾過率が低下するためである。これによりクレアチニン値も上昇してしまう。
長期的にみると腎保護作用が勝るため、クレアチニン値1-3㎎/dLの患者に投与して、30%程度の上昇までは気にせず使うのが主流。
ただし2,3倍になるような場合は急性腎不全、腎動脈狭窄の可能性もあるため注意が必要。
投与は少量から開始、カリウム値やクレアチニン値には注意を払う。
その他
・すべての薬剤が妊婦に禁忌。
・尿中未変化体は15%前後(ミカルディス、イルベタン、ロサルタンは上記の通り)
アルドステロンブレイクスルー
ARBにより血中アルドステロン濃度が上昇してしまうこと。ACE阻害薬出も見られる。
アルドステロン上昇によりAT受容体が刺激され、心肥大などの症状が治療前と同じ状況に戻ってしまう。
※1 World J Res Rev. 2018 Jan;6(1):7-10.
※2 日経DI 2014.6.3「オルメテックがアルドステロン・ブレイクスルーを起こしにくいのはなぜ?」
※3 日経ドラッグインフォメーション 2015 4
※4 日経メディカル2005.9.19テルミサルタンに脂質代謝の改善効果、PPARγ活性化作用が他ARBの5倍
各インタビューフォーム、審査報告書、添付文書