エネーボ、エンシュア・リキッド、エンシュア・H、ラコール、イノラスの違い
栄養剤の種類と特徴
栄養剤は消化体栄養剤、半消化体栄養剤、成分栄養剤の3つがある。半消化体→消化→成分 の順で含まれているたんぱく質の消化が進んでいる状態になり、不味くなっていく。
薬剤の違いの前に上記3種類の違いについて簡単に説明。
半消化態栄養剤
エネーボ、エンシュア、ラコール、イノラスがここに分類される。
上記以外に市販でもかなりの種類がある(市販品は保険適応ないため注意)
たんぱく質、脂質をそのまま含んでおり、通常の食事に近い栄養剤。
味は1番よく経口摂取に向いているが、経管投与の際ラインに詰まりやすいため注意。
消化が必要なため、消化機能が低下している患者さんには不向き。
消化態栄養剤
ツインラインやエミノレバンがここに分類される。
たんぱく質はある程度分解され、アミノ酸、ジペプチト、トリペプチドとして含まれる。脂質は製剤によって含有無がわかれる。
消化をほとんど必要とせず、術後や腸疾患などで消化機能が低下している患者さんにも使用できる。
成分栄養剤
エレンタールがここに分類される。
たんぱく質は分解され、アミノ酸となっている。
脂質はほとんど含まれておらず、長期これだけの服用になる場合は、脂肪乳剤の投与が必要。
消化はほぼ必要ないため、消化機能がない患者さんでも使用できるが、味は不味く、浸透圧が高いため下痢になりやすい。
エレンタールはEAファーマからフレーバーが数種類でており、登録するとオンラインで注文できる。EAファーマ:フレーバー注文
味は青りんご、パイナップル、オレンジ、コーヒー、ヨーグルト、グレープフルーツ、さっぱり梅、マンゴー、トマト、コンソメがある。
エレンタールはボトルタイプもあり、フレーバーと水を入れて混ぜると簡単に出来上がるが、正直フレーバーをいれても美味しくない。
その他、ゼリーやムースベースがあり、患者さんの嚥下機能に合わせ作成できる。
成分栄養剤は5Frでも投与することが可能。※2
成分栄養剤は5Frでも投与することが可能。※2
半消化体栄養剤の比較
半消化体栄養剤で医薬品として処方できるのはエンシュア・リキッド、エンシュア・H、ラコールNF配合経腸用(液、半固形)、イノラスがある。
エンシュア・リキッド
カロリー:1kcal/1ml
味 :バニラ、コーヒー、いちご
構成比:炭水化物:たんぱく:脂質=54.5 : 14 : 31.5
塩分量:0.51g/1本(250ml)
添付文書上、唯一腎不全末期に対して禁忌になっていない。
※現在いちごしか製造していない。
エンシュア・H
カロリー:1.5kcal/1ml
味 :バニラ、コーヒー、いちご、バナナ、黒糖、メロン、抹茶
構成比:炭水化物:たんぱく:脂質= 54.5 : 14 : 31.5
エンシュア・リキッドのカロリー1.5倍バージョン。
カロリーだけでなく、ビタミンや微量元素等も全て1.5倍。
味のレパートリーが一番多い。 高カロリー摂取が必要だったり、味が苦手で量が飲めない人に適している。
エネーボ
カロリー:1.2kcal/1ml
味 :バニラ
構成比:炭水化物:たんぱく:脂質=53 : 18 : 29
塩分量:0.586g/1本(250ml)
アボット久々の新作。
エンシュアに含まれていなかったカルニチン、モリブデン、セレン、クロムを含有。
これらはエンシュア時代に欠乏症がみられたもの。
その他微量元素やビタミンも増減がある。
これらは厚生労働省策定 2010年度版 日本人の食事摂取基準をもとに設計されているため、エンシュアよりは今の時代にあっていると考えられる。
高齢者で骨粗鬆症や骨折が多くみられていることから、以前よりビタミンDを増量している。
粘度が高く、エンシュアと比べるとややライン詰まりが多いとのこと。
8Fr(チューブ径)だと途中で止まってしまうことが多く、途中何度も調整が必要でした。(メーカー的には20Frなら問題ないと。経鼻ですと厳しいでしょうか)
8Fr(チューブ径)だと途中で止まってしまうことが多く、途中何度も調整が必要でした。(メーカー的には20Frなら問題ないと。経鼻ですと厳しいでしょうか)
ラコールNF(液)
カロリー:1.0kcal/1ml (缶タイプはなく、200か400mlパウチ)
味 :ミルク、コーヒー、コーン、バナナ、抹茶
構成比:炭水化物:たんぱく:脂質=62.5 : 17.5 : 20
塩分量:0.38g/1パウチ(200ml)
エンシュア、エネーボと比較すると粘度が低めで詰まりにくい。
炭水化物の含量が高め。
炭水化物の含量が高め。
甘味を抑えるため精製白糖を少なくしている。
他剤は甘い味しかないのに対し、多少塩味のあるコーン味があるがこれも結構甘い。
ラコールNF半固形剤
カロリー、成分構成は液と同じ。
水分含量は異なる。(液:85%、半固形:76%)
経管専用で、液状と異なり通常食のような消化に近いかたちになるため、消化機能の維持が期待でき、下痢、誤嚥性肺炎になりにくいとされている。
半固形剤の投与は100g当たり2~3分かけて投与のため、1パック300gを10分程度で投与できる。
有効性、安全性について、審査時は液体も半固形も同等されている。※1
※H30.6月 抹茶フレーバー新発売
※H30.6月 抹茶フレーバー新発売
イノラス配合経腸用液
カロリー:1.6kcal/1ml
味 :ヨーグル、りんご、いちご、コーヒー、紅茶(125mlのみ)
構成比:炭水化物:たんぱく:脂質=40 : 12 : 9.6
塩分量:0.69g/1P(187.5ml)
カロリーは1ml=1.6kcalとなっており、もっとも高い。
1パック=187.5mL=300kcalとなっており、少量で高カロリー摂取できる。
エネーボ同様、カルニチン、セレン、モリブデン、クロムを含有。
粘度の比較
これらの薬剤は経口摂取はもちろん胃瘻で投与することもよくある。
粘度が高いと途中で止まってしまい何度も流量を調整しなければならず手間。
各薬剤での多少触れたが、私の経験的には
エネーボ>エンシュア・リキッド>ラコール
でライン詰まりの報告が多い気がします。(イノラスはまだ使ったことないので不明)
実際の粘度の大きさも一致しています。
エンシュア・リキッド:9mPa/s
エンシュア・H:17mPa/s
エネーボ:16mPa/s
ラコール:5.5mPa/s
イノラス:17mPa/s
※mPa/sは粘度の単位 大きいほどドロドロ
胃瘻で使っているチューブの種類、大きさ、劣化具合でも変わってくるので一概には言えません。
粘度が高いと途中で止まってしまい何度も流量を調整しなければならず手間。
各薬剤での多少触れたが、私の経験的には
エネーボ>エンシュア・リキッド>ラコール
でライン詰まりの報告が多い気がします。(イノラスはまだ使ったことないので不明)
実際の粘度の大きさも一致しています。
エンシュア・リキッド:9mPa/s
エンシュア・H:17mPa/s
エネーボ:16mPa/s
ラコール:5.5mPa/s
イノラス:17mPa/s
※mPa/sは粘度の単位 大きいほどドロドロ
胃瘻で使っているチューブの種類、大きさ、劣化具合でも変わってくるので一概には言えません。
精製白糖(甘味)の比較
ラコールのパンフレットには精製白糖を減らし、甘味を抑えたと記載がある。
精製白糖の含量は以下の通り。
エンシュア:3.92g/100mL
エネーボ:3.48g/100mL
ラコール:1.3g/100mL
※エンシュア・リキッドとH、ラコール液と半固形は同じ。
個人的には甘味の差をあまり感じませんが、含量はラコールが圧倒的に少ない。
水分量の比較
エンシュア・リキッド:85% (213/250mL)
エンシュア・H:77.6% (194/250mL)
エネーボ:81% (203/250mL)
ラコール液:85% (170/200mL)
ラコール半固形:76% (228/300g)
イノラス:75%(140/187.5mL)
イノラス:75%(140/187.5mL)
エンシュアリキッドとHもわりと差がある。
濃縮した感じなんでしょうか。
保存時間の比較
各薬剤の開封後の保存条件が異なる。
エンシュア:密閉して冷蔵、48時間以内に使用
エネーボ:密閉して冷蔵、48時間以内に使用
ラコール液:密閉して冷蔵、24時間以内に使用
ラコール半固形:早めに使い切る。
イノラス:冷蔵庫、24時間以内に使用
イノラス:冷蔵庫、24時間以内に使用
まとめ
※添付文書、ラコールの適応は経管投与のみ、その他は経口も記載あり。
※1 ラコール半固形審査報告書
※2 静脈経管栄養ガイドライン