オピオイドの用量換算、レスキュー投与量

オピオイド製剤の換算表、定期薬の増量基準、スキュードーズの投与量・投与間隔について

オピオイドローテーション時の換算表は様々な報告があり、ばらつきがあるとのこと。※1
下記図はガイドライン、添付文書をもとに自分が覚えやすいようにメインの3剤についてまとめたもの。

オピオイドローテーション図



※ヒドロモルフォン12㎎=モルヒネ(経口)60㎎
※タペンタドール200㎎=モルヒネ(経口)60㎎


ここからは上記図を作成するに参考にしたガイドライン等の詳細。
※メインで使用されるモルヒネ、オキシコンチン、フェンタニル、トラマドールの比較はこちら

主なオピオイド鎮痛薬一覧



オピオイドの力価比較

ガイドライン※1に記載されいている図は下記




下記はガイドライン及びフェントステープの添付文章参考。

※経口モルヒネ60㎎→モルヒネ静(静注、皮下注)30㎎


鎮痛作用は単純鎮痛作用のみを比較すると、

モルヒネ:フェンタニル=1:100
モルヒネ:オキシコドン=1:1.5
モルヒネ:ナルサス=1:5

モルヒネ→フェンタニル(静注)なら1/100だが、フェントステープは全て吸収されるわけではないため、

モルヒネ→フェントス に換算する場合、モルヒネ×1/30=フェントステープ投与量

モルヒネ→オキシコンチン に換算する場合、モルヒネ×2/3=オキシコンチン投与量

モルヒネ→ナルサス に換算する場合、モルヒネ×1/5=ナルサス投与量



フェントステープの添付文書を見ると1㎎の投与時定常における吸収量は0.3mg/日となっており、経口モルヒネ30㎎×1/100=フェンタニル静注0.3㎎=フェントステープ1㎎となる。




よく使うオピオイドの換算表


※オプソ5㎎、モルヒネ塩酸塩錠10㎎




レスキュードーズ

レスキューに使用できる薬剤※各種添付文書の適応より

・塩酸モルヒネ末
・オプソ内服液(モルヒネ塩酸塩)
・モルヒネ塩酸塩錠※
・オキノーム散(オキシコンチン)
・イーフェンバッカル(フェンタニル)
・アブストラル(フェンタニル)
・ナルラピド(ヒドロモルフォン)

※モルヒネ硫酸塩(MSコンチン)は徐放製剤しかないためレスキューでは使用不可。

アンペック坐剤(モルヒネ塩酸塩の坐薬)も作用発現時間が20分以上とやや遅いため原則不可。



レスキュー薬の比較(添付文書、ガイドラン、今日の治療薬より) 



※発現時間、持続時間、投与間隔は今日の治療薬より


レスキューの投与間隔

ガイドライン※1では以下の通り。

"経口の場合は1時間ごと経静脈投与・皮下投与の場合は15~30分ごととすることを推奨。~略~レスキュー・ドーズの追加がほぼ等間隔で必要な場合は、持続痛の緩和が不十分であると考えられるため、オピオイドの定期投与量の増量を検討する。~略~直腸内投与に関しては、他の投与経路が困難な場合の投与経路の選択肢となりうる。レスキュー・ドーズを直腸内投与する場合、投与量はオピオイド1日投与量の10~20%を1回投与量とし、投与間隔は最高血中濃度到達時間(Tmax)から2時間を目安とする"



→モルヒネ塩酸塩錠・オプソは服用後10分程度で効果が表れ、1時間後には血中濃度が下がり始めるため、痛みが継続している場合、1時間間隔が空いていれば追加投与可能

→注射薬に関しては15~30分。PCAポンプのロックアウトタイムは10分とかが多いよう。


→坐薬は経口、注射が使用できないときの選択肢。Tmax+2時間の投与間隔で。



レスキューの投与量と増量目安

ガイドライン※1の記載は以下の通り。


"レスキュー・ドーズとして経口・静脈内・皮下投与のいずれにおいても1日オピオイドの1日投与量の10~20%相当の量を投与しており、この投与量は安全かつ有効であることが示唆される。一方、持続静注・持続皮下注の場合、本邦では1時間量(定期投与量の1/24)の急速投与がレスキュー・ドーズとして広く用いられており、経験的に安全で効果があると考えられている。  したがって、これらの知見と専門家の合意から、本ガイドラインでは、初回のレスキュー・ドーズの投与量として経口投与では1日投与量の10~20%相当のオピオイド速放性製剤を、持続静注・持続皮下注では1時間量を初回の投与量として投与することを推奨する。"


→経口、坐薬:1日投与量の10~20%量
→静注、皮下注:1時間量(定期投与の1/24)


オプソの添付文書には定期投与の1/6、オキノームの添付文書には1/4-1/8と記載されている。

モルヒネなら1/6 
オキシコドンなら1/4~1/8
(ナルラピドはナルサスの1/4~1/6)


ex)モルヒネ1日30㎎ならばレスキューは30×1/6=5mg

これはガイドラインの推奨通りに計算した場合(30㎎×0.1~0.2=3~6㎎)となり、範囲内に収まる。


投与経路による比較

最初に示した通り、モルヒネに関しては経口モルヒネ×1/2=モルヒネ注となる。(ガイドライン上は1/2~1/3と幅あり)

レスキューは基本的に定期投与と同じ経路から(坐薬の場合のみ経口、注射を考慮)
坐薬は吸収が遅いためレスキューには使用しない。

速効性は静注→皮下注→経口

麻薬の投与は基本的には経口から。


定期投与の増量目安

レスキューを1日何度使用した場合にベースの増量を考慮すべきか。
また、増量はどの程度の範囲でおこなうべきか。

ガイドラインには以下のように記載がある。

"オピオイドの定期投与により鎮痛効果が得られない持続痛のある患者において、定期投与を増量することを推奨する。オピオイド定期投与量の増量を検討する場合としては、1日4回以上の経口レスキュー薬をほぼ等間隔で使用するとき、定期的に投与している鎮痛薬の投与前になると必ず痛いが来る時などがある。増量幅は、専門家の意見から、前日のレスキュー約の合計量を参考にしながら、定期投与量の30-50%増量を原則とし感化の状況に応じて増減することを推奨する。"(弱いエビデンスレベル 強い推奨)

現在のガイドライン(2020)からは削除
「直近24時間の使用量(定期+レスキュー)を目安に増量」をするように記載されている。

その他注意
フェンタニル貼付薬:定常状態までの時間を考慮し、2~3日は増量しない。
メサドン:定常状態までの時間を考慮し、7日間は増量しない。

※1 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014 、2020

 2017年3月18日

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