モルヒネ、オキシコンチン、フェンタニル、トラマドールの比較

オピオイド受容体作動薬の比較と選択 (ガイドライン抜粋)

ガイドラインにおいて、非オピオイドでコントロール不良の中等度以上のがん性疼痛に対しては、コデイン、トラマドール、モルヒネ、オキシコンチン、フェンタニルのいずれかで治療を開始するようになっている。


このうち、コデイン、トラマドールは弱オピオイド、モルヒネ、オキシコンチン、フェンタニルは強オピオイドに分類されている。

臨床でよく使用される薬剤はトラマドール、モルヒネ、オキシコンチン、フェンタニルなので、この4剤についてまとめた。


基本事項

鎮痛作用:主にμ受容体
主な薬物:モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、トラマドール
鎮痛作用:延髄における感覚神経の痛覚伝達抑制、大脳皮質知覚領域の痛覚伝達抑制、延髄脊髄下行性抑制系(ノルアドレナリン、セロトニンからなる)の賦活
中枢作用:催吐作用、鎮咳作用
末梢作用:消化器運動抑制

オピオイドμ:多幸感→依存作用
オピオイドκ:嫌悪感→依存抑制(ドパミン遊離抑制)

呼吸抑制:μ>δ、κ



各成分の特徴

モルヒネ

代謝物のM6Gはモルヒネより鎮痛作用が強い。
モルヒネは肝代謝だが、代謝物が腎代謝のため注意。

腎機能障害・透析患者へは使用しないほうがよいとされている。(高度な腎障害では使用すべきでないとの記載)

透析患者への投与について、非透析時にM6Gが蓄積、透析時には少量モルヒネが透析され、追加投与が必要な場合があり、コントロールが難しいため使用しないほうが良い。


MSコンチン錠
徐放性 Tmax:2.7 T1/2:2.58 定期投与:12時間毎 

モルヒネ塩酸塩錠
速崩性 Tmax:0.5 T1/2:2-3 定期投与:4時間毎 レスキュー:1時間

オプソ内服液
速崩性 Tmax:0.5 T1/2:2.9 定期投与:4時間毎 レスキュー:1時間

アンペック坐剤
坐薬  Tmax:1.3-1.5 T1/2:4.2-6.0 定期投与:6-12時間毎 レスキュー:2時間


オキシコドン

モルヒネから変更する場合はモルヒネの投与量の2/3にする。

ほとんどが肝臓で代謝される→腎障害・透析でも使いやすい
CYP3A4で代謝され、ほとんどが活性を持たないノルオキシコドンになる。
CYP2D6で代謝され生成するオキシモルフォンはオキシコドンのAUCの1.4%微量であり問題とならない。

腎機能障害に対しては投与可能。慎重な観察が必要との記載のみ。
(添付文書ではクレアチニンクリアランス60未満でAUC1.6倍、Cmax1.4倍)

透析性のデータは乏しい。通常は減量又は間隔をあける
蛋白結合率が低いため透析され、追加投与が必要な場合もある。

眠気、便秘、悪心、嘔吐はモルヒネと同程度。


オキシコンチン錠
徐放性 Tmax:4.0 T1/2:9.2 定期投与:12時間毎

オキノーム散
速崩性 Tmax:1.7-1.9 T1/2:4.5-6.0 定期投与:6時間毎 レスキュー:1時間


フェンタニル

ほとんどが肝臓で代謝される→腎障害・透析患者でも使いやすい
CYP3A4により活性を持たないノルフェンタニルとなる。

腎機能障害に対しても安全に使用できるが、血中濃度上昇がみられる場合があるため減量が必要。

透析患者には用量の調整なしに使用可能。ただし、透析膜に吸着し、血中濃度が低下するため疼痛緩和が困難な場合は他剤に変更。

悪心、嘔吐はモルヒネと同程度、眠気、便秘は比較的少ないとされている。

フェントステープ
徐放性 Tmax:20.1 T1/2:25-31 定期投与:24時間毎
初回効果発現まで12-14時間 剥離後16-24時間持続


トラマドール

活性代謝物のほうがトラマドールよりオピオイド受容体への親和性が高い。
鎮痛作用は弱いμ受容体刺激+ノルアドレナリン・セロトニン取り込み阻害による。
弱オピオイドに分類→除痛ラダーの第2段

CYP2D6により代謝され、活性代謝が生成される。
30%が未変化体のまま、60%が代謝物として腎臓より排泄
→腎機能障害(クレアチニンクリアランス80以下)によりAUC2倍に増加

便秘、悪心の発生は他よりは低い。痙攣発作の報告あり。


トラマールカプセル
徐放性 Tmax:1.8(活性代謝物2.2) T1/2:6.0(代謝物6.8) 定期投与:4-6時間毎


代謝



副作用と対策

悪心・嘔吐

CTZに多く存在するμ受容体刺激→ドパミン遊離→吐気
前庭器に発現しているμ受容体刺激→ヒスタミン遊離→吐気
消化器のμ受容体刺激→蠕動運動抑制→求心性シグナルによるCTZ刺激→吐気

初期に多くみられ、数日で耐性ができる

使用薬剤
D2遮断薬:ノバミン、セレネース 
抗ヒスタミン:トラベルミン、ポララミン 
消化管運動改善:プリンペラン、ナウゼリン
非定型抗精神病薬:ジプレキサ、リスパダール、セロクエル

各薬剤の吐き気頻度※1


便秘

各臓器からの消化酵素分泌抑制、蠕動運動抑制により起こる。
耐性は形成されないため下剤での対応が必要となる。

フェンタニルはモルヒネ、オキシコドンと比べ、μ1>μ2なので便秘になりにくいとされており、フェンタニルへ切り替えることで改善する場合もある。

ガイドラインでは、モルヒネ→フェンタニルへの変更で、優位に便秘改善、オキコドン→フェンタニルへの変更で優位に改善を示したエビデンスはないが、オキソコドンとモルヒネが同程度の便秘発症率であることから、オキシコドン→フェンタニルへの変更も有効と考えられると記載されている。


眠気

投与初期、増量時に起こる場合があるが、耐性が形成されるため数日以内に消失する場合が多い。

痛みがなく、強度の眠気がみられる場合は減量。


せん妄・幻覚

投与初期、増量時に起こる場合が多い。
ベンゾジアゼピン系、抗コリン薬でも起こりやすくなるため併用している場合は注意。

原因薬剤中止により数日~1週間で改善する場合が多い。

薬剤によるせん妄が疑われる場合は減量・中止。
減量、中止ができない場合は抗精神病薬(定型、非定型)。


呼吸抑制

がん疼痛に治療に用いている場合に呼吸抑制がおこることはほとんどない。
(痛みが呼吸抑制と拮抗すると考えられている)

起こるとしたら過剰投与や腎機能低下による急激な血中濃度上昇がある場合。

呼吸抑制の前には眠気がみられるため、眠気が出ている場合は注意。
呼吸抑制発生時は拮抗薬のナロキソン投与。


その他

唾液分泌抑制による口渇、排尿障害、掻痒感、ミオクローヌス、


相互作用



弱オピオイドと強オピオイドどちらから開始するべきか

非オピオイド(NSIADs等)でコントロールできない場合オピオイドを開始することになるが、「弱オピオイド→強オピオイド」なのか「初めから強オピオイド」でよいのか。

ガイドラインには以下の記載がある。
弱オピオイドを最初に投与し鎮痛効果が不十分であれば強オピオイドを投与する方法と、強オピオイドを最初から投与する方法とは、いずれも、安全で有効であると考えられる。”(強い推奨、弱いエビデンスレベル)

初めから強オピオイドを投与した場合、悪心、食欲不振、便秘の頻度が有意に多くなってしまったとの報告はあるが、嘔吐、せん妄、便秘について有意差はなかったとする報告もあり、上記のように2方法とも推奨されている。


EPACのガイドライン:軽度~中度の痛みには弱オピオイドor少量強オピオイドを推奨
NCCNのガイドライン:中度の痛みに最初から強オピオイドを推奨
ESMOのガイドライン:中度の痛みに非オピオイド+弱オピオイドor少量強オピオイドを推奨



参考:がん疼痛に関する薬物治療に関するガイドライン 2014 日本緩和医療学会
※1 がん診療ガイドライン 制吐療法

 2018/03/11

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