ステロイド薬の力価と一般的な使い方、副作用
ステロイドといえば副腎皮質ホルモンのうち、通常糖質コルチコイドを示す。
糖質コルチコイドは、細胞内のステロイド受容体に結合することでmRNAの転写を調節し、炎症性サイトカイン・プロスタグランジン類の産生を抑制することで、強力な抗炎症作用、免疫抑制作用を示す。
糖質コルチコイドは抗炎症作用以外に、糖新生亢進・ナトリウム再吸収・胃酸分泌亢進・コラーゲン産生抑制作用があるため、血糖値上昇・高血圧・胃潰瘍・骨粗鬆症のリスクとなる。
鉱質コルチコイドはナトリウムの再吸収に関与する。
このため鉱質コルチコイド作用があると心疾患・高血圧のリスクとなる。
各ステロイド剤の糖質・鉱質コルチコイド作用の比較
コートリル10㎎2錠 = プレドニン5㎎ = メドロール4㎎ ≒ リンデロン0.5㎎2錠
ステロイドの使い分け
ステロイドは以下の3群で使い分けされることが多い。
プレドニゾロン・メチルプレドニゾロン群(プレドニン、メドロール)
半減期がそれほど長くなく、鉱質作用もないため様々な症状に対し頻繁に使われる。
漸減、離脱を行いやすい。
漸減、離脱を行いやすい。
メドロールはプレドニンより電解質への影響が少ない。
ベタメタゾン・デキサメタゾン群(リンデロン、デカドロン)
作用が強力かつ半減期も長い。
同力価のプレドニンゾロンで効果がない場合でもリンデロン・デカドロンで効果を示す場合がある。
受容体との結合が強く、半減期以上に効果が持続するため漸減、離脱を考慮すべき患者には不向き。
受容体との結合が強く、半減期以上に効果が持続するため漸減、離脱を考慮すべき患者には不向き。
コルチゾン群(コートリル)
効果は弱い。副腎から分泌される内因性ステロイドであるため、副腎不全に対する充填療法に好んで使われる。
人では通常ヒドロコルチゾンとして10㎎/day分泌されている。
作用発現時間
各々多少の差はあるが、一般的には経口投与2時間後で十分な血中濃度となり、1~2日で症状の改善がみられる。
(今日の治療薬2013)
副作用と対応
プレドニン換算で5~10㎎以上では用量依存的に副作用発現率及び重症度が上がるため、できる限り少量にする。
各副作用に関する対応は以下の通り。
高血圧
高血圧の度合いによって降圧薬を使用。
骨粗鬆症(ステロイド性骨粗鬆症)
プレドニンゾロン換算で1日7.5㎎を超えている場合はビスホスホネート製剤を投与。ただし年齢・YAMにより7.5㎎以下でも必要。
(ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン2014)
(ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン2014)
胃潰瘍
ステロイド投与による胃潰瘍リスクの増加を明確に示すエビデンスはなし。
(消化性潰瘍診断ガイドライン2015)
(消化性潰瘍診断ガイドライン2015)
ただし、プロスタグランジン類産生抑制による消化器症状はみられるため、PPI等を併用することも多い。
ニューモスチス肺炎(旧カリニ肺炎)
予防すべき投与量の明確な基準はなし。
プレドニゾロン換算で20㎎/dayで1ヵ月以上投与する場合はしたほうがよいとの報告あり。
(Am J Respir Crit Care Med. 2011 Jan 1;183(1):96-128.)
(Am J Respir Crit Care Med. 2011 Jan 1;183(1):96-128.)
予防の際はバクタ(ST合剤)を1日1回1~2錠(顆粒の場合は1~2g)を連日又は週3日経口投与。
血糖値上昇がみられる場合は経口血糖降下薬の投与が行われる。
高血糖
血糖値上昇がみられる場合は経口血糖降下薬の投与が行われる。ステロイドの用法
通常生体内のリズムに合わせ、朝1回投与が最も良い。
ただし、効果に関しては夕投与のほうが勝る。また、分1より分3~4としたほうが有効性は高くなる。
隔日投与は副作用軽減効果が期待できるが、その分有効性も減弱する。
妊婦・授乳婦に対する投与
妊婦
プレドニゾロンは胎盤で不活性化されるため大きな影響を与えないで済む。
通常妊娠中でもプレドニゾロン20㎎/dayの投与なら安全性に問題はなし。
授乳婦
プレドニゾロンは1~3%が乳汁中に移行するが、20mg/day以下の投与であれば数μgの移行であり、臨床上問題にはならない。
(今日の治療薬 2013)