アイトロールとニトロールの違い

大きな違いは個人差? ばらつきが少ないのは?

一硝酸イソソルビド(アイトロール)と硝酸イソソルビド徐放製剤(フランドル、ニトロールR)は、共に経口投与できる硝酸製剤であり、狭心症の長期管理に用いられる。

この2剤はどのような違いがあるのか。

基本情報の比較

一硝酸イソソルビド(アイトロール)

適応:狭心症
用法:1回20-40㎎ 1日2回
特徴:通常錠、粉砕可能

硝酸イソソルビド(フランドル、ニトロールR)

適応:狭心症、心筋梗塞、その他の虚血性心疾患
用法:1回20㎎ 1日2回 適宜増減
特徴:徐放錠(カプセル)


構造と作用の違いについて

一硝酸イソソルビド(アイトロール錠)

構造に硝酸が1つ。

一硝酸イソソルビドは硝酸イソソルビドの活性代謝物の1つ

他の硝酸・亜硝酸エステル系薬剤に比べて、脱ニトロ化を受けにくいことから肝臓での初回通過効果を受けにくい

このため、消失半減期が長く肝代謝の個人差の影響を受けにくいため個体間での作用のばらつきが少ない

インタビューフォームを見ると、ばらつきを表す変動係数がフランドルより小さいことが示されている。。

一硝酸イソソルビドは製剤の工夫をしなくても1日2回で効果を発揮できる。



硝酸イソソルビド(フランドル錠、ニトロールRカプセル)

構造に硝酸が2つ。

ニトログリセリン(ニトロペン等)などと比べると初回通過効果を受けにくい薬剤だが、一硝酸イソソルビドと比べると脱ニトロ化を受けやすくバイオアベイラビリティーは約7%。(一硝酸イソソルビドは100%)

このため、肝臓での代謝具合に血中濃度が大きく左右されてしまうため、個人差が出やすい

生理活性に関しては、硝酸イソソルビドのほうが2倍近く強い
(硝酸イソソルビド:一硝酸イソソルビド=2.5 : 1)

半減期は一硝酸イソソルビドと比べて短いが、作用持続は8時間となっており、一硝酸イソソルビドの7時間以上と大きな差はない。


臨床成績の比較

二重盲検比較試験(アイトロールIFより)

狭心症患者を対象にアイトロール(一硝酸イソソルビド)20mg 1日2回投与の効果を検討するため、フランドル(硝酸イソソルビド徐放錠)20mg1日2回投与を対照とする二重盲検群間比較試験を行った結果、本剤はフランドルと同等であるという成績が得られた。
7)[山田和生 , 他:Geriat. Med., 23(8), p. 1421-1435(1985)]

狭心症に対する臨床成績は同等とのこと。
ただし、改善率をみるとアイトロールのほうがやや高かった。(アイトロール:55%、フランドル:35%)

変動係数(アイトロールIFより)

以下はアイトロールとフランドル投与時の変動係数の比較である。


本剤=アイトロールの変動係数がフランドルと比べすべての項目において小さくなっており、ばらつきが少ないことがわかる。

まとめ

一硝酸イソソルビド(アイトロール)と硝酸イソソルビド(フランドル、ニトロールR)の違いは個人差の有無。

狭心症に対する臨床成績に大きな差はなし。







 2017年4月9日

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