妊婦、授乳婦に安全とされている鎮痛剤(NSAIDs)は?
100%影響がない薬はないので、妊娠中、授乳中は不要であれば薬は飲まないにこしたことはない。
鎮痛剤は妊娠中、授乳中でも必要となることが多いかと思いますが、飲みたくない人が多いと思う。
それでも必要な場合には安全性が確立している薬剤の選択が必要となる。
妊娠中に服用していても自然奇形発生率を上回っていなければ、その薬による影響はほとんどないと考えられる。
今回は安全とされている鎮痛剤について調べてみた。
妊娠後期にNSAIDsが投与すると、胎児に移行し、プロスタグランジンの産生が抑制されていしまい、動脈管収縮が起こる場合がある。(動脈管の早期閉鎖)
催奇形性の報告はないとされている。※1
このため基本的には妊娠後期のNSAIDsは禁忌。
アセトアミノフェンの使用となるが、アセトアミノフェンでも胎児動脈管収縮の報告があるとのこと※1だが、FDAのリスク区分ではA、オーストラリアのリスク区分でもBとなっており、ほぼ問題なく使用できるのではないかと思われる。
アセトアミノフェン(カロナール)
メフェナム酸(ポンタール)
イブプロフェン(ブルフェン)
インドメタシン (インテバン)
ジクロフェナク (ボルタレン)
ナプロキセン (ナイキサン)
ピロキシカム (バキソ)
フルルビプロフェン(フロベン)
ロキソプロフェン (ロキソニン)
L1:最も安全 L2:比較的安全 L3:中等度の安全 L4:悪影響を与える可能性あり L5:禁忌
アセトアミノフェン(カロナール):L1
アセメタシン(ランツジールコーワ) :記載なし
アスピリン(バファリン330等):L3 (ウイルス感染時L5)
アンピロキシカム(フルカム):記載なし
イブプロフェン(ブルフェン):L1
インドメタシン(インテバン) :L3
エトドラク(ハイペン):記載なし
オキサプロジン(アルボ) :記載なし
ザルトプロフェン(ペオン):記載なし
ジクロフェナク(ボルタレン) :L2
スリンダク(クリノリル) :記載なし
セレコキシブ(セレコックス):L2
チアプロフェン(スルガム):記載なし
ナブメトン(レリフェン):記載なし
ナプロキセン(ナイキサン):L3(短期)、L4(長期)
ピロキシカム(バキソ):L2
プラノプロフェン(ニフラン):記載なし
フェナゾックス(アンフェナク) :記載なし
フルルビプロフェン(フロベン):記載なし
フルフェナム酸(オパイリン):記載なし
メフェナム酸(ポンラール):記載なし
メロキシカム(モービック) :記載なし
モフェゾラク(ジソベイン):記載なし
ロキソプロフェン(ロキソニン):記載なし
ロルノキシカム(ロルカム):記載なし
通常でも小児に処方されるカロナール、ブルフェンはL1となっている。
その他データがないものが多い。
セレコックスはL2なので整形的な痛みならばセレコックスでよさそう。(適応的に)
ロキソニンは日本で一番有名なくらいですが、アジアの一部でしか使われていないそう。育成医療研究センターの情報だと安全とされている。
※3文献より
授乳による薬剤暴露量は母乳に移行する薬剤量、母親の薬剤服用量より相対的乳児服用量というものが計算できる。
相対的乳児服⽤量(RID) 10%以下(未満?)で⽐較的安全に授乳できる※2
この計算では哺乳児の暴露量を計算しなければならない。
そのためには乳汁への薬剤移行量がわからなければならない。
添付文書、IF等に乳汁移行量やM/P比の記載があればよいが、ない場合は計算できない。
(乳汁移行量=母親の血中濃度×M/P比)
②EI
母乳からの薬剤摂取量と乳児の吸収・代謝を考慮して求めた値。
こちらも10%以下(未満?)であれば安全とされている。※2
乳児のクリアランスがわからないと計算できない。
CLは計算からも求められますが、乳児のデータがそんなにあるのでしょうか…
鎮痛剤の強さ比較一覧はこちら
※1 今日の治療薬 2017
※2 調剤と情報 2014 4 Vol23 No.6
※3 医療薬学 40(3) 186―192 (2014) ロキソプロフェンの母乳への移行性
鎮痛剤は妊娠中、授乳中でも必要となることが多いかと思いますが、飲みたくない人が多いと思う。
それでも必要な場合には安全性が確立している薬剤の選択が必要となる。
妊娠中に服用していても自然奇形発生率を上回っていなければ、その薬による影響はほとんどないと考えられる。
今回は安全とされている鎮痛剤について調べてみた。
妊婦
添付文書上NSAIDsはほぼ禁忌
オーストラリアの危険度分類でもすべてCとなっており、使用は避けるべき。
添付文書で禁忌の薬剤
アセメタシン(ランツジールコーワ)
アスピリン(バファリン330等):出産予定12週以内
アンピロキシカム(フルカム):妊娠末期
アンピロキシカム(フルカム):妊娠末期
イブプロフェン(ブルフェン):妊娠後期
インドメタシン(インテバン)
エトドラク(ハイペン):妊娠末期
オキサプロジン(アルボ)
オキサプロジン(アルボ)
ジクロフェナク(ボルタレン)
スリンダク(クリノリル)
スリンダク(クリノリル)
セレコキシブ(セレコックス):妊娠末期
チアプロフェン(スルガム):妊娠末期
ナブメトン(レリフェン):妊娠末期
ナブメトン(レリフェン):妊娠末期
ナプロキセン(ナイキサン):妊娠末期
ピロキシカム(バキソ):妊娠末期
プラノプロフェン(ニフラン):妊娠末期
フェナゾックス(アンフェナク)
フルルビプロフェン(フロベン):妊娠後期
メフェナム酸(ポンラール):妊娠末期
メロキシカム(モービック)
メフェナム酸(ポンラール):妊娠末期
メロキシカム(モービック)
ロキソプロフェン(ロキソニン):妊娠末期
ロルノキシカム(ロルカム):妊娠末期
→妊娠中はほとんど禁忌、ロキソニンも禁忌
チアラミド(ソランタール)
フルフェナム酸(オパイリン)
モフェゾラク(ジソペイン)
NSAIDsの作用機序を考えると、添付文書上禁忌でない薬剤もどうなのかと…
他の禁忌薬剤と同様に、妊娠末期のラットに投与した実験で、胎仔の動脈管収縮が報告されている。
ロルノキシカム(ロルカム):妊娠末期
→妊娠中はほとんど禁忌、ロキソニンも禁忌
添付文書で禁忌ではない薬剤
ザルトプロフェン(ペオン)チアラミド(ソランタール)
フルフェナム酸(オパイリン)
モフェゾラク(ジソペイン)
NSAIDsの作用機序を考えると、添付文書上禁忌でない薬剤もどうなのかと…
他の禁忌薬剤と同様に、妊娠末期のラットに投与した実験で、胎仔の動脈管収縮が報告されている。
妊娠後期にNSAIDsが投与すると、胎児に移行し、プロスタグランジンの産生が抑制されていしまい、動脈管収縮が起こる場合がある。(動脈管の早期閉鎖)
催奇形性の報告はないとされている。※1
このため基本的には妊娠後期のNSAIDsは禁忌。
アセトアミノフェンの使用となるが、アセトアミノフェンでも胎児動脈管収縮の報告があるとのこと※1だが、FDAのリスク区分ではA、オーストラリアのリスク区分でもBとなっており、ほぼ問題なく使用できるのではないかと思われる。
授乳婦
安全に使用できる薬剤 ※国立育成医療研究センターがLactMedを参考に選定
アセトアミノフェン(カロナール)
メフェナム酸(ポンタール)
イブプロフェン(ブルフェン)
インドメタシン (インテバン)
ジクロフェナク (ボルタレン)
ナプロキセン (ナイキサン)
ピロキシカム (バキソ)
フルルビプロフェン(フロベン)
ロキソプロフェン (ロキソニン)
Medications and Mother's Milk 2012(今日の治療薬に記載されている基準)
L1:最も安全 L2:比較的安全 L3:中等度の安全 L4:悪影響を与える可能性あり L5:禁忌
アセトアミノフェン(カロナール):L1
アセメタシン(ランツジールコーワ) :記載なし
アスピリン(バファリン330等):L3 (ウイルス感染時L5)
アンピロキシカム(フルカム):記載なし
イブプロフェン(ブルフェン):L1
インドメタシン(インテバン) :L3
エトドラク(ハイペン):記載なし
オキサプロジン(アルボ) :記載なし
ザルトプロフェン(ペオン):記載なし
ジクロフェナク(ボルタレン) :L2
スリンダク(クリノリル) :記載なし
セレコキシブ(セレコックス):L2
チアプロフェン(スルガム):記載なし
ナブメトン(レリフェン):記載なし
ナプロキセン(ナイキサン):L3(短期)、L4(長期)
ピロキシカム(バキソ):L2
プラノプロフェン(ニフラン):記載なし
フェナゾックス(アンフェナク) :記載なし
フルルビプロフェン(フロベン):記載なし
フルフェナム酸(オパイリン):記載なし
メフェナム酸(ポンラール):記載なし
メロキシカム(モービック) :記載なし
モフェゾラク(ジソベイン):記載なし
ロキソプロフェン(ロキソニン):記載なし
ロルノキシカム(ロルカム):記載なし
通常でも小児に処方されるカロナール、ブルフェンはL1となっている。
その他データがないものが多い。
セレコックスはL2なので整形的な痛みならばセレコックスでよさそう。(適応的に)
ロキソニンは日本で一番有名なくらいですが、アジアの一部でしか使われていないそう。育成医療研究センターの情報だと安全とされている。
ロキソニンの授乳移行率(詳細)
安全であるとされているロキソニンですが、乳汁移行率を検討している文献があった。
※3文献より
"母乳中のロキソプロフェン未変化体濃度は,
4名の全ての時間で検出限界(0.1 μg/mL)以下であった.~中略~ロキソプロフェン未変化体は授乳期間を通して母乳に移行しないことが示唆された~中略~本手法においてロキソプロフェン活性代謝物は検出および同定することはできなかった.しかし
長沼らの報告において活性代謝物の血中濃度は,未変化体よりも低いことおよび水溶性が高いと推察される構造を有することから,代謝活性体の乳汁への移行性および蓄積性は未変化体よりも低いと考えられる"
ロキソプロフェンはプロドラッグ。
未変化体ではなく、活性代謝物を見たいですが、検出されなかった。
未変化体→検出限界以下、活性代謝物→未変化体よりさらに少ない
から、問題ないであろうという結論。
また、インタビューフォームにおいても”(3)乳汁への移行性 ヒトへの 60mg 経口投与(5 例)において、1~6 時間後の乳汁中ロキソプロフェン及び trans-OH 体濃度はいずれも測定限界(0.02µg/mL)以下、との報告がある”とされている。
ロキソプロフェンはプロドラッグ。
未変化体ではなく、活性代謝物を見たいですが、検出されなかった。
未変化体→検出限界以下、活性代謝物→未変化体よりさらに少ない
から、問題ないであろうという結論。
また、インタビューフォームにおいても”(3)乳汁への移行性 ヒトへの 60mg 経口投与(5 例)において、1~6 時間後の乳汁中ロキソプロフェン及び trans-OH 体濃度はいずれも測定限界(0.02µg/mL)以下、との報告がある”とされている。
授乳による薬剤暴露量の計算
①RID授乳による薬剤暴露量は母乳に移行する薬剤量、母親の薬剤服用量より相対的乳児服用量というものが計算できる。
相対的乳児服⽤量(RID) 10%以下(未満?)で⽐較的安全に授乳できる※2
RID = 哺乳児の暴露量(mg/kg/⽇) / ⺟の服⽤量(mg/kg/⽇) ×100
この計算では哺乳児の暴露量を計算しなければならない。
そのためには乳汁への薬剤移行量がわからなければならない。
添付文書、IF等に乳汁移行量やM/P比の記載があればよいが、ない場合は計算できない。
(乳汁移行量=母親の血中濃度×M/P比)
②EI
母乳からの薬剤摂取量と乳児の吸収・代謝を考慮して求めた値。
こちらも10%以下(未満?)であれば安全とされている。※2
EI = 母乳摂取量(ml/kg/min)×M/P比 / 乳児のCL(ml/kg/min) ×100
乳児のクリアランスがわからないと計算できない。
CLは計算からも求められますが、乳児のデータがそんなにあるのでしょうか…
まとめ
妊婦:NSAIDs全般避ける。必要な場合はカロナール(アセトアミノフェン)
授乳婦:頻用されている薬剤ではロキソニン、セレコックス、ブルフェン、カロナールが安全に使用できると思われる。
※もちろんリスク0はないので、投与しないに越したことはない。
※もちろんリスク0はないので、投与しないに越したことはない。
※1 今日の治療薬 2017
※2 調剤と情報 2014 4 Vol23 No.6
※3 医療薬学 40(3) 186―192 (2014) ロキソプロフェンの母乳への移行性