生活保護受給者と後発品調剤

指定医療機関担当者規則改定により生活保護受給者は原則後発品調剤に 定期的に福祉事務所へ報告

生活保護法の改正により、平成30年10月1日から、医師又は歯科医師が医学的知見に基づいて後発医薬品を使用することができると認められた場合は、原則として、後発医薬品が給付されることになりました(生活保護法第34条第3項)

今まで改定分しかでておらず、具体的にどのような対応をすべきか通知がでていなかったが、9月28日に通知、疑義解釈等がだされたのでまとめました。

「指定医療機関医療担当規程」の一部改正について

第六条
指定医療機関の医師又は歯科医師(以下「医師等」という。)は、投薬又は注射を行うに当たり、後発医薬品(法第三十四条第三項に規定する後発医薬品をいう。以下同じ。)の使用を考慮するよう努めるとともに、投薬を行うに当たつては、医学的知見に基づき後発医薬品を使用することができると認めた場合には見に基づき後発医薬品を使用することができると認めた場合には、可能な限り患者にその使用を促すよう努めなければならない。原則として、後発医薬品により投薬を行うものとする 

3指定医療機関である薬局の薬剤師は、処方せんに記載された医薬品に係る後発医薬品が保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十六号)第九条の規定による厚生労働大臣の定める医薬品である場合であつて、当該処方せんを発行した医師等が後発医薬品への変更を認めているときは、患者に対して、後発医薬品に関する説明を適切に行わなければならない。この場合において、指定医療機関である薬局の薬剤師は、後発医薬品を調剤よう努めなければならない原則として後発医薬品を調剤するものとする。



上記のように基本は後発調剤するように改定されましたが、これだけでは薬局においてどのような対応をすればよいかわかりませんでしたが、「生活保護法による医療扶助運営要領について」の一部改正について(通知)にて具体的な対応が通知されました。


「生活保護法による医療扶助運営要領について」の一部改正について

第3 医療扶助実施方式

(2)後発医薬品の給付 

  指定医療機関及び指定薬局における取組 
医師又は歯科医師が医学的知見に基づき後発医薬品を使用することができると認めたときは、次のとおりの取扱いにより、後発医薬品を調剤するよう、指定医療機関及び指定薬局に対して周知徹底を図ること(後発医薬品の薬価が先発医薬品の薬価よりも高くなっている又は 先発医薬品の薬価と同額となっている場合を除く。)。また、被保護者に対しても、本取扱いについて周知徹底を図ること。

  (ア) 処方医が一般名処方を行っている場合又は銘柄名処方であって後発医薬品への変更を不可としていない場合には、指定医療機関又は指定薬局は、後発医薬品を調剤すること。このため、先発医薬品の調剤が必要である場合は、処方医が必ず当該先発医薬品の銘柄名処方をする必要があること。

  (イ) ただし、後発医薬品の在庫がない場合は、先発医薬品を調剤することが可能であること。

  (ウ) 後発医薬品の使用への不安等から必要な服薬ができない等の事情が認められるときは、薬剤師が処方医に疑義照会を行い、当該処方医において医学的知見に基づき先発医薬品が必要と判断すれば、先発医薬品を調剤することができるものであること。 ただし、処方医に連絡が取れず、やむを得ない場合には、指定薬局から福祉事務所に確認の上、先発医薬品を調剤することができるが、速やかに(遅くとも次回受診時までに)薬剤師から処方医に対し、調剤した薬剤の情報を提供するとともに、次回の処方内容について確認すべきものであること。 


 イ 福祉事務所における取組 

上記アの(ア)の場合又は(ウ)の処方医への確認後、再度医学的知見に基づき後発医薬品を使用することができると認められた場合において、指定医療機関又は指定薬局における説明を受けても、なお先発医薬品の使用を希望する患者に対しては、福祉事務所において制度について説明し、理解を求めること。


薬局の対応としては…
→変更不可の処方でなければ後発品を調剤。
→患者さんが嫌がった場合は疑義照会にて確認後、先発調剤。


「生活保護法による医療扶助運営要領に関する疑義について」の一部改正について

19 後発医薬品の給付について 

(問 31) 医師又は歯科医師(以下「医師等」という。)が一般名処方をしているにもかかわらず、先発医薬品が給付された場合、法第 50 条第2項に基づく指定医療機関(指定薬局も含む)に対する指導の対象としてよろしいか。また、この際の診療報酬についてはどのよ うに取り扱えばよろしいか。

(答) 設問の場合であっても、後発医薬品の在庫がない場合や後発医薬品が先発医薬品より高額である場合、薬剤師による疑義照会の結果、先発医薬品を給付することが適当であるとして、先発医薬品を給付している場合が考えられるため、ただちに同指導の対象としてはならない。対象となるかの判断に当たっては、調剤録等の閲覧による薬剤師の疑義照会の状況確認や後発医薬品の在庫の状況確認を適切に行うこと。その確認の結果、不適切な調剤があったこ とが確認された場合は、同指導の対象として差し支えなく、当該指定医療機関から診療報酬を返納させること。


(問 32) 処方医が一般名処方又は銘柄名処方であって後発医薬品への変更を可とする処方を行ったが、薬剤師による疑義照会を受けた結果、先発医薬品の使用が必要であると判断した場合、どのように取り扱うよう指導すればよろしいか。

(答) 疑義照会の結果に基づき、先発医薬品が調剤されることとなるため、指定医療機関である病院又は診療所においては当該内容を適切に診療録に反映するよう指導すること。なお、この場合、処方医は改めて処方箋を交付する必要はない。 また、指定薬局においては、先発医薬品の調剤に至った事情(疑び調剤録(薬剤師法第 28 条ただし書きの場合を除く。)に記入しなければならない
→疑義照会にて先発になったらその旨を調剤録に記載する。


(問 33) 医療扶助運営要領第5の(2)のイに基づき、先発医薬品への処方の変更を希望する患者に対して福祉事務所が説明した後も、なお当該処方の変更を求める患者がいた場合、どのように取り扱うべきか。

(答) 処方医との再相談や同行受診等の対応を行い、その結果に応じ適切な対応を行うこと。


(問 34) 後発医薬品の使用について十分説明しているにも関わらず、 同意しない被保護者について、法第27条に基づく指導指示の対象としてよろしいか。

(答) 法第34条第3項により、指定医療機関である病院・診療所及び薬局において、医師による医学的知見に基づき後発医薬品の使用が可能と認められる場合には、原則として後発医薬品が給付されるものであり、患者の同意の有無により処方が変更されるものではないことから、設問の場合において、被保護者に対して法第 27条に基づく指導指示を行う必要はない。

※生活保護法 第二十七条 保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。 2 前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。 3 第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。


(問 35) 被保護者である患者本人が先発医薬品の薬剤費(10割相当分)を負担すると申し出た場合、これを認めることは可能か。

(答) 医療扶助においては、一連の診療行為(療養の給付)が対象となっており、診察、処方、調剤等を別々に給付することは予定していない。したがって、診察及び処方が医療扶助によって給付されている場合、調剤のみを切り離して自己負担とすることは、認められない


(問 36) 医療扶助運営要領第5の(2)のアの(ウ)に基づき、処方医に連絡が取れず、福祉事務所に確認する必要が生じた場合の具体的な取扱い如何。

(答) 設問の場合、福祉事務所において、処方医が休診である等、医師と連絡が取れない事情を確認した上で、先発医薬品の給付を行うこと。また、初回調剤時に、夜間や休日等、福祉事務所にも連絡が取れない場合には、事後的に福祉事務所に報告することとして、 先発医薬品を調剤しても差し支えない。なお、これらの対応を行っ た場合は、速やかに(遅くとも次回受診時までに)薬剤師から処方医に、処方の内容について確認すること。 なお、これらの確認作業について、様式等は示さないので、電話等で適宜実施していただいて構わない。


問34がいまいち解釈できませんでした。
患者が拒否しても、医師が問題ないと認めて後発処方されたら後発でということでしょうが、薬局で服用に対して不安で拒否された場合疑義で先発になるのでしょうし…現実的ではない気がします…

とりあえず、薬局においてどのように対応すればよいか具体的な通知がでたので安心です。


福祉事務所への報告

指定医療機関医療担当規程第7条により、今までも後発品が調剤されなかった生活保護者に関しては、定期報告と求めがあった場合に情報提供する必要があった。

今回「社援発0928第6号」にて、以下の内容が通知された。

生活保護の医療扶助における後発医薬品の使用促進について(生活保護の医療扶助における後発医薬品の使用促進について)

3 指定医療機関及び指定薬局に対する取組

(1)基本的な考え方

ア 後発医薬品は、先発医薬品と品質、有効性及び安全性が同等であると認められた医薬品であり、国全体で後発医薬品の使用促進に取り組んでいる。

イ 生活保護制度においては、処方医が一般名処方を行っている場合又は銘柄名処方であって後発医薬品への変更を不可としていない場合には、後発医薬 品を使用することとする((2)のイの場合を除く。)。


(2)指定薬局に対する取組

生活保護法の指定を受けている薬局(以下「指定薬局」という。)に対して、 リーフレットの送付や、訪問して説明する等により、本取扱い及び以下の事項について理解、協力を求めるとともに、当該福祉事務所における生活保護受給者に対する本取組の周知の状況についても説明すること。

ア 指定薬局は、一般名処方による処方せん又は銘柄名処方であって後発医薬品への変更を不可としていない処方せんが発行された生活保護受給者に対して、後発医薬品を調剤することとする(イの場合を除く。)。

イ ただし、一般名処方による処方せん又は銘柄名処方であって後発医薬品へ の変更を不可としていない処方せんが発行された生活保護受給者に対して、 その時点で後発医薬品の在庫がない場合や、薬剤師による処方医への疑義照会により、先発医薬品を調剤することとなった場合等はこの限りでないこと。 なお、指定薬局の在庫の都合によりやむを得ず先発医薬品を調剤した場合は、 以後は、後発医薬品を調剤できるよう体制整備に努めるものとすること。 こうした場合には、指定薬局は別添1の様式を参考に、先発医薬品を調剤した事情等を記録すること

ウ 指定薬局は、上記イで記録した先発医薬品を調剤した事情等について、定期的に福祉事務所へ送付すること。なお、平成26 年度診療報酬改定により、 一般名処方が行われた医薬品について後発医薬品を調剤しなかった場合は、 その理由について、「患者の意向」、「保険薬局の備蓄」、「後発医薬品なし」 又は「その他」から最も当てはまる理由を調剤報酬明細書の摘要欄に記載することとされていることから、福祉事務所においてこれを確認し、先発医薬品を調剤した事情等について把握することは差し支えなく、当該情報については、生活保護等版電子レセプト管理システムによる把握が可能であるので、 使用促進の取組に積極的に活用することこの場合、指定薬局による別添1の福祉事務所への送付は必要ないこと。 なお、薬剤師法(昭和 35 年法律第 146 号)第24条に基づく疑義照会の結果、先発医薬品が調剤された場合は、上記の「その他」に分類される点に留意されたい。

→一般名処方にて、レセプト摘要欄に記載されている場合は報告不要。それ以外(後発銘柄から先発)は今まで通り定期報告が必要。



レセプトへの記載

先の記載通り、一般名処方が行われた医薬品について後発医薬品を調剤しなかった場合は、 その理由について、「患者の意向」、「保険薬局の備蓄」、「後発医薬品なし」 又は「その他」から最も当てはまる理由を調剤報酬明細書の摘要欄に記載すること(診療報酬請求書等の記載要領等について)とされているので一般名処方の際はいつも通りですが、後発銘柄→先発の場合も記載が必要となる。

生活保護受給者への先発医薬品調剤状況:レセプト摘要欄への記載方法(東京都福祉保健局)

「一般名処方」又は「銘柄名処方(後発医薬品への変更可)」が行われたものについて、例外的に生活保護受給者へ先発医薬品を調剤した場合は、調剤報酬明細書(レセプト)の摘要欄に、調剤券の「交付番号」の転記に続けて、下記によりその理由等を記載してください。

東京都の場合には上記方法にて対応するように指示がでている。

福祉事務所によって対応が若干異なるようで、調剤券を発行している事務所に問い合わせるようにとのこと。




報告様式、薬局用リーフレットは各都道府県、市町村のホームページにアップされているところはアップされている。
(埼玉はこちら:薬局用リーフレット報告様式)
(東京はこちら:各種通知およびレセプト記載例)

 参考
東京都福祉保健局
指定医療機関医療担当規程の一部改正について(通知)」(平成30年9月28日付社援発0928第8号 厚生労働省社会・援護局長通知)
「『生活保護法による医療扶助運営要領について』の一部改正について(通知)」(平成30年9月28日付社援発0928第5号 厚生労働省社会・援護局長通知)
「『生活保護法による医療扶助要領に関する疑義について』の一部改正について(通知)」(平成30年9月28日付社援保発0928第4号 厚生労働省社会・援護局保護課長通知)
「生活保護の医療扶助における後発医薬品の使用促進について」(平成30年9月28日付社援保発0928第6号 厚生労働省社会・援護局保護課長通知)
 2018年10月9日

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