ヒルドイドソフトの血行促進作用により痒みが悪化する場合がある?
皮膚が乾燥して皮膚バリア能が低下すると、刺激に過敏となり、痒みが起こる。
アトピー性皮膚炎ガイドラインには以下のように記載されている。
"~前略~皮膚バリア機能の低下のため,非特異的な刺激に対する皮膚の被刺激性が亢進し,炎症が おこりやすくなると想定されている.皮膚バリアに関して,以前より過度の空調による乾燥した環境などの 外的因子の関与が知られていた"
刺激によりヒスタミンが分泌され、痒みが生じる。
搔き毟るとさらにヒスタミンが分泌され・・・どんどん痒くなっていく。
なので、保湿剤は乾燥を防止し、痒みを予防する。
しかし、先日患者さんから「ヒルドイドソフトは血行を促進して痒みを悪化させるから使わないように先生から言われた」との話を聞いた。
たしかに、ヒルドイドソフトは血行促進作用はありますが、痒みの悪化はあるのでしょうか?
アトピー性皮膚炎と保湿
当たり前ですがやはり保湿が基本。
アトピー性皮膚炎の場合、温度が上昇すると痒みを感じやすくなっている。
それは体温上昇により血流が良くなるからと認識していたのですが、どうやら単純なものではないようです。
ヒルドイドソフトの血行促進作用と掻痒感
ヒルドイドソフトには血行促進作用がある。
このため適応には血栓性静脈炎、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患などがある。
では、この血行促進作用で掻痒感がみられることはあるのでしょうか。
ヒルドイド関係の副作用報告は以下の通り※2
ヒルドイドクリーム 0.3%
総投与症例 2471例中、23 例(0.93%)に副作用が認められ、主なものは皮膚炎9件 (0.36%)、そう痒8件(0.32%)、発赤5件(0.20%)、発疹4件(0.16%)、潮紅3件(0.12%) 等であった。 (効能追加時)
ヒルドイドソフト軟膏 0.3%
総投与症例119 例中、本剤による副作用は認められなかった。(承認時)
ヒルドイドローション 0.3%
総投与症例121例中、本剤による副作用は認められなかった。(承認時)
ヒルドイドフォーム 0.3%
皮脂欠乏症患者を対象とした一般臨床試験において、総投与症例60例中、1例2件の 副作用が認められた。その内訳は、そう痒症及び紅斑が各1件であった。
100%みられないとは言いませんが、ヒルドイドで血流が良くなることで痒みが発生するということは考えにくい結果です。
使わないほうが乾燥で痒みが出そうです…
では、この血行促進作用で掻痒感がみられることはあるのでしょうか。
ヒルドイド関係の副作用報告は以下の通り※2
ヒルドイドクリーム 0.3%
総投与症例 2471例中、23 例(0.93%)に副作用が認められ、主なものは皮膚炎9件 (0.36%)、そう痒8件(0.32%)、発赤5件(0.20%)、発疹4件(0.16%)、潮紅3件(0.12%) 等であった。 (効能追加時)
ヒルドイドソフト軟膏 0.3%
総投与症例119 例中、本剤による副作用は認められなかった。(承認時)
ヒルドイドローション 0.3%
総投与症例121例中、本剤による副作用は認められなかった。(承認時)
ヒルドイドフォーム 0.3%
皮脂欠乏症患者を対象とした一般臨床試験において、総投与症例60例中、1例2件の 副作用が認められた。その内訳は、そう痒症及び紅斑が各1件であった。
100%みられないとは言いませんが、ヒルドイドで血流が良くなることで痒みが発生するということは考えにくい結果です。
使わないほうが乾燥で痒みが出そうです…
血流、温度、掻痒感の関係
そもそもなぜ血流が良くなると痒みがでるのでしょうか。
調べてみると、「血流亢進により血管透過性が亢進し、ヒスタミンが血管外にでるから」「普段血流があまりないところに血液がながれるから」などいろいろ書かれておりましたがどれも情報元が不確実。
メカニズムはいまいちわかっていないようでしょうか。
メカニズムはいまいちわかっていないようでしょうか。
温度に関しては、大阪大学の研究グループにより、温まるとなぜ痒みがでるかそのメカニズムを解明したそう。※3
通常の皮膚:アーテミンは蓄積していない
アトピー:アーテミンが蓄積→温度刺激で痒み
では普通の人は温まっても痒くないのでしょうか。
大抵の人は痒くなるといっておりますが…
過度の高温(体温上昇)が乾燥をさらに助長するからという理由も考えられている。※4
血流促進による痒みはまた別でしょうか。
すくなくともヒルドイドの副作用報告を見る限り気にしなくていいのではないかと思います。
まとめ
ヒルドイドの血流促進作用により痒みは悪化することはほぼない。
温度、血流、痒みの関係は明確にはわかっていない模様。
※1 アトピー性皮膚炎ガイドライン
※2 ヒルドイドインタビューフォーム
※3 アトピー性皮膚炎など「温もると痒い」メカニズム解明―病変部で神経栄養因子アーテミンが皮膚の温感を増強させ痒みを引き起こす―大阪大学
※4日経メディカル ガイドライン外来診療2009 皮膚装用症