カロナール(アセトアミノフェン)とブルフェン(イブプロフェン) 強さや安全性の違いは?
小児に使える解熱鎮痛剤といえば以下の2つ。・カロナール(アセトアミノフェン)
・ブルフェン(イブプロフェン)
カロナールばかり処方されているイメージですが、どちらのほうが効果が高いんでしょうか。
コロナの影響もありイブプロフェンの処方が増えているので再調査してみると、2020年に新たなメタアナリシスも発表されていました。(それまでにも3つ報告されている)
鎮痛作用の比較
中耳炎の痛みでの比較※1
解析対象
アセトアミノフェン、イブプロフェン、プラセボの3群を比較した3つのランダム化比較試験の結果(327名)
結果
プラセボと比較した場合、アセトアミノフェン、イブプロフェンは低いエビデンスだが、48時間以内に見られる痛みに有効とされている。
アセトアミノフェン、イブプロフェン、プラセボの3群を比較した3つのランダム化比較試験の結果(327名)
結果
プラセボと比較した場合、アセトアミノフェン、イブプロフェンは低いエビデンスだが、48時間以内に見られる痛みに有効とされている。
アセトアミノフェンとイブプロフェンの差に関しても差はみられなかったとのこと。(とても低いエビデンス)
アセトアミノフェン、イブプロフェン間での副作用にも差はなし(とても低いエビデンス)
こちらの報告では鎮痛作用、副作用とみに差はなし
歯科治療後の痛みでの比較※2
解析対象
二重盲検無作為化比較試験7つ(2241人)を解析
結果
アセトアミノフェン1000㎎よりイブプロフェン400㎎のほうが痛みを抑えたとされている。(痛みが50%以上改善された人がイブプロフェンのほうが約1.5倍多かった):エビデンスレベルも高い
こちらの解析ではイブプロフェン400㎎>アセトアミノフェン1000㎎
別の論文では、50%以上痛みを改善するために必要な治療人数(NNT)について、イブプロフェンは2.7人、アセトアミノフェン1000㎎は4.7人となっている 。※3
二重盲検無作為化比較試験7つ(2241人)を解析
結果
アセトアミノフェン1000㎎よりイブプロフェン400㎎のほうが痛みを抑えたとされている。(痛みが50%以上改善された人がイブプロフェンのほうが約1.5倍多かった):エビデンスレベルも高い
こちらの解析ではイブプロフェン400㎎>アセトアミノフェン1000㎎
別の論文では、50%以上痛みを改善するために必要な治療人数(NNT)について、イブプロフェンは2.7人、アセトアミノフェン1000㎎は4.7人となっている 。※3
その他多くの文献が検索ででてくるが、イブプロフェンのほうが鎮痛作用が強いとするほうが多く見受けられた。
解熱作用の強さ比較
薬物療法審議会報告書※4
厚労省の症に薬物療法検討会議の報告書によると、鎮痛作用:イブプロフェン4~10 mg/kgはアセトアミノフェン 7~15 mg/kgと同等
解熱作用:イブプロフェン 5~10 mg/kg、とくに 10 mg/kgは、 アセトアミノフェン 10~15 mg/kgよりも優れている
との報告がある。(17つのRCTのメタアナリシス)
通常イブプロフェンは5-7歳で200-300mg、アセトアミノフェンは15mg/kg。
5-7歳の平均体重は18-25kgくらいなので、イブプロフェンは少なくとも10mg/kg投与している。
そうなると、解熱、鎮痛作用ともにイブプロフェン常用量>カロナール常用量となりそう。
カロナールとイブプロフェン 強さ、安全性に関するメタ解析
2020年に、2歳未満の小児と対象としたメタアナリシスが報告されている。 ※5
解析対象
解析対象
アセトアミノフェンとイブプロフェンを直接比較している11試験
対象患者は2歳未満
主要評価項目
服用後4時間以内の鎮痛効果・解熱効果、重症副作用等
結果
4件のRCT(435人)の解析で、解熱効果はイブプロフェンがアセトアミノフェンより有意に低下させていた。
5件のRCT(587人)の解析で、目標体温達成率はアセトアミノフェン(41.1%)、イブプロフェン(53.6%)、オッズ比1.86(1.01-3.44)であり、イブプロフェンは有意に改善。
重度副作用は、7件のRCT(27,932人)の解析で、イブプロフェン(1.4%)、アセトアミノフェン(1.3%)で、オッズ比1.08(0.87-1.33)で有意差なし。
腎機能障害、肝障害、喘息、、消化管出血についても発生率に差はなし。
これ以外の3つ※6-8の報告があり、
※6:安全性は同等 鎮痛は同等 解熱でイブプロフェン有意。
※7:安全性は同等 小児の鎮痛・解熱でイブプロフェンが有意。成人は不明。
※8:安全性のみ検討 イブプロフェン、アセトアミノフェンはどちらもプラセボと同等の安全性
安全性、副作用の比較
前述のメタアナリシスにて安全性同等と報告されているが、一応別の報告も。
喘息のリスク
イブプロフェンのほうが喘息に関連する疾病のリスクが低くく、アセトアミノフェンの使用は喘鳴の発症と関連していたとする報告がある。※9
一方、アセトアミノフェンは喘息に関係ないとする論文も多数。※10
両方ともランダム化比較試験。 有効性を比較したメタ解析でも副作用に差はないとするものが多いので、そこまで差はなさそう。
一方、アセトアミノフェンは喘息に関係ないとする論文も多数。※10
両方ともランダム化比較試験。 有効性を比較したメタ解析でも副作用に差はないとするものが多いので、そこまで差はなさそう。
まとめ
解熱・鎮痛作用
イブプロフェン400mg≧アセトアミノフェン1000mg
イブプロフェン10㎎/kg≧アセトアミノフェン15㎎/kg
イブプロフェン400mg≧アセトアミノフェン1000mg
イブプロフェン10㎎/kg≧アセトアミノフェン15㎎/kg
メタアナリシスでもイブプロフェンが同等以上
副作用・安全性
差がないとする報告が多い
メタアナリシスでも差はなしとなっている
アセトアミノフェン、イブプロフェンはどちらもプラセボと同等の安全性
※1 Cochrane Database Syst Rev. 2016 Dec 15;12:CD011534.
※2 Cochrane Database Syst Rev. 2013 Dec 12;(12):CD004624.
※3 Br J Anaesth. 2002 Feb;88(2):199-214.3
※4 小児薬物療法検討会議 報告書 : アセトアミノフェンアセトアミノフェンの「小児科領域における解熱及び鎮痛」
※5 JAMA Netw Open. 2020 Oct 1;3(10):e2022398.
※10 N Engl J Med. 2016 Aug 18;375(7):619-30.
※6 Arch Pediatr Adolesc Med. 2004 Jun;158(6):521-6.
※7 Ann Pharmacother. 2010 Mar;44(3):489-506.
※8 Curr Med Res Opin. 2009 Sep;25(9):2207-22.
※9 Clin Ther. 2007 Dec;29(12):2716-23. ※10 N Engl J Med. 2016 Aug 18;375(7):619-30.