解熱剤を使用しないほうが風邪は早く治るか

ウイルス性の風邪による発熱時に解熱剤(カロナール、ロキソニンなどのNSAIDsなど)を使用すると治りが遅くなる?

風邪を引くと免疫活性化のために熱が出る。

熱が高すぎると辛いし、体力の消耗も激しくなるため解熱剤を使うように言われる。
そんなに熱が高くなく、元気であれば使用しないほうがいいと指導する。

本当に熱は下げないほうが治りが早くなるのでしょうか。

コロナ感染の場合は解熱剤(名指しになれたのはイブプロフェン)を使用すると悪化するかもと出回り騒ぎが起きました(現在は悪影響を与えるという証拠はないとなっている)が、コロナの場合もどうなんでしょうか。


解熱剤と風邪の完治までの時間

ロキソニン(ロキソプロフェン)による影響

※1文献では、ロキソプロフェン使用により通常の風邪(上気道感染症)の回復が遅延するかどうかを2重盲検ランダム化比較試験(プラセボ比較)で調べている。


対象:自然に風邪を引いた外来患者174人 18歳~65歳 日本人 
方法:ロキソプロフェンorプラセボを2~3回/日で7日間 症状に合わせて飲まないのも可 メキタジンを併用 
除外:インフルエンザ 肺炎 溶連菌 その他細菌感染症 特定の基礎疾患のある患者
主要評価項目:罹患期間
結果:プラセボ群:8.39 ±3.39日 ロキソプロフェン群:8.94 ±3.20日で有意差なし


ロキソプロフェンを使用していた群のほうが1~3日目までの重度の症状は減ったが、6~12日目ではロキソプロフェン群で症状が多い傾向にあった。
また、副作用はロキソプロフェン群で有意に多かった。(9.5%vs1.1%)

こちらの結果ではロキソプロフェンによる治癒遅延はなし
ですが、副作用も多く、後半の症状改善はプラセボ群のほうが少ない。

結果を見ると症状スコアはほとんど差がない。副作用だけ有意差ついており、飲むメリットは・・・?といった感じ。


アセトアミノフェン、イブプロフェン、アスピリンによる影響

※2では無理やり風邪に感染させた被験者での試験。こちらも2重盲検比較試験。

対象:ライノウイルス2型に感染さたせた56人
方法:アセトアミノフェン、イブプロフェン、アスピリン、プラセボ群に分けて比較
評価項目:ウイルス排出量 抗体反応 白血球数 症状
結果:アスピリンとアセトアミノフェンで抗体反応の抑制と鼻症状の増加がみられた(有意差あり)。

全文見れないのですが、ライノウイルス限定では投与しないほうがいい可能性があるかもしれない。その他の症状について記載がないのでなんとも。
あと4群に分けて被験者が少なすぎる。古い論文なので検定もどうなっているのか・・・。




コロナウイルス感染に対する解熱剤の投与是非

最後に、こちらは現状どうなっているか。

厚労省のお知らせだと以下の通り。
”Q: イブプロフェンで新型コロナウイルス感染の症状が悪化するという話を聞きましたが、どのように考え ればよいでしょうか。 
A: 新型コロナウイルスに感染した時にイブプロフェンの服用により新型コロナウイルス感染症が悪化することを示す科学的な根拠は得られていません。厚生労働省では、引き続き新しい情報を収集・分析し、 今後も情報提供に努めます。

上記は令和2年6月5日時点の情報としている。


コロナ陽性患者とNSIADsの後ろ向き研究

2020年11月にデンマークで大規模なコホート研究※3が行われており、それによるとコロナ陽性患者にNSAIDsを使用しても30日後の死亡率、入院率、ICU入院率、人工呼吸器の使用との関連はなかったとなっている。



現時点では、解熱剤が悪化させるということはなさそう。
解熱剤が改善するということもなさそう。



解熱剤飲んだ後に楽になったということはよく聞きますし、飲んで効いていると思えるのなら飲んでいいと思う。
治癒が遅れたり、症状が悪化することはなさそう。(副作用は増えるかもですが)


まとめ

熱が辛ければ使って良いと思うが、そうでないなら使う必要なし。

理由
・ウイルス性の風邪にロキソプロフェンを使用しても治りが遅くはならないから使っても問題なし。
・でも症状改善もそんなにないのに、副作用はロキソプロフェン服用で増えるとの報告。
・人工的にライノウイルスに感染させた場合、アセトアミノフェン、アスピリンの使用で症状が長引いたとする報告あり。


※1Intern Med . 2007;46(15):1179-86. 
※2J Infect Dis . 1990 Dec;162(6):1277-82.  
※3PLoS Med . 2020 Sep 8;17(9):e1003308. 
 2021年1月17日

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