カロナール服用の発熱目安

カロナール(アセトアミノフェン)を飲んでも平熱以下にはならない? どのくらいの熱で服用するべきか? どのくらい熱が下がる?

カロナールやロキソニンは発熱時の頓服としてよく処方される。

何度になったら使えばよいか?という質問をよく受ける。
Drによって指示は異なるが、だいだい38.0~39.0以上で、元気がないようなら使うようにという指示が多い。

解熱剤は平熱時に服用しても平熱以下になることはないと言われていますが、何度くらいからなら効果があるのでしょうか。

そして、なぜ平熱以下にはならないのでしょうか。

カロナールの解熱効果

インタビューフォームの薬理作用に以下の記載がある。

"アセトアミノフェンの作用機序は、視床下部の体温中枢に作用し、熱放散を増大させ解熱作用を示す。解熱鎮痛作用はサリチル酸類と同様に中枢性で、体水分の移動と末梢血管の拡張とが相まって起こる発汗を伴う解熱と、視床と大脳皮質の痛覚閾値の上昇効果とによる。 また、体温中枢に関与しているプロスタグランジンの合成阻害はアスピリンと同程度とされているが、末梢におけるプロスタグランジンの合成阻害はアスピリンに比べ極めて弱いという。 平熱時にはほとんど体温に影響を及ぼさず、発熱時には投与3時間当たりで、最大効果を発現する。その鎮痛作用はアスピリンと同じく緩和な痛みに限られている。抗炎症作用はほとんどない。"

余談ですが、最大血中濃度は30分くらいですが、最大効果は3時間くらいなんですね。

理由の記載はありませんが、アセトアミノフェンは平熱時には影響しないとのこと。



発熱・解熱のメカニズム

発熱は以下の機序により起こる。

体温調整中枢は視床下部にあり、熱産生と放散のバランスにより調整されている。
設定温度が高温側に移動することで熱産生が起こり、発熱が起こる。

感染等により免疫細胞が活性化→サイトカイン分泌(IL-1,6,TNF,IFN)→視床下部血管内皮細胞に作用→プロスタグランジンE2産生→cAMP産生→視床下部の体温調整中枢の基準値を高温側に移行させる(=セットポイントの上昇)→熱の温存、産生→発熱

参考:病気と薬 パーフェクトBOOK 南山堂

視床下部の体温調整中枢の基準値が高温側に移動すると、末梢血管収縮、心拍数増加、立毛、ふるえなどを起こし体温を上げる。

視床下部には熱放散中枢というものもあり、ここが加熱されると発汗、血管拡張などの熱放散活動が高まり、体温を下げる。

解熱剤はプロスタグランジンの産生を抑制させることで、体温の基準値を高温側に移動しないようにすることで発熱を抑える。

カロナールの作用機序をみると、「視床下部に作用し熱放散を増大させる効果」と「中枢におけるプロスタグランジン合成阻害」共に記載がある。


なぜ平熱以下にならないのか

上記のメカニズムから考えると、「プロスタグランジン類の産生を抑える=発熱の方向にいかないようにする、セットポイントをもとの位置に戻す」と考えることができる。

熱を下げるのではなく、元の体温に戻すといったイメージでしょうか。

上昇してしまったセットポイントをもとに戻す
けど、セットポイントを下のほうに設定してしまうわけではない。


実臨床において鎮痛剤として継続的にカロナール1500㎎/dayなどで服用しても平熱以下になっていないことを考えれば、問題ないことは明らかですけど。


ただし、無熱のマウスに高用量のアセトアミノフェンを投与した際は低体温になることが観察されている。※2
人間ではこのような現象は見られていないそうですが、※2文献によると、20㎎/kgのアセトアミノフェン投与により深部体温がプラセボと比較して優位に低下している。

ただし、36.8℃→36.6℃の変化であるためこれが臨床的に意味ある数字であるかと言われると、気にしなくていいのではないでしょうか。



何℃以上熱で服用すべきか

発熱は生体防御反応であり、辛くなければ下げなくてよい(もちろん40℃を超えて細胞に影響出るような場合は別)と言いますが、何度くらいから使って効果があるのでしょうか。

世界保健機関による発展途上国向けの診療ガイドラインには、

"「paracetamol(=アセトアミノフェン)は、39℃以上の発熱を呈している2ヵ月以上の小児で、高熱のために苦しんでいる場合に限って投与されるべきである。意識がしっかりしていて元気のある子どもは paracetamolを使用によって恩恵を受けないようである。"

と記載されているそうです。※1

その他のガイドラインにおいて具体的に何度という記載は見当たらない。

同報告書でとりあげられている臨床試験を見ると、38.3℃~の患者を対象とした試験となっている。

これ以下の熱ではあまり有効性はないのでしょうか。
そもそも平熱も差があるので一概には言えないんでしょうが。



解熱剤を服用した群としない群でどちらが原因疾患完治するまでの期間が短いかといった試験はないでしょうか。
単純に期間を比較することはよろしくない(QOLも考慮しないと)のかもしれませんが・・・


熱が高くてもつらくなければ下げる必要はないというのが一般的な考えですが、熱そこまで高くなくても辛い場合には服用して多少楽になるんでしょうか。

どの程度の変化で楽になるんでしょうか。

言い出したらきりがないですね。



どのくらい熱が下がるのか

先ほどの厚労省の資料を見ると、低下率等も記載されている。

"Wilson らは、3 ヵ月から 12 歳の、38.3~40.5℃の発熱児を、アセトアミノフェン 12.5 mg/kg 投与群、イブプロフェン 5 mg/kg 投与群、10 mg/kg 投与群、プラセボ群に分け、 投与後 6 時間までの最大体温降下率を比較した。アセトアミノフェン投与群では 76.80±44.92%, プラセボ群では 14.88±54.44%であり、アセトアミノフェンはプラセボと比較して有効であった


Agbolosu らは、38.5℃~40℃までの発熱を呈する上気道炎またはマラリアの患者 80 人(6~54 ヵ月)を、ぬるま湯で身体を拭く群とアセトアミノフェン 15 mg/kg 投与群 の 2 群に分け、介入後 2 時間までの解熱効果について検討した。ぬるま湯で身体を拭 くとはじめの 30 分間は早く、大きく体温が低下するが、それ以後は効果が持続しなかった。2 時間後の体温の低下はぬるま湯群で 0.75±0.82℃、アセトアミノフェン群では 1.83±0.76℃(p<0.001)であった"


また、インタビューフォームには以下の記載。
" 小児に対するアセトアミノフェン細粒の解熱効果
 発熱性疾患計 41 例に対し、アセトアミノフェンとして1回量 15mg/kg を頓用し 97.6%の著効・有効率を 認めた。投与後3~4時間で効果が最大となり、約2℃の体温下降を認めた。41 例中5例(12.1%) に体温下降例(36℃未満の体温は、平均 35.5℃で、最低 35.2℃)が見られたが、問題になるものはな く、発疹等の副作用もなかった。 "


前半は低下率。幅がありすぎて数値がだせないですね・・・
後半は1.83±0.76。
38.5℃以上の熱があれば、平均2℃前後の解熱が期待できるといったイメージでよろしいでしょうか。


まとめ

カロナールは平熱以下にならない。
(熱を下げるというより、平熱より上がらないようにする)

38.5℃超えて、辛そうなら使ってあげるくらいのイメージ。
平熱が異なるため一概には言えないが、臨床試験の多くは38.3℃以上の患者において有効性を検討している。

服用すると平均2℃以上の解熱が期待できるとの報告あり。

※1小児薬物療法検討会議報告書 : アセトアミノフェン アセトアミノフェンの「小児科領域における解熱及び鎮痛」 厚生労働省
※2Front Pharmacol. 2016 Mar 14;7:54 
 2018年12月12日

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