水ぼうそうへのカロナール投与について

 サリチル酸系(アスピリン)を使うべきではない水ぼうそう(水痘)にカロナール(アセトアミノフェン)は安全に使用できるか?

先日、解熱剤に関して水痘にカロナールを使用した群のほうが使用しなかった群より治りが遅くなるとの報告を目にした。(以下に記載の※2文献)

NSIADs(特にサリチル酸系)では死亡率の増加や、重症皮膚合併症(壊死性軟部組織感染症)リスク増加の報告※1は数多くある。

それらの文献で、カロナールは影響ないとの記述があり、解熱剤を使用した場合はNSAIDsではなくカロナールを投与するのが一般的と考えられていますが、カロナールも投与すべきでないのでしょうか。

一般的な風邪に関しては解熱してもしなくても治癒期間や死亡率は変わらないといった感じですが、水痘ではカロナールすらダメなのか気になったので元の文献を確認してみました。


水ぼうそうへのカロナール投与に関する報告

※2論文の要約は以下の通り。1989年の論文でかなり古い。

試験デザイン:二重盲検プラセボ比較試験
対象患者:1歳~12歳までの小児 68人(プラセボ31人 アセトアミノフェン37人)
薬剤群:アセトアミノフェン10㎎/kg/回 1日4回 を4日間
評価項目:水疱ができる期間、かさぶたまでの期間、完治までの期間。その他食欲、かゆみ、活動性なども6日間追跡。
結果:かさぶた形成までの期間はプラセボ群で5.6日、アセトアミノフェン群で6.7日であり、プラセボ群のほうが早いかった。痒みの改善もプラセボ群で早い。活動性はアセトアミノフェンのほうがよかった。
結論:アセトアミノフェン投与で長引くかも。


全文は有料なので読めず。
完治までの期間は結局どっち? アセトアミノフェンで活動性あがっていい子にしていないから長引いた可能性もありそう?
でもRCTで差がついているし、わざわざ解熱はしなくてもいいのかもしれない。


水痘に対するアセトアミノフェンの投与について他の文献を探してみましたが該当するものは見当たらず。


たいていの場合、熱が高ければアセトアミノフェンが処方されていると思う。
もしかしたら治りが遅くなるのかもしれないが、活動性の回復は見られているので、辛そうであれば使う、そうでなければ使わないという、いつもの考え方でよさそう。


まとめ

水ぼうそうに対するカロナール投与について、

・十分なデータはないが、カロナール使用により1日程度治り(かさぶたができるまでの期間)が遅くなったとする報告あり。

・NSIADsのように重症合併症のリスクはないと考えられ、解熱が必要であれば投与も選択肢の1つ、元気なら無理して使う必要なし。(普通の風邪と同じ考え)

※1Prescrire Int . 2010 Apr;19(106):72-3. 
※2 J Pediatr . 1989 Jun;114(6):1045-8.  
 2021年1月27日

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