ワセリンを成分とするプロペトと白色ワセリン 純度で副作用や効果は変わる?
プロペトのほうがワセリンより純度が高い(不純物がない)ので、敏感な人にも使いやすいと言われている。
ワセリン内の不純物は光により分解され、ケトン化合物となり皮膚刺激を起こす可能性があるそうです。
なので、不純物の少ないプロペトのほうが皮膚刺激が少ないと考えられるわけですが、実際にワセリンで問題になることがあるのでしょうか。
そもそもワセリンとは?
ワセリンの構造式を書け と言われても知らない・・・。
インタビューフォーム※1を確認すると「C15H32~C20H42」となっている。
もともとは、石油の成分から分離されたもので、主としてパラフィン基原油から得られる非結晶性軟膏様物質であり、一般に petrolatum といわれているそうです。※1
要は有機化合物の集まりですね。
石油をスタートに、不純物を取り除いていくと黄色ワセリン、白色ワセリン、プロペトとなっていく。
低純度:石油 → 黄色ワセリン → 白色ワセリン → プロペト:高純度
※さらに高純度のサンホワイトなるものもOTCで存在する。
プロペトと白色ワセリンの純度について
プロペトは眼軟膏に使えて白色ワセリンは使えない?
プロペトは純度が高く眼軟膏の基剤にも使えて、ワセリンは眼軟膏の基剤には使えないとの説明を聞いたことがあるがこれは微妙に間違い。
白色ワセリンも「ケンエー」は眼軟膏の基剤として使用可能※3。(下図)
局法の眼軟膏に関する試験をクリアしているかしていないかの違いでしょうか?
それ以外の白色ワセリンは眼軟膏に関する記載はない。
ただ、プロペトもワセリンも無菌的ではないので局法をクリアしているわけではなさそう。調べて分かったら追記。
(どちらも眼軟膏の基剤するときは滅菌するように記載がある)
不純物による副作用の違いは?
ワセリン中の不純物は光でケトン体になり、皮膚刺激をするとのことで、プロペトは高純度だからそのリスクが低いということですが、臨床的な差はでているのでしょうか。
ワセリンではかぶれて、プロペトではかぶれないという人はいるのでしょうけど、その逆でプロペトでかぶれてワセリンで大丈夫な人もいそう。
製剤によっても異なるのでプロペト=ワセリンより大丈夫と単純にはいかなそう。
ためしに医薬品副作用データベース※3(JADER)で被疑薬として報告されているプロペト、ワセリンの件数を調べてみましたが、白色ワセリンで1件、プロペトで0件という結果。
この結果からは差はなさそうですが・・・
アトピーで敏感な人はプロペト! みたいな感じの意見もありますが、では、アトピーで使用している外用剤はすべてプロペト並みの純度のワセリンを使用しているのか?という疑問。
有効性の違いは?
これは調べてもでてこないですね・・・予想はしておりましたが。
アトピー性皮膚炎ガイドライン※4では”傷害された皮膚のバリア機能
を補充・補強または代償するためには,白色ワセリン
や亜鉛華軟膏などの,皮膚に対して保護作用がある油脂性軟膏を外用する(表15)”との記載にとどまり、表15ではすべてのワセリン製剤が併記。
使用感について
精製が進んでいくと柔らかくなっていくのでプロペトのほうが伸びが良い。
なので、使用感はプロペトのほうが人気な印象。
ワセリンも夏場はよく伸びますが・・・
伸ばしたかったらヒルドイドソフト軟膏と混合とかでも。(安定性は4週間)
白色ワセリンはプロペトの後発?
プロペト、白色ワセリンはどちらも先発、後発に分類されない医薬品です。※5
なので、薬局で勝手にプロペト→白色ワセリンへの変更や白色ワセリン→プロペトへの変更は不可。
面倒ですが疑義照会が必要。(白色ワセリン→白色ワセリンのメーカー違いも変更できない。不便です。)
まとめ
プロペトのほうが白色ワセリンより副作用が出にくいという臨床的根拠はなさそう。
白色ワセリンの中でも眼軟膏の基剤にできるものもある。
製剤間の違いはあると思われるので、問題ないものを使用。(当たり前ですね・・・)
※1 白色ワセリン(石丸製薬)インタビューフォーム
※2 白色ワセリン「ケンエー」添付文書
※3 アトピー性皮膚炎ガイドライン2018
※4 PMDA 医薬品副作用データベース
※5厚生労働省 薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について