リパクレオンとエクセラーゼの違い

 消化酵素薬のリパクレオン,パンクレアチン,エクセラーゼの比較 リパクレオンは力価が高い? 

エクセラーゼとリパクレオンはともにデンプン、たんぱく質、脂質を分解する酵素を含有する消化酵素製剤。

リパクレオンは膵臓摘出後や慢性膵炎などでかなり膵液が不足している際に処方され、エクセラーゼはなんかよく分からないけど消化不良な感じの人に処方される印象。

リパクレオンはパンクレアチンの高純度版で、「高力価」の製剤とされており、日本において唯一「膵外分泌機能不全」に適応を持った製剤となっているのですが、エクセラーゼでは効かないのでしょうか。

どの程度リパクレオンが強いのでしょうか。


基本情報の比較

適応の違い

リパクレオン:膵外分泌機能不全における膵消化酵素の補充
エクセラーゼ:消化異常症状の改善
(パンクレアチン):消化異常症状の改善

膵外分泌不全とは? 
膵臓から膵液(消化酵素)が十分に分泌されない状態。慢性膵炎などでみられる。
下痢、体重減少などの他、特異性が高い症状としては脂肪便があげられる※1

膵外分泌不全の症状も消化異常症状かと思いますので、どちらの薬剤も使おうと思えば使えそうですが、膵外分泌不全は体重減少や栄養障害も見られるほどの症状。軽い消化不良とはわけが違うんですね。

リパクレオンは膵外分泌機能不全患者に対し、栄養状態の代替指標のひとつである脂肪吸収率を改善を評価項目として臨床試験が行われており、エクセラーゼよりちゃんとしたデータがある。※2

用法の比較

食事と混ざって消化を促進するので、どちらも食直後

禁忌の違い

リパクレオン:ブタたんぱくアレルギーに禁忌
エクセラーゼ:ブタとウシたんぱくアレルギーの禁忌

エクセラーゼにはウシ由来も含まれているんですね。

含有成分の比較

リパクレオン:パンクレリパーゼ(ブタの膵臓抽出物)
エクセラーゼ:サナクターゼ,メイセラーゼ,プロクターゼ,オリパーゼS2(糸状菌の産生物),膵臓性消化酵素TA

とりあえず、どちらもすべての3大栄養すべてを消化できる酵素が入っている。
エクセラーゼのオリパーゼは食物繊維も分解できる。

膵臓性消化酵素TAってなんでしょう? 調べてみると濃厚パンクレアチンと書かれているので、こちらのパンクレアチンなんですね。
ブタ、ウシアレルギーに禁忌になっていることを考えるとどっちからもとってきた抽出物になるのでしょうね。

→リパクレオン:ブタ膵抽出物  エクセラーゼ:糸状菌由来+ブタウシ膵抽出物


至適pHと製剤の工夫

リパクレオンは腸溶製剤なので脱カプセル不可。リパクレオンは酸性で失活してしまうので。

一方のエクセラーゼは、糸状菌産生物は酸でも安定なのでコーティングされていないが、膵臓性消化酵素TAは酸で失活するので内核錠にして、こちらは腸溶錠になっている。※2
サナクターゼ,メイセラーゼ,プロクターゼは酸性条件=胃で活性化し、オリパーゼとTAがアルカリ性=腸で作用するようにできている。

脂肪分解に関して、アルカリで働くのが膵リパーゼ、酸性で働くのが胃リパーゼ。
胃リパーゼは胃で分泌されて、胃で脂肪を分解する。
これを考えると、膵臓がダメで症状でているならリパクレオンですが、胃がやられているならエクセラーゼのほうがよさそう?

リパクレオンはPTPから出すと30日で酵素活性が低下してしまうので注意。※3
エクセラーゼは特に問題なし。

→リパクレオン:全部腸で作用 エクセラーゼ:胃と腸で作用


強さの比較

強さの比較といっても適応が異なるので微妙ですが、元々膵外分泌不全に対してパンクレアチンを錠用量の10倍程度の大量投与で使用していたところにリパクレオンが発売された経緯がある。

パンクレアチンとリパクレオンの力価は以下のようになっている。

・リパーゼ:約8.4倍
・プロテアーゼで約7.0倍
・アミラーゼで約6.5倍

では、リパクレオンとエクセラーゼの強さは?

消化酵素に関しては、日本薬局方で「たんぱく消化力」「でんぷん消化力」「脂質消化力」の試験方法が定められている。

そしてなぜかパンクレアチンだけは欧州の測定方法で測定されている※4ので、リパクレオンは直接比較できないことになっていたそうだが、同文献にて日局と欧州の力価換算をしてくれている。


※4より 消化力の比較

これをみると、やはりアルカリ性条件ではパクレオン(パンクレリパーゼ)がエクセラーゼよりたんぱくは4倍、でんぷんは10倍、脂質は4倍程度強い

エクセラーゼとパンクレアチンがほとんど同程度の強さとなっている。

ここに酸性条件での作用も加味するとどうなのかは判断に困る。現状そのすべてを把握するのは困難のようです。

そして価格についても触れられており、リパクレオン1CPはエクセラーゼ1錠の約6倍。
膵外分泌不全ほどでもない人に対してリパクレオンが処方されているようであれば変更の余地はありそうです。


まとめ

アルカリ条件下では力価はリパクレオン>エクセラーゼ(4~10倍くらい)

エクセラーゼは酸性条件下でも効果を発揮する。トータルでどうなるか現状測定基準がなく不明。

膵外分泌不全の患者をしっかり見極め、必要な患者にリパクレオンを使うことが重要。


※1 慢性膵炎診療ガイドライン
※2 エクセラーゼ インタビューフォーム
※3 リパクレオン インタビューフォーム
※4膵臓 32:125~139,2017 
 2021年2月13日

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