血糖測定の最適な頻度

 糖尿病における血糖測定(SMBG)の頻度はどのようにして決める? 1日何回実施すればよい?

自己血糖測定は血糖コントロールや副作用予防に有効であることはいくつかの試験で証明されている。

ただ、その頻度に関しては、患者さんの状況によって大きく異なっている。
それは血糖コントロール状況によって異なるので仕方がないのですが、安定していても頻繁に測定している人も見る。

毎日の血糖測定が大変との相談を受けることがあるが、どのような場合にどの程度の頻度で測定が必要なんでしょうか。

血糖測定の有効性

インスリン製剤を使用している1型、2型糖尿病患者において、血糖測定が血糖コントロールの維持・改善に有効である。※1,2,3


血糖測定とHbA1c値の関係

1型糖尿病

1型糖尿病患者において、SMBGの回数とHbA1c低下には相関がみられるが、10回/日を超えると頭打ち。※4
・1日1回SMBGが増加するとHbA1c値が0.2%低下する。※5
・SMBGの回数が多いほど糖尿病性ケトアシドーシスが抑制された。※5


※4では20555名のデータが解析されている。HbA1c値の平均は8.3。
年齢により血糖測定の頻度が異なるが、概ね4~6回/日となっている。

以下のように、頻度が多いほどHbA1c値のコントロールは良好となっている。
インスリン注射(ポンプ除く)使用者のHbA1c値とSMBG頻度の関係
(■:13-26歳 🔷:1-13歳 ▲:26-50 ■点線:≦50 )

※5も1型糖尿病を対象としている。1回増えるごとにHbA1c値0.2%の改善が見られていると報告しているが、5回を超えてもで頭打ちとなっている。

2型糖尿病

強化インスリン療法中患者において、SMBG導入8週間でHbA1c値が0.36%改善。※6
インスリン非使用者では、6カ月までは有意に改善いたが1年間では差がなかった。また、QOLの改善はみられなかった。※7
インスリン非使用者ではHbA1c値は改善せず、コスト増加、QOLの低下が見られた。※8,9

※6のベースラインHbA1c値は8.1%。
有効性がみられたのはHbA1c値が8.0%以上、またはSMBGの順守率が75%以上の人。
こちらの試験は1日4回のSMBGの有効性を見ているので、その75%だと3回。

→HbA1c値が8.0%前後でもう少し下げたい人には1日3~4回のSMBGが有効そう。


血糖測定の対象者と回数の決め方

対象者

ガイドラインの記載では、インスリン使用中の1型、2型糖尿病患者は推奨グレードAとなっている。

参考としている試験は上記のもので、強化インスリン療法を実施している患者が対象となっている。

持続型インスリン+経口インスリン(BOT療法)のような場合には十分なエビデンスが見つからない。
初期は単位数を決めるために必要に思えるが、安定した場合はどうなんでしょうか・・・?すくなくとも頻回に測定する必要性はないように思えるのですが・・・たまに1日2,3回やっている人に遭遇する。


非インスリン療法の2型糖尿病について

非インスリン使用者に関しては有効性でないとする報告や有効とする報告もあり、一貫性がない。
コスト増加、QOLの低下も報告されている。

しかし、国際糖尿病連合(IDF)が出しているガイドライン※10は非インスリン療法の2型糖尿病に対しても、SMBGが血糖コントロールには有効であることが示されていると記載されている。

同ガイドラインでは、以下のような患者にSMBGが推奨されるとしている。


1. SMBG は、糖尿病患者(およびケアをする人 )と医療従事者が、合意した治療ゴールに到達するために、糖尿病ケアプランに SMBG モニタリングと治療の調整を取り入れるということについて、知識、技能、そして意思がある場合のみ使用されるべきである。

2. SMBG は、患者が糖尿病の理解を深めるための教育の一部として、またタイムリーな治療開始と治療の最適化を容易にするものとして、診断時に考慮されるべきである。

3. SMBG は、糖尿病患者が自分の疾患をよりよく理解するために、継続的な自己管理教育の一部として考慮されるべきである。また、主治医の指導の下、必要に応じて行動や薬剤を調整しながら、糖尿病のコントロールと治療に積極的かつ効果的に参加するための手段としても考慮されるべきである。

4. SMBG のプロトコル(強度および頻度 )は、各患者の教育、行動、臨床上の要求事項(急性の高血糖 / 低血糖の特定、予防、管理 )、および血糖パターンのデータに関する医療従事者の要求事項に対処するために、そして治療の意思決定の影響をモニタリングするために、患者ごとに個別化されるべきである。

5. SMBG の実施と SMBG データ使用の目的は、糖尿病患者と医療従事者の間で合意されるべきである。そして合意された目的 / ゴールと SMBG データを実際に見直したことについては、記録されるべきである。

6. 患者が定期的に血糖測定器の性能および精度をチェックできる簡単な手順が必要である。



はっきりしない書き方ですが・・・・

概要としては、
「SMBG は、糖尿病患者と医療従事者により結果が評価され、それに基づき積極的な行動変容や治療法の調整が行われた場合にのみ、有効な自己管理ツールとなるであろうと示唆されている」
とのことですので、行動変容が必要な患者や、血糖コントロール不良時に、上記の項目を考慮してやってみても?という感じでしょうか。


SMBGの保険適応

インスリン製剤やGLP-1受容体作動薬の自己注射を週に1回以上注射していればとりあえず保険適応になる。

ので、持続型だけでも使っていれば対象患者にはなっている。

自己血糖測定時に算定できる血糖自己測定器加算では、20回以上~120回以上/月で6段階に分かれている。

90回/月~は1型糖尿病、膵全摘などの要件がある。

なので、2型糖尿病では、保険範囲内で納めるには平均1日2回までになる。これを超えてくるとセンサーなどを購入しなければならない。


まとめ

自己血糖測定(SMBG)の頻度について、

・1型糖尿病:1日4回~5回で有効性が示されている。
(5回以上、10回以上では有効性が頭打ちになるとの報告あり)

・強化インスリン療法中の2型糖尿病:1日3~4回で有効とする報告あり。(保険の範囲内だと月60回)

・非インスリン療法の2型糖尿病:SMBG自体の有効性が不明。

・BOT(持続型インスリン+経口薬)の場合:報告見当たらず。

※測定頻度は血糖コントロールなど臨床症状により異なることが前提。

※1 NEngl J Med, 329, 977-986, 1993
※2 Diabetes Res Clin Pract, 28, 103-117, 1995
※3 糖尿病診療ガイドライン2019
※4 Diabetes Care, 36, 2009-14, 2013
※5 Pediatr Diabetes, 12, 11-7, 2011
※6 Diabetes care. 26. 1759-1763, 2003
※7 Cochrane Database Syst Rev, 1, CD005060 2012
※8 BMJ, 335, 132, 2007
※9 BMJ, 336, 1177-1180, 2008
※10 非インスリン治療2型糖尿病における血糖自己測定に関する ガイドライン
 2022年5月25日

関連記事