シダキュアを途中で中止・休薬してしまい、再投与する場合は初期投与量の2000JAUから? それとも維持量の5000JAUから?
減感作療法で用いるシダキュアやミティキュアは初回投与量で2週間投与後、維持量となる。
では、途中で何らかの理由で止めてしまった場合、どちらの用量から再スタートすればいいでしょうか?
先日、2カ月くらい中止していた患者さんに出会い、Drから開始はどっちからやればいいか聞かれたので詳しく調べてみました。
シダキュアの中止期間と再開時の投与量
添付文書を見ても全く記載がない。
メーカーに確認したところ、エビデンスは全くないが、実地臨床では1カ月を境に何となく分けていることが多いとのこと。
中止してから1ヶ月以内:維持量で再開
中止してから1カ月以上:初回量で再開
※全くエビデンスはなしです。初回同様、投与後は病院で要経過観察。
臨床試験の情報
エビデンスはないとのことですが、臨床試験を見ると維持量の5000およびそれ以上の10000から投与しているデータがある。
”試験結果の要約
死亡,その他の重篤な有害事象及び他の重要な有害事象は認められなかった。
有害事象は,実薬群(56 例)では 19 例(33.9%)に 49 件,プラセボ群(14 例)では 5 例(35.7%)に 9 件発現した。副作用は,実薬群(56 例)では 6 例(10.7%)に 32 件,プラセボ群(14 例)では 2 例(14.3%)に 4 件発現した。発現した有害事象及び副作用の重症度はすべて軽度であった。有害事象及び副作用の発現率において用量相関性はなく,また,投与量固定群と漸増群との間に差はないと考えられた。”
※鳥居医薬品 臨床試験概要より(https://www.pmda.go.jp/drugs/2017/P20171018001/480306000_22900AMX00967000_K100_1.pdf)
となっており、一応5000JAUで初回から投与しても大丈夫そう。
なぜ2000JAUスタートにしたのか?
上記の通り、第1相試験で別に初期用に関係がみられなかったのに、何故第2,3相試験からは初期量2000JAUの漸増を設定したんでしょうか?
同資料を読み進めていくと記載がでてきます。
”(5) 初回投与量を 2,000 JAU とする漸増法としたこと
シダトレン®を始めとして,本邦における SLIT(舌下免疫療法)の臨床研究及び当社で実施した他の SLIT 用製剤の臨床試験において,いずれも漸増法を採用していること,SLIT で見られる特徴的な有害事象の多くが投与開始 1 ヵ月以内に発現することを考慮し,医師及び患者が受け入れやすいと考えられる漸増法で実施することとした。
また,206-1-1 試験において,初回投与量が 2,000 JAU 以上でも安全性に問題がなかったこと,漸増群の最高用量である 2,000→10,000→20,000 JAU の 14 日間投与で問題となる副作用は認められず,忍容性が確認されていることから,206-2-1 試験の初回投与量を 2,000 JAU とした。”
ということで、別に2000スタートのほうが安全性が高いという根拠はないけど、まぁこれで大丈夫だったし、そもそも最初は副作用出やすいから少ないほうが受け入れやすいよね? ということよう・・・
これを見ると再開時は今までに副作用出ていない人であれば別に維持量の5000スタートでよいと判断しても問題はなさそうですね。
用量と有効性、安全性について
有効性に関しては、2000<5000≒10000のため、維持量が5000に設定されている。
インタビューフォームより。
”206-2-1 試験の期間 A における総合鼻症状薬物スコアから、2,000 JAU 群、5,000 JAU 群及び 10,000 JAU群の有効性が確認され、5,000 JAU 群は 2,000 JAU 群よりも高い有効性が示唆された一方、5,000 JAU群と 10,000 JAU 群の有効性は同程度であった。206-2-1 試験において、投与開始後早期に口腔咽頭症状等の有害事象が認められたものの、2,000 JAU群、5,000 JAU 群及び 10,000 JAU 群で特段の問題となる安全性上の懸念は示されていない。”
まとめ
シダキュア投与中に一定期間の休薬が生じてしまった場合、
実臨床では
1カ月以上空くと初期量(2000)、1カ月以内であれば維持量(5000)が多い。(エビデンスなし)
臨床試験を見る限り、初回から5000でも副作用に差は見られない可能性が高く、長期間空いても、5000から再スタートでも問題なさそう。
参考
シダキュアスギ舌下錠 添付文書、インタビューフォーム、審査報告書