フォゼベルと既存の高リン血症治療薬の違いは? 下痢が高頻度なのはなぜか? 食事の影響は?
2024年に新規作用機序の高リン血症治療薬「フォゼベル」が販売された。
下痢が高頻度であるが、透析患者は便秘が多いため使いやすそう。
昔の高リン血症治療薬は便秘の副作用が多かったが、最近のリオナやピートルは下痢のほうが多かったりする。
フォゼベルはさらに下痢の頻度は高いよう。
何故そんなに下痢になるのか?
フォゼベルの概要
適応
透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
→沈降炭酸カルシウムは「保存期及び透析中の慢性腎不全患者」、キックリンは「慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」と、CKDにも使用可能であるが、フォゼベルはリオナやピートルなどと同様に「透析患者」でないと適応とならない。
フォゼベルの作用機序
腸管上皮細胞の頂端膜に発現するNHE3を阻害し、細胞膜にお けるナトリウムイオン(Na+)とプロトン(H+)の交換輸送を阻害する。
これにより、細胞内の pH が低下し、腸管上皮細胞間隙でのリン透過性が低下することで、腸管からのリン吸収が低下する。
フォゼベル インタビューフォームより引用→NHE3とは、細胞外のNaと細胞内のプロトンを1対1で交換する二次性能動輸送体とのこと。ここを阻害すると細胞内のプロトンが上昇する。
細胞内のプロトンが上昇すると、傍細胞のリン透過性が低下するらしいです。
フォゼベルで下痢が多い理由
下痢の発現率
フォゼベルは下痢が高頻度で報告されている。
臨床試験の発現率は以下の通り。
国内第Ⅲ相単剤投与試験(血液透析施行中の高リン血症患者):下痢70.7%(58/82例)
国内第Ⅲ相単剤投与試験(腹膜透析施行中の高リン血症患者):下痢70.4%(38/54例)
国内第Ⅲ相長期投与試験(血液透析施行中の高リン血症患者):下痢56.6%(120/212例)
→60-70%となっている。
下痢になる機序
作用機序の通り、フォゼベルはNaの細胞内取り込みを阻害する。
よって、腸管側のNa濃度が上昇することになる。この浸透圧により、水が腸管側に引っ張られるため、下痢となる。
食事の影響
既存のリン治療薬はリンと結合することで吸収を抑えるタイプであった。
だから、食事中のリンと混ざり合わないといけないため、食直前や食直後の服用時点となってた。
フォゼベルの作用機序は異なるが、用法は「食直前」となっている。(1日2回のため注意)
フォゼベルの用法の設定についてはインタビューフォームに記載がある。
“海外で実施された第 I 相試験(食事の影響及び胃内 pH の影響試験)(外国人)(試験番号:D5611C00003)7, 8)で健康成人に本剤 14mg(テナパノル塩酸塩として 15mg)を 1 日 2 回投与したときの糞便中ナトリウム排泄量は、食後又は空腹時投与と比較して、 食直前投与時に有意に高く、食後投与と空腹後投与との比較では糞便中ナトリウム排泄 量に有意な差は認められなかった。また、糞便中リン排泄量は、空腹時投与と比較して、食直前投与時に有意に高く、食直前投与と食後投与及び食後投与と空腹時との比較 では、有意な差は認められなかった。更に、尿中リン排泄量は、空腹時投与と比較し て、食直前又は食後投与時に有意に低く、食直前投与と食後投与の比較では、有意な差 は認められなかった。以上より、本剤の用法は、食直前投与が適切である・・・”
→「空腹時」は有効性が落ちる。
糞便中の「リン」に関しては、「食直前」と「食後」で差はなかったようなので、食後でもよさそう?
ただ、糞便中の「ナトリウム」も見た場合、「食直前」のほうが「食後」より有意に高くなっているので、食直前のほうが、より阻害作用が強かったかも、という考えのよう。
逆手にとって、下痢がひどい場合は食後投与すれば少し落ち着く?
(適応外ですし、それなら別の高リン血症治療薬に変えればいいだけですが・・・)
まとめ
フォゼベルは、
透析中の患者しか使えない
下痢が60-70%でみられる
食事の影響を受ける(空腹時は効果低下 食直前と食後ではリンを下げることに関しては変わりないかも?)