インフルエンザの耐性ウイルスと予防接種の有効性

抗インフルエンザ薬耐性ウイルスの発生状況とインフルエンザワクチンの有効性

現在インフルエンザと言えばタミフル、イナビル、リレンザが処方される。(H30.ゾフルーザ追加)

通常の菌は耐性菌が問題となっているが、インフルエンザウイルスは耐性ができていないのでしょうか。

まずは日本で流行するインフルエンザウイルスの型について。


主なインフルエンザの型

・A型(H1N1)pdm→いわゆる新型インフルエンザ
・A型(H3N2)→ 香港A型
・B型

※新型インフルエンザの流行前に、ソ連型と呼ばれていたA型(H1N1)は、現在ほとんどみられていない。


耐性ウイルス

上記ウイルスに対して国立感染症研究所は耐性株の検出状況を報告している。
以下は2015,2016年の発生状況報告をもとに作成。



タミフル、ラピアクタ(点滴)に関しては、耐性ウイルスが1.9%でした。
ちなみにシンメトレル(アマンタジン)はA型のみの適用ですが、耐性ウイルス100%でした。

今年はA型のH3N2が多くみられております。

ちなみに今年の調査ではまだすべての薬剤において耐性ウイルス株は検出されておりません。(2017.1.27報告)

ですので、どの薬剤が処方されていてもあまり心配の必要はないかと思います。




薬剤選択

・耐性ウイルスが検出されていなければ有効性に差はなし
・吸入できればイナビルorリレンザ。(吸入できれば5歳~でも問題なし)
・吸入が難しい場合はタミフル。(2016.11末から1歳未満への投与も保険適応になりました。)
・10代の未成年なら念のためタミフルは避ける先生が多い印象。(添付文書にも警告あり。)
・イナビルは1日で終了するので、リレンザより楽かと思うのですが、口に残った粉がリレンザより苦い。

※イナビルは乳児以下、リレンザは4歳以下での実績が少なく、安全性不明となっている。だがこの年齢ですと、適切に吸入できないと思われる。


以上の点を踏まえ、患者さんが一番使いやすいものを処方されていることがベストでしょう。(処方元のお気に入りもあると思いますが。)


その他

・イナビルで副作用がみられる場合、その80%以上が吸入日または翌日に発現するため、その期間は要注意。


まとめ

抗インフルエンザ薬の有効性に差はなし。

患者さんにあった剤形、投与回数のものを選択すべき。




次にインルエンザの予防接種の有効性について見ていきます。



予防接種の有効率(計算方法)

予防接種の有効率は以下のように計算される。

予防接種をする群、しない群の2グループ(同じ人数)に分けけ、接種群の罹患人数をA,非接種群の罹患人数をBとした場合、以下の式で表される。

・接種群のうち罹患した人数…A人
・非接種群のうち罹患した人数…B人

有効率=(A-B)/A × 100%


「接種することで○%防げる」 という考えではなく、
「接種すると、しないときと比べ○%少なくなる」という意味。

通常の聞こえよりやや低めということになる。



インルエンザワクチンの有効率

ここ数年の有効率は以下の通り(アメリカCDCより)

2009年:56%
2010年:60%
2011年:47%
2012年:49%
2013年:51%
2014年:23%
2015年:47%

※対象患者数は4700-9000人

その他9シーズンをメタ解析した論文では有効率59%。

インフルエンザワクチンはその年に流行しそうな変異株を予想してワクチンを決定する。

2014年の有効率が低い原因として、流行を引き起こしたインフルエンザA型(H3N2)ウイルスの多数の変異型がワクチンに組み込まれていなかったためと発表されている。

4価ワクチンの内容

現在使用されている4価ワクチンに含まれる型は以下の通り。

・A型(H1N1 pdm09)
・A型(H3N2)亜型:いわゆる香港A型
・B型(山形系統)
・B型(ビクトリア系統)



 2017年1月28日

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