鉄を含む高リン血症治療薬の違い
リンは腎臓から排泄されるため、透析患者さんではどうしても血中リン濃度が高くなってしまいます。高リン血症になると、カルシウムと結合し、不溶性のリン酸カルシウムとなり、血管や関節に沈着(石灰化)し、動脈硬化、関節痛などを引き起こします。
このため、透析患者さんの大半は、リンを吸着させ、吸収を抑制する高リン血症治療薬が必要となります。
現在、高リン血症治療薬には以下のものがあります。
高リン血症治療薬の種類
カルタン(沈降炭酸カルシウム)
ホスレノール(炭酸ランタン)
レナジェル(セベラマー)
キックリン(ビキサロマー)
ピートル(スクロオキシ水酸化鉄)
リオナ(クエン酸第二鉄)
上記治療薬のうち、鉄を含有する薬剤はピートルとリオナの2種類。
通常高リン血症治療薬の副作用は便秘が多いが、この2剤は便秘の副作用が少ない。ただし、下痢の副作用が多くなっている。
それぞれの特徴は以下の通り。
基本情報の比較
ピートル
剤形:チュアブル錠のみ規格:250mg錠、500㎎錠
用法:1回250㎎ 1日3回食直前 MAX1日3000㎎
副作用:下痢(22.7%)
有効性:セベレマーと非劣勢
血清フェチリン変化
開始:71.07±83.29ng/mL
28週:152.68±102.23ng/mL
52週:179.30±129.07ng/mL
リオナ
剤形:錠剤錠のみ規格:250mg錠
用法:1回500㎎ 1日3回食直後 MAX1日6000㎎
副作用:下痢(10.1%)
有効性:セベレマーと非劣勢
血清フェチリン変化
開始:85.65ng/mL
28週:162.78ng/mL
52週:246.71ng/mL
※血清フェチリン500ng/mLが鉄過剰の目安
有効性と力価
リオナ
レナジェルとの12週間比較試験(リオナインタビューフォーム)
リオナ:平均投与量2691㎎で血清リン7.84→5.31(-2.53)
レナジェル:平均投与量4595㎎で血清リン7.81→5.40(-2.40)
ピートル
レナジェルとの12週間比較試験(ピートルインタビューフォーム)
ピートル:平均投与量1205㎎で血清リン7.78→5.01(-2.77)
レナジェル:平均投与量4401㎎で血清リン7.59→5.33(-2.26)
これを見ると、リオナ、ピートル共にレナジェルと非劣勢、かつレナジェルの投与量が同程度なので、リオナ、ピートル間でも有効性に差はないと思われる。
力価はリオナ500㎎≒ピートル250㎎≒レナジェル900㎎
添付文書上の初期投与量がリオナ1回500㎎、ピートル1回250㎎、レナジェル1回1-2gなので、それぞれの最低初期刀量と力価が同じといった感覚でいいでしょうか。
(カルタンは1回1000㎎、ホスレノール1回250㎎)
副作用の比較
下痢
ピートル(22.7%)、リオナ(10.1%)ともに下痢の副作用が圧倒的に多い。透析中はトイレに行くのも大変なため、患者さんによっては他剤を考慮すべき。
ただし、透析の患者さんは水分制限やレナジェル、カルタンの副作用により便秘の患者さんが多いため、一部のリン吸着剤をリオナやピートルに変更することで排便コントロールがうまくいく場合がある。
鉄過剰
ピートルの成分である酸化水酸化鉄は難溶性で吸収されにくくなっている。このため上記のような血清フェチリンの差が出たと思われる。
鉄を含むため便が黒色になる場合があるため、患者さんが驚かないように服薬指導。
注意点
ピートルはチュアブル錠だが、かみ砕かず飲み込んでしまっても問題ない。(ホスレノールにもチュアブル錠があるが、こちらは難溶性のためかみ砕かないとイレウス、腸管穿孔といった重篤な副作用を起こす場合がある。)鉄を含むため便が黒色になる場合があるため、患者さんが驚かないように服薬指導。
まとめ
リオナとピートルでリン低下作用に大きな差はなし
リオナ500㎎=ピートル250㎎
リオナは食直後、ピートルは食直前
鉄過剰のリスクはリオナ、下痢はピートルが多い