薬局における特定保険医療材料の対応

特定保険医療材料の基本 処方せんや保険請求の注意点

医療機器を示すことばには医療材料、衛生材料、保険医療材料など様々な言葉があります。

まずは各用語が何を示しているのかを見ていきたいと思います。

医療材料・衛生材料とは

医療行為の提供に必要な医療機器や器具、医薬品などの総称として使われる。
(神奈川県薬剤師会 一部改変)

一般的に衛生材料というと、ガーゼや包帯など医療・介護で使用される使い捨ての資材を示すことが多い。


保険請求できる医療機器

保険請求できる医療機器には①特定保険医療材料と②保険医療材料の2種類がある。

①特定保険医療材料

医療用医薬品と同様に価格が決められており、個々に保険請求できる医療材料のこと。

特定保険医療材料の価格は、機能区分毎に定められており、診療報酬改定・薬価改定と同 時に改定される。

特定保険医療材料は厚生労働省により品目が決められている。(2016年改定版は以下の通り)

① インスリン製剤等注射用ディスポーザブル注射器
② ヒト成長ホルモン剤注射用ディスポーザブル注射器
③ ホルモン製剤等注射用ディスポーザブル注射器
④ 腹膜透析液交換キット
⑤ 在宅中心静脈栄養用輸液セット
⑥ 在宅寝たきり患者処置用栄養用ディスポーザブルカテーテル
⑦ 万年筆型注入器用注射針
⑧ 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ
⑨ 在宅寝たきり患者処置用気管切開後留置用チューブ
⑩ 在宅寝たきり患者処置用膀胱留置用ディスポーザブルカテーテル
⑪ 在宅血液透析用特定保険医療材料(回路を含む。)
⑫ 皮膚欠損用創傷被覆材
⑬ 非固着性シリコンガーゼ
⑭ 水循環回路セット

②保険医療材料

保険医療材料も保険請求できる医療材料であるが、通常は病院が算定する指導加算や各種手技料に含まているため、特定保険医療材料のように個々に請求することはできない


特定保険医療材料の見分け方

①添付文書から調べる方法

PMDAで医療機器の添付文書を検索できるが、全ての医療機器がでてくるため、特定保険医療材料以外の医療機器も表示される。

この場合、添付文書上の品名の上に書いてある「類別(○○)」の部分の番号と、厚労省の定義(医保発0304第10号)の各定義に記載がある番号、一般名を見比べる。

(例)
上記の場合、
種類は「74」
一般名は「自然落下式・ポンプ接続兼用輸液セット」

厚労省の定義を見てみると、


002 在宅中心静脈栄養用輸液セット
() 定義 次のいずれにも該当すること。~中略~ 若しくは「延長チューブ」、又は類別が機械器具 (74)医薬品注入器であって、一般的名称が「静脈ライン用コネクタ」、「ノン コアリングニードル付静脈内投与セット」、「輸液用ラインクランプ」、「単回使 用インライン逆流防止バルブ」、「静脈ライン用フィルタ」、「単回使用輸液容 器」、「輸液ポンプ用輸液セット」、「ダイヤル目盛付輸液用ラインクランプ」、 「輸液セット用コントローラ」、「熱交換機能付静脈内投与セット」、「自然落下 式針なし輸液セット」、「自然落下式・ポンプ接続兼用輸液セット」、「輸液用連 結管」若しくは「植込みポート用医薬品注入器具」であること。 ~以下略~

となっており、在宅中心静脈栄養セットの定義に当てはまるため、これは特定保険医療材料ということになる。

毎回これを見比べるのは相当大変だと思いますので、メーカーに問い合わせるか、次の方法が現実的かと思います。

②「ENIFme」での検索

東邦薬品の「ENIFme」という医療材料分割販売用ホームページにて東邦薬品さんで扱っている医療材料(ほぼ全部)なら検索可能。

会員登録しなくても、検索はできるためただ調べるだけでしたら十分使えます。

特定保険医療材料の処方せん

処方せんには通常「商品名」「数量」が記載されてきますが、同じ商品名で多少構造が異なる製品が多数存在します。

なので、通常コード番号(商品コード)の確認が必要になる場合があります。(各メーカーのカタログなどにある番号)

記載されていない場合は処方元に確認。

処方元がコードを把握していないことも多々あるため、どのようなタイプを希望か確認しそれにあった商品を注文。

(例)
中心静脈栄養のラインセットに「シュアプラグ輸液セット」というものがありますが、フィルターの有無、1mLの敵数、側管の数などで数十種類あります。(テルモHP)

処方箋の記載例


保険請求について

特定保険医療材料の登録

レセコンによって異なると思いますが、医療材料の登録(品名、電算コード、金額)が必要となります。
現在のコード及び価格はこちらを参照(H29.2現在電算コード一覧)

薬と同じように改定があり、価格が変わることがあります。変更時はレセコンの登録内容も更新しないと返戻になるので注意。


注意が必要な特定保険医療材料

特定保険医療材料の中には、ある個数までは病院が提供しなければならなかったり、褥瘡のように重症度や期間によって請求の可否が変わってくるものがある。

①中心静脈栄養用輸液セット
病院側で在宅中心静脈栄養用輸液セット加算を算定している場合、6本までは加算に含まれているため、6本までは病院側が無償で供給しなければならない

②携帯型ディスポーザブル注入ポンプ
中心静脈栄養用輸液セットと同様、6本までは病院側が無償で供給しなければならない

③皮膚欠損用創傷被覆材
褥瘡の深度がDESIGN-R分類D3、D4及びD5(皮膚水頭症の場合はd2も可)でないと保険請求の対象とならない。

また、原則3週間までの処方となる。(それ以上処方したい場合は摘要欄にコメント)

褥瘡の深度(神奈川県薬剤師会より)


特定保険医療材料ではない医療材料

イルリガードル(栄養ボトル)や延長チューブなど、特定保険医療材料につながっていて一緒に保険請求できそうですが、これらは保険請求できないただの医療材料。



 2017年2月10日

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