ステロイド外用剤の混合と吸収率 

ステロイド外用剤の基剤・使用部位と吸収率の関係
ステロイド外用剤は基剤・主薬の性質・使用部位により皮膚透過性(吸収率)が変わります。



基剤

外用剤の主な基材は以下の通り。

・油脂性基剤
・水溶性基材
・O/W型乳剤際基剤
・W/O型乳剤性基剤
・外用液剤(ローション剤)
・その他(ゲル剤、スプレー剤、パップ剤等)

吸収率は薬物が皮膚に親和性が高いか、基剤に親和性が高いかによって変わります。

薬の親和性が皮膚>基剤ならば薬は皮膚の移行しやすくなります。逆に基剤>皮膚ならば薬は基剤にとどまろうとします。


主薬


以下は主なステロイドの溶解性です。
ベリーストロング群でも、ネリゾとパンデはやや弱めで、ストロングに近い。ストロングの中でリドメックスは少し弱く、マイルドとの中間。

ほとんどのステロイドは脂溶性のため、あとは基剤の種類次第ということになりそうです。

薬物が脂溶性ならば吸収率は水溶性>クリーム>軟膏になりそうですが、実際は以下のようになります。

一般的な吸収性は

乳剤性基剤>ローション>油脂性基剤

乳化すると分散性が良くなり、吸収率があがります。

角質がない状態(びらん)なっているとローションの吸収性が一番高くなりますが、刺激感があるので普通は使用しないと思います。




使用部位


次に使用部位について、皮膚透過性は塗布部位により大きく異なります。

以下吸収部位ごとの吸収率になります。


混合

最後にステロイド外用剤と保湿剤の混合について、ステロイドが溶剤は効果の減弱や増強、使用感を改善するため混合することがあります。

保湿剤に混ぜると薄まって弱くなりそうですが、実際はほとんどの薬剤で効果が変わらない又は増強します。

基剤に溶けているステロイド(主薬)しか吸収されないので基剤に溶けている主薬の量が多いほど効果が高くなります。

しかし、ほとんどの場合主薬は基剤に完全に溶けておらず、保湿剤(=基剤)を混合しても主薬濃度は変化しません。

基剤に溶解している主薬量


アンテベート軟膏:1/16
デルモベート軟膏:1/50
リドメックス軟膏:1/130
ロコイド軟膏:1/130
(日本皮膚科学会雑誌, 121: 2257–2264, 2011)

よって多少薄めたとしても効果が落ちることはありません

また、上記で述べたように基剤によっては皮膚透過性があがるため、油脂性基剤の軟膏にヒルドイドソフト軟膏などのクリーム剤を混合すると効果は増強されます。

唯一効果が確実に減弱するものとして、パンデル軟膏があります。パンデル軟膏は主薬が基剤に100%溶けているため、混合すると主薬濃度が低下します。(ラジオNIKKEI2011.4.6) 



 2017年2月15日

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