腎機能障害にカロナールは問題ないか
NSAIDsはCOX阻害により腎血流量を減少させてしまうため、腎機能障害を悪化する可能性がありますが、アセトアミノフェンは視床下部の体温中枢に作用し、熱放散を増大させ解熱作用を示すとされており、COX阻害作用はほぼありません。
アセトアミノフェンが腎障害を起こすとされている理由は、1900年代アセトアミノフェンのプロドラックであるフェナセチンの長期投与により腎機能障害が多発したことが原因のようです。
フェナセチンは尿細管に集積し、毒性を示すといわれております。
また、慢性腎不全患者に対してNSAIDsではなくアセトアミノフェンの投与が推奨されたことにより、アセトアミノフェンで腎機能障害が多いようにバイアスがかかってしまいました。
このため、アセトアミノフェンがNSAIDsより腎機能障害を起こさないという確実なエビデンスもありません。
今回いくつか論文を検索しましたが大規模なものはありまんでした。
参考になりそうなものを以下の2つ。
The effects of paracetamol and parecoxib on kidney function in elderly patients undergoing orthopedic surgery.(Anesth Analg. 2006 Nov;103(5):1170-6.)
対象:パレコキシブ40㎎(日本未承認)25人、アセトアミノフェン1000㎎25人、プラセボ25人
方法:術前、術後(薬剤投与後)のクレアチニンクリアランスの測定。プラセボ対照ランダム化比較試験
結果:パレコキシブでやや低下がみられたが、アセトアミノフェン、プラセ群では見られなかった。ただし、大きな差ではなかった。
試験は短期間であり、臨床上意義のある差はでなかったとのことですが、少なくともアセトアミノフェンでクレアチニンクリアランスへの影響は見られなかったようです。
Effects of acetaminophen and ibuprofen on renal function in the stressed kidney.(J Appl Physiol (1985). 1999 Feb;86(2):598-604.)
対象:運動、脱水、熱により腎負荷をかけた12人の男女
方法:アセトアミノフェン4g/day、イブプロフェン1.2g/day 4日目の朝まで投与。負荷前→ナトリウム制限→運動・水分制限→負荷中止後でGFRs等を測定。単純盲検。
結果:運動・脱水負荷時に、3群全てでGFRsの低下は見られたが、イブプロフェンで最も大きく低下した。(アセトアミノフェン34 ± 3%、イブプロフェン 41 ± 2%、プラセボ31 ± 3%)
運動負荷で腎血流量増加、レニン・アンギオテンシンⅡの増加を引き起こすことで、プロスタグランジンが関わる腎機能をある程度測定できるそうです。
しかし今までの報告によると運動負荷だけでは影響がみられなかったがナトリウム制限、脱水、熱負荷を加えると予測できるという報告から今回もこの条件で調べたとのこと。
アセトアミノフェンと腎機能障害で検索をかけてもあまり報告がないことからアセトアミノフェンは腎機能障害をほぼ引き起こさないのかと思われます。
日本のCKD診療ガイドラインでは、アセトアミノフェンは推奨とされているが、長期高用量投与は慢性腎不全のリクスとされています。