PPIの違いと使い分け

各PPIとP-CABの特徴 GERDへの有効性、ピロリ除菌率や発現・継続時間について

現在使用されているPPIは以下の4種類(括弧内は代表的商品名)

・オメプラゾール(オメプラール)
・ランソプラゾール(タケプロン)
・ラベプラゾール(パリエット)
・エソメプラゾール(ネキシウム)
・ボノプラザン(タケキャブ)※

※ボノプラザンはPPI(プロトンポンプインヒビター)とは作用機序が異なるためP-CABと呼ばれている。


PPIの作用機序

胃酸(H)は胃細胞壁にあるポロトンポンプと呼ばれる酵素(H・K-ATPase)から分泌されます。プロトンポンプは胃酸を胃内腔に分泌し、カリウムを細胞側に取り込みます。

PPIは酸性条件で不安定なため、胃酸での分解を防ぐため全ての薬剤が腸溶性となっています。

また、作用発現には胃酸で活性化が必要であり、活性化されたPPIはプロトンポンプのSH基に不可逆的に結合することでプロトンポンプの作用を阻害しますが、酸に不安定なためすぐに分解されてしまいます。

このためPPIは最大限効果を発揮するまでに数日かかるといわれています。

P-CABの作用機序

PPIとは違い、酸による活性化が不要かつ酸に安定な薬剤で、カリウムイオンに競合する形でH・K-ATPaseを可逆的に阻害します。このためカリウムイオン競合型アシッドブロッカーと呼ばれています。

酸による分解を受けず、また活性化も不要なため作用発現が早いといわれています。


各薬剤の特徴

オメプラゾール(オメプラール)

CYP2C19のPM、EM間で有効性の差が大きい。
・腸溶錠のため粉砕不可。
・ピロリ菌除菌率:80%程度
・胃潰瘍治癒率:92.5%

ランソプラゾール(タケプロン)

・OD錠があり、軽くなら粉砕可能
・ピロリ菌除菌率:83-90%程度
・胃潰瘍治癒率:87%

ラベプラゾール(パリエット)

非酵素的還元反応が主な代謝経路のため他と比較するとCYP2C19の寄与が少ない。(影響は受ける)
・逆流性食道炎に対して1日2回投与の適応を獲得している。
・ピロリ菌除菌率:86-89%程度
・胃潰瘍治癒率:95.2%

エソメプラゾール(ネキシウム)

・承認時臨床試験ではオメプラゾールと同等以上とされている。
・その後の各種PPIとの比較試験ではネキシウムが同等以上との結果。
CYP2C19のPM、EM間で有効性に差がない。
・ピロリ菌除菌率:記載なし
・胃潰瘍治癒率:記載なし

ボノプラザン(タケキャブ)

・胃酸での活性化が不要なため初日から最大効果発揮。
・ピロリ菌除菌率:92.6%
・胃潰瘍治癒率:93.5%


除菌率、治癒率は各先発薬剤の添付文書から。
耐性菌と感受性菌が分けられていない数字です。


以下は日本ヘリコバクター学会誌に記載されていたもの。

オメプラゾール、(エスオメプラゾール)、ランソプラゾール、ラベプラゾールにおいては有効性に大きな差はない。
※タケキャブは未発売時のデータ。



耐性菌に対する除菌率


ボノプラザンの添付文書上ではランソプラゾールのピロリ菌除菌率が75.9%となっています。

これは近年クラリスロマイシン耐性が進んでいる影響かと思われます。

2000年以前は10%以下であった耐性菌は2010年には35%近くなっています。

このため、上記PPIの除菌率は現在ではもっと低い数字になる可能性があります。

PPIではクラリスロマイシン耐性の場合除菌率が40%前後。
タケキャブでは83%と高値。



胃内pHの日内変動

1日1回投与において胃内pHが4以下になっている時間

ランソプラゾール、ラベプラゾール、ボノプラザン:24時間※1※2※3

オメプラゾール:14時間※4

エソメプラゾール:15時間※4


ただし、胃内pHが低ければ低いほど症状が改善するかといわれるとそうではない結果が報告されている。

ラベプラゾールは24時間以上pH4以上継続した時間の割合は50%前後という報告もある。
これを1日2回投与にすると90%近くまで上昇したとのこと。※5

ラベプラゾールに限らず難治性の場合1日2回投与にすることで効果が上がる可能性があり、ガイドラインにも1日2回投与を試みるように記載がある。


臨床成績

ガイドライン上の記載※6

GERD診療ガイドラインには以下の記載がある。

"各PPI間の直接比較を行ったRCTでは、エソメプラゾールとメプラゾールを比較した1論文を除いて、PPI間で効果に有意の差はな、びらん性GERDの初期治療について、各PPIの間で効果に有意の差はみられていない。投与早期の症状の緩解について、PPI間で差を認めるとする報告と認めないとする報告がみられ、一定の傾向はみられなかった~略~ランソプラゾール8週間投与によるびらん性GERDの治癒率はPMとhomEMで有意差を認める。~略~治癒率はCYP2C19遺伝子多型に影響を受けることが示されている。"


胃食道逆流症においては、基本的にはPPI間で有効性に差なし。

ただし、CYP2C19の遺伝子多型の影響がランソプラゾールでは見られている。
ランソプラゾールよりCYP2C19の寄与が大きいオメプラゾールはもっと影響が出ると考えられそうです。

※タケキャブについてはまだ記載なし。
ネキシウムの勉強会の際に、タケキャブVSネキシウムの比較試験について紹介があったので、こちらにまとめてあります。


最近(個人的に)話題となっているフォーミュラリーで、PPIが対象にされることが多く、基本的には第1選択としてランソプラゾール、ラベプラゾール、オメプラゾール(後発)が選ばれている。

有効性に差がないことを反映している結果でしょうか。
(ピロリ菌除菌においては別ですが)

まとめ

ピロリ菌除菌率
おそらくタケキャブが優位、その他は差なし。

GERD治療
PPI間で差はなし。(ただしCYP2C19の遺伝子多型による影響はみられている)


※1 Aliment Pharmacol Ther 42: 719-730,2015
※2 内科宝函 41: 99-106, 1994. 
※3 薬理と治療. 19:925-931, 1991
※4 Aliment Pharmacol Ther 42:719-730,2015
※5 Alimet Pharmacol Ther 19:113-22,2004
※6 日本消化器病学会 胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 20157 

 2017/02/14

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