ピロリ菌にはタケキャブでも普段はネキシウムが良い?
タケキャブが発売して以来ネキシウムはじめPPIからタケキャブに変更されている処方を結構みる。
タケキャブはPPIと比べ作用発現が早く、初日から最大効果を示すとされているが、PPIを継続服用している患者がわざわざタケキャブに切り替える必要があるのでしょうか。
胃酸分泌抑制作用もPPIより強いとされていますが、そうなるとポリープや感染症リスクがその分高くなる可能性が考えられる。
今回はタケキャブとネキシウムの比較試験から2剤を比べてみました。
基本情報
適応は若干ネキシウムカプセルが多いが、大差はなし。
併用禁忌に差はないが、代謝においてメインのCYP種が異なるため併用注意が違ってくる。(多数記載あるため添付文書参照)
ともに肝代謝で、肝機能障害時のAUC,Cmaxの上昇具合は同程度で1.2~2.6倍の範囲。
腎機能障害時の変化はタケキャブで1.2~1.3倍。
ネキシウムカプセルは記載なし。尿中未変化排泄率が1%未満のため問題ないと思われる。
GERDに対する有効性
タケキャブはその胃酸分泌抑制作用の強さからGERDに対してネキシウムより効くのではないかと期待してタケキャブVSネキシウムの臨床試験がいくつか行われた。
※GERD:胃食道逆流症 食道にびらん・潰瘍が生じると逆流性食道炎と呼ばれる
しかしその結果、タケキャブがネキシウムより優れていた項目は1つもなくほとんどが非劣勢、ものによってはネキシウムのほうが優れている結果となってしまったそう。
以下は勉強会時に示された試験の1例※9
タケキャブ20㎎、ネキシウム20㎎のRCT(合計45例、8週間)
・方法
GERDの症状に関する複数の項目を比較(GOS評価)
最初4週間はタケキャブ20㎎、その後4週間は10㎎(効果不十分例のみ20㎎継続)
ネキシウムは8週間とも20㎎。
・結果
GOSは8週間投与の場合ネキシウムで優位に改善。
FSSGについては詳細不明。
・考察
タケキャブで消化管運動の悪化がみられたが、これは無酸状態が強く、長すぎるために起こるのではないかと推測されている。
胃酸を抑えれば抑えるだけいいわけではないことようです。
タケキャブ20㎎でこの結果だそうで、値段を考えると・・・
その他いくつかの臨床試験報告があるようですが、タケキャブが勝っている報告は今のところないそうです。※3,4
全文読めていないのでネキシウムがどの程度含まれているかはわかりませんが、PPI抵抗性にはタケキャブが有効かもしれませんね。
※GERD:胃食道逆流症 食道にびらん・潰瘍が生じると逆流性食道炎と呼ばれる
しかしその結果、タケキャブがネキシウムより優れていた項目は1つもなくほとんどが非劣勢、ものによってはネキシウムのほうが優れている結果となってしまったそう。
以下は勉強会時に示された試験の1例※9
タケキャブVSネキシウムの臨床試験
・対象タケキャブ20㎎、ネキシウム20㎎のRCT(合計45例、8週間)
・方法
GERDの症状に関する複数の項目を比較(GOS評価)
最初4週間はタケキャブ20㎎、その後4週間は10㎎(効果不十分例のみ20㎎継続)
ネキシウムは8週間とも20㎎。
・結果
GOSは8週間投与の場合ネキシウムで優位に改善。
FSSGについては詳細不明。
・考察
タケキャブで消化管運動の悪化がみられたが、これは無酸状態が強く、長すぎるために起こるのではないかと推測されている。
胃酸を抑えれば抑えるだけいいわけではないことようです。
タケキャブ20㎎でこの結果だそうで、値段を考えると・・・
その他いくつかの臨床試験報告があるようですが、タケキャブが勝っている報告は今のところないそうです。※3,4
タケキャブVSプロトンポンプ阻害薬抵抗性患者※8
こちらの文献はプロトンポンプ阻害薬に難治性を示した逆流性食道炎患者に対するタケキャブの有効性を検証したもの。
患者数は24人と少ないが、21人(87.5%)がタケキャブに変更したことで症状(FSSGスコア)改善がみられている。
全文読めていないのでネキシウムがどの程度含まれているかはわかりませんが、PPI抵抗性にはタケキャブが有効かもしれませんね。
副作用の比較
前述したとおり、胃酸を抑えすぎると理論上以下の副作用が出る可能性が考えられている。※1
・カルチノイド腫瘍(ポリープ)
・感染症(肺炎、消化管感染)
・カルシウム吸収阻害、骨折リスク
・鉄吸収阻害(機序不明)
以前PPIと副作用についてまとめた際にも記載したが、上記副作用のうちPPIの影響が確実だろうとされているのは消化管感染のみ。それ以外は病態自体の影響を無視できないためPPIのせいと断言できていないようです。※6.7
カルチノイド腫瘍
胃酸分泌が抑えられると負のフィードパックによりガストリン分泌が亢進され、ガストリンがECL細胞を増殖・腫瘍化が起こすのではないかと考えられている。
(ガストリン→ECL細胞を刺激→ヒスタミン遊離亢進→胃酸分泌)
このため胃酸分泌抑制作用が強いタケキャブではポリープのリスクが高いとする報告もあるようです。
臨床試験時の副作用報告ではタケキャブで0.4%(2271例中10例)、ネキシウム0.4%(756例中3例)で大きな差はない。
審査報告書でも以下のように記載されており、現時点では注意といったところ。
メーカーさんはタケキャブのポリープ報告が多いとおっしゃっておりましたが・・・
上記試験時も安全性については差がなかったとのこと。
RMPを見ると、ネキシウムはやたら記載があるが、タケキャブはまだ特定されたリスクがなし。今後使用成績が溜まっていくと追加されていくでしょうか。
ピロリ菌除菌
ピロリ菌の除菌率に関してはタケキャブが優れているとのこと。
※2のRCTでは1次除菌でタケキャブ86.3%、ネキシウム79.9%、2次除菌でタケキャブ91.1%、ネキシウム83.3%。
ネキシウムのMRさんも認めておりましたが、ピロリ菌除菌に関してはタケキャブのほうが優れているというデータばかりとのこと。
PPIを添付文書通り8週でやめた場合のGERD再発率は9割とする報告もあり、PPIは長期服用することが多い。
値段のことも考えて、わざわざタケキャブを使う意味はなさそうでしょうか。
まだタケキャブに関する試験データが少なくガイドラインには記載されていないので、今後の改定を待ちます。
※2のRCTでは1次除菌でタケキャブ86.3%、ネキシウム79.9%、2次除菌でタケキャブ91.1%、ネキシウム83.3%。
ネキシウムのMRさんも認めておりましたが、ピロリ菌除菌に関してはタケキャブのほうが優れているというデータばかりとのこと。
効果発現までの時間
タケキャブは服用後1日で症状改善がみられるとのこと。
ネキシウムは1.5日。
タケキャブの24時間pHモニタリングを見ると4時間後移行はpH4以上が持続している。※5
胃部不快等で7日間とか処方される場合もあるので、このような場合はタケキャブのほうがすぐに効果を実感できていいいのかもしれません。
胃内pH4以上の時間割合はタケキャブ24時間、ネキシウム15時間とする報告がある。
なるべく24時間pHが4以上を継続しているほうがよいとされているが、上記報告を考えると24時間効かせ過ぎるのはあまりよくないのでしょうか。
なるべく24時間pHが4以上を継続しているほうがよいとされているが、上記報告を考えると24時間効かせ過ぎるのはあまりよくないのでしょうか。
PPIを添付文書通り8週でやめた場合のGERD再発率は9割とする報告もあり、PPIは長期服用することが多い。
値段のことも考えて、わざわざタケキャブを使う意味はなさそうでしょうか。
まだタケキャブに関する試験データが少なくガイドラインには記載されていないので、今後の改定を待ちます。
まとめ
GERD:ネキシウム
ピロリ菌:タケキャブ
長期服用:ネキシウム
短期服用:タケキャブ
PPI抵抗性:タケキャブ
副作用:現時点では差はそんなになし?
相互作用は異なる。
PPI抵抗性:タケキャブ
副作用:現時点では差はそんなになし?
相互作用は異なる。
※1 胃食道逆流症(GERD) 診療ガイドライン2015 第2版
※3 Therapeutic Research Volume 37, Issue 5, 495 - 502 (2016)※4 Therapeutic Research Volume 38, Issue 6, 635 - 642 (2017)
※5 タケキャブインタビューフォーム
※6 タケキャブ 審査報告書
※7 ネキシウムカプセル 審査報告書
※8 Digestion. 2017;95(2):156-161.
※9逆流性食道炎患者を対象とした酸分泌抑制薬の症状改善効果についての検討 - ボノプラザンとエソメプラゾールの無作為割り付け比較試験 - 平野雅弘