中心静脈栄養について

中心静脈栄養 脂肪乳剤や糖質の投与経路と投与速度などについて ガイドライン抜粋

中心静脈栄養の際に脂肪乳剤(イントラリポス等)が投与されることがある。

ガイドラインにおいて脂肪乳剤は投与すべきとされているが、感染リスク・管理等の観点から在宅においては投与されていない患者さんも多い。

今回は在宅においてイントラリポスを投与する際の注意やその他薬局で中心静脈栄養輸液を調剤する際の注意点をガイドラインから抜粋


脂肪乳剤の必要性

ガイドラインには以下の記載がある。

・静脈栄養施行時には、必須脂肪酸欠乏症予防のため、脂肪乳剤は投与しなければならない。 エビデンスAⅢ

・ 静脈栄養施行時には、肝機能障害ならびに脂肪肝発生予防のために脂肪 乳剤投与は有用である。エビデンスAⅢ

脂肪乳剤を投与しないと糖質が過剰投与となり、 脂肪肝やTPN関連肝障害の原因となる。したがって、必須脂肪酸欠乏症予防や投与エネルギーを補う目的だけではなく、静脈栄養時の脂肪肝やTPN関連肝障害発生予 防のためにも脂肪乳剤を投与することは有用である。

※血栓症の患者、重篤な肝障害のある患者、重篤な凝固障害のある患者、高脂血症(脂質異常症)の患者、ケトーシスを伴った糖 尿病の患者に対する投与は禁忌


脂質欠乏と肝障害(脂肪肝)の発生機序

矛盾しているようですが、脂肪を投与すると脂肪肝の予防になる。

脂肪が全く投与されない場合、体内では脂肪を合成しようとする。
脂肪は糖質から肝臓で合成されるため、糖質過剰、脂質欠乏状態で合成が亢進する。

そして、合成された脂肪(TG)が肝臓に蓄積し、脂肪肝となる。




脂肪乳剤の投与ルート

中心静脈栄養時はフィルターより下の側管から投与を行う。
メインの栄養剤との混合を避けるため脂肪乳剤投与時はメインルートは止める
以下ガイドラインより

"脂肪乳剤中では微生物が増殖しやすいため、経静脈的に脂肪乳剤を投与する際には24時間で脂肪乳剤投与に用いた輸液ラインを交換する。また、長期TPN患者やHPN患者では、カテーテルやデバイスへの脂肪乳剤の凝集・付着から感染したり、閉塞したりする可能性があるため、投与後には十分量の生理食塩液でフラッシュする。また、脂肪乳剤は他剤との混合によって粒子の粗大化や凝集をきたす可能性が高く、基本的に他の薬剤、特に静脈栄養輸液と混合して投与することは避ける。"

※脂肪乳剤も混合されている製剤としてミキシッドという製品が存在する。脂肪をミセル化して混合してある製剤で便利だが、脂肪乳剤は感染リスクに注意が必要であり、完全閉鎖ルートでの投与が推奨されている。(側注も原則避ける)


脂肪乳剤の投与量と投与速度

投与量

総エネルギー投与量の20-40%※(経腸栄養との記載)、ただし1.0g/kg/day以下にする。
TPNにおける欠乏予防だと総エネルギーの10~20%との記載もあり。

(糖質:50-60%、タンパク質:0.8-1.0g/kg)

必須脂肪酸欠乏予防のためには、1日総エネルギーの1-4%程度をリノール酸、0.5%程度をαリノレン酸として投与すればよい。
→20%脂肪乳剤を100-250mlを週2回投与すればよい。

投与速度

0.1g/kg/h以下とする。

例)体重50㎏の患者さんにイントラリポス20% 100mlを投与する場合

イントラリポス20%100ml=脂肪20g
 0.1g/kg/h×50㎏=5g/h 

1時間で5g投与となるため、20g投与するには4時間。
イントラリポス20%100mlを4時間かけて投与することになる。

これ以上早くなると血中トリグリセリドの上昇が起きる。(0.3g/kg/hではTG上昇がみられてしまうが、0.1g/kg.hでは見られなかった)

まとめ(脂肪乳剤)

投与ルート:フィルター下の側管
投与時の注意:メインの栄養剤は止める、終了後は生食フラッシュ
投与量:総エネルギーの20-40%、1.0g/kg以下
イントラリポス20%100-250mlを1週間に2回程度で良し
投与速度:0.1g/kg/h以下




その他メインの高カロリー輸液の投与速度などについて。(ガイドライン抜粋)

栄養用量(PPN,TPN,経管)の適応となる患者

経口摂取のみで必要な栄養量が摂取できない場合には、静脈栄養や経腸栄養による栄養療法が必要となる。エネルギー消費量あるいは必要量の60%以下しか摂取できない状態が1週間以上持続することが予想される場合には栄養療法を考慮すべきである。

腸が機能している場合は、経腸栄養を選択することを基本とする。

経腸栄養が不可能な場合や、経腸栄養のみでは必要な栄養量を投与でき ない場合には、静脈栄養の適応となる。


高カロリー輸液の適応となる患者

・栄養療法が必要な場合は可能な限り経管栄養を選択する。
・静脈栄養は、経腸栄養または経口摂取が不可能または不十分な場合に用いる。 
・中心静脈栄養法は静脈栄養の長期化が予想される場合に用いる。

栄養障害が高度な患者に対するTPNは非感染性合併症の 発生率を低下させたが、中等度の栄養障害患者に対しては、逆に感染性合併症発生率 を上昇させたというRCTあり。


TPNとPPNの選択については、主として静脈栄養の実施期間が考慮される。一般的に静脈栄養の実施期間が2週間以内の場合はPPNを、2週間以上の場合はTPNを選択するが、投与可能なエネルギー量、末梢静脈の状態なども考慮する必要がある。

抹消からは浸透圧比3以下のものに限られるため、エネルギー量は脂肪乳剤を併用しても~1300kcal/dayくらいまで

→よってPPNの適応になるのは
①経口摂取や経管栄養は可能であるが、必要量が充足できない場合
②術前の栄養状態が比較的良好で、早期に経口摂取が再開できると予想される場合 ③腸閉塞や胃腸炎で一時的に経口摂取を中止するが、短期間で再開されると予想さ れる場合



カロリー、糖質、脂質、タンパク質、水分の投与量

1日の必要カロリー

基礎エネルギー消費量(BEE):Harris-Benedict式などの推定式が用いられる。

エネルギー必要量は、「基礎代謝量×活動係数×ストレス係数」というLongの式で求める。

実際BEEを計算するのは大変なので臨床では体重当たり25 ~30kcalを基準とし、ストレスの程度に応じて増減するといったことが行われる。


糖質

総エネルギー投与量の50~60%を基準とし、病態に応じて増減する。
・静脈栄養の場合はグルコースとして5mg/kg/分以下(侵襲時は 4mg/kg/分以下)の速度で投与する。

※ブドウ糖の代謝が円滑に進むために1日3mgのビタミンB1を投与することが必須となっている。

蛋白質

体重当たり0.8 ~1.0g/日を基準とし、病態およびストレスの程度に応じて増減する。

※保存期の腎不全では、たんぱく質の投与量を0.6 ~ 0.8g/kg/日として尿毒症の症状を抑制する必要がある。一方、透析施行時には、透析膜からアルブミンなどのたんぱく質が喪失するため、必要量が増加する。日本腎臓学会のガイドラインでは、 人工透析患者では1.0 ~ 1.2g/kg/日、腹膜透析患者では1.1 ~ 1.3g/kg/日のたんぱ く質の投与が必要とされている

※肝疾患患者では十分なたんぱく質が必要であり、慢性肝炎では1.2g/kg/日程度、 肝硬変では1.0 ~ 1.3g/kg/日とする。しかし、肝性脳症で高アンモニア血症をきた した場合には、1日のたんぱく質摂取量を0.5g/kg/日程度に制限し、分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤を併用する

脂質

総エネルギー投与量の10~20%を投与。(欠乏症予防のため)
・投与速度は0.1g/ kg/時以下とし、1日1.0g/kg以上の投与は避ける。

水分

体重当たり30 ~ 40mL/日を基準とし、病態に応じて増減する。
・1.0mL×投与エネルギー(kcal/日)として算出する方法もある。投与エネルギー量が少ない場合には水分量が不足するので注意する。

ビタミン

ビタミンB1は3㎎/日を推奨(FDAは6㎎)

微量元素

基本的に1日推奨量の微量元素を投与する。。
鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、ヨウ素(I)、 セレン(Se)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)がヒトの必須微量元素とされている。

このうち、本邦で市販されている、中心静脈栄養施 行時に投与できる微量元素は、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、マンガンの5種類。



カテーテル挿入部の消毒について

CVC挿入部皮膚の処置で用いる消毒薬としては、クロルヘキシジンアルコールまたはポビドンヨードを用いる

ポビドンヨードは欧米においてもCVC挿入部の消毒に最も広く採用されている消 毒薬であるが89、クロルヘキシジンの方がポビドンヨードに比較して微生物のコロニ ー形成を抑制することが示されている、ポビドンヨードでは、十分な時間が経たなければ殺菌作用が得られないので、使用に当たっては1 ~ 2分間以上皮膚と接触させる、あるいは乾燥する時間を待って次の処置に移るようにする。

中心静脈カテーテル挿入部の抗菌薬含有軟膏やポビドンヨードゲルの塗布の適応は?
→抗菌薬含有軟膏、ポビドンヨードゲルは使用しない。(エビデンス不十分のため)

抗生剤含有軟膏は、逆に真菌による感染を促進したり耐性菌が出現したりする可能性があるため、CVC挿入部への抗菌薬含有軟膏の使用は推奨しない。

※となっているが、使用しないことを推奨するエビデンスもなしとの記載も。



フィルターの必要有無

0.22μmのフィルターは、ほとんどすべての微生物をトラップす ることができるが、フィルターがCRBSIの発生頻度を下げたことを示す証拠はない。

が、しかし

薬剤混合の衛生管理の改善が行われないうちは、すべての中心静脈ルートにはインラインフィルターを装着するよう推奨することとした。しかし、フィルターは、あらかじめ輸液ラ インに組み込まれたものを使用するのでなければ、逆に、接続の回数を増やすことに より感染の機会を増やす可能性がある点にも注意が必要である。


輸液ラインの交換頻度

処方では週1~2回とかをよく見る。
ガイドラインでは以下のようになっている。

・輸液ラインは、曜日を決めて週1~2回定期的に交換する。
・脂肪乳剤の投与に使用する輸液ラインは、24時間以内に交換する。


血糖値の管理

・定期的に血糖値をモニタリングする。
・定期的に尿糖・尿中ケトン体をモニタリングする。
・導入期は毎日、安定期は週1回を目安に血糖値をモニタリングする。
・血糖値は通常100 ~ 200mg/dLの範囲内に維持することを目標とする。


ドレッシング剤の交換頻度

週1~2回 曜日を決めて行う

パッド型ドレッシングによる毎日あるいは週2 ~ 3回のドレッシング交換でも、フィルム型ドレッシングによる週1回のドレッシング交換でも感染率には差がない。

したがって、ドレッシング交換は、曜日を決めて週1 ~ 2回、定期的に行う、という方法を推奨する。ただし、 ドレッシングの状態も毎日観察し、剥がれかけたり汚れたりしている場合には適宜交換するべきである。

フィルムかパッドか?

CVC挿入部のドレッシングとしては、感染率を考えた場合、 フィルム型かパッド型か、どちらかを特に推奨する必要がないので、使いやすさと費 用を考慮して選択すればよいことになる。考慮すべき状況としては、フィルム型ドレ ッシングはCVC挿入部の観察が容易ではあるが、血液や汗を吸い取る力が弱い点にある。


ヘパリンロックか生食ロックか?

ヘパリンロックと生食ロックのどちらが有利であるかについては、少なくとも100単位/mLを用いた場合には、ヘパリンロックの方がカテー テル開存率が有意に低率であったことが報告されている。

感染予防の問題を考慮し、ヘパリン加生理食塩液のプレフィルドシ リンジを用いたヘパリンロックを行うことを推奨する。少なくとも、大量に作り置き したヘパリン生食を複数回、複数の患者に使用することは集団感染の原因となる危険 性があるため、禁忌とすべきである。


カテーテル関連血流感染症(CRBSI)の対応

他に感染源が考えられない場合には、カテーテルを抜去する。
CRBSI自体を抗菌薬等で治療しようとするよりも、CVCを抜去して 入れ換えるという方法の方が確実である。

CRBSIに対する基本的対処方法は感染したCVCの抜去である。
通常はCVCを抜去 することにより解熱し、臨床症状も改善する。

しかし、CVCを抜去する時期が遅れたり、原因菌の種類によっては全身性の感染症に進展、あるいは別の部位に感染巣を 形成したりした場合には、抗菌薬治療がきわめて重要である。

CRBSIに続発あるいは併発した感染症に対しては抗菌薬の全身投与による治療が必要である。欧米でも合併症を伴うCRBSIに対しては、CVCを抜去し、かつ、抗菌 薬を投与するという治療方法が標準的に実施されている。その治療期間は、 coagulase-negative Staphylococciが関連したCRBSIに対しては5 ~ 10日で、合併症 のないStaphylococcus aureusに関連したCRBSIでは10 ~ 14日、とされている。深 在性の感染症(心内膜炎や敗血症性血栓症)を有するCRBSIでは抗菌薬による治療を 4 ~ 6週間継続する必要がある。

抗菌薬ロック療法のエビンデンスは?

通常は全身的抗菌薬治療と併用して行われる。その方法には統一されたものはないが、多くの研究では2週間継続している。

しかし、その効果については一定の見解が得られていないだけでなく、逆に原因微生物が耐性を獲得する可能性もある。さらに、 いったん感染徴候が消失しても、病原微生物の種類によっては再発することもあるので、適応については慎重であるべきである。


肝障害時の静脈栄養

肝不全用アミノ酸製剤(アミノレバン®、モリヘパミン® )は、BCAAが総アミノ酸量の35 ~ 36%含まれ、トリプトファンや芳香族アミノ酸、含硫アミノ酸の含有量を減らしてFischer比を高くした組成となっている。

分岐鎖アミノ酸を増量した肝不全用アミノ酸製剤は、肝性脳症にのみ使 用する。肝性脳症時のアミノ酸インバランスを是正する目的に使用する。

これまでの meta-analysis35や Cochrane Database Systematic Review36でも肝性脳症への有効性は示されているが、生存率の 改善に寄与することは示されていない。

基本的に肝不全用アミノ酸製剤は肝性脳症合併患者にのみ使用するべきである。

※静脈栄養ではなく、肝硬変患者に対するBCAA顆粒製剤45,46,47,48,49、あるいは肝不全用経腸栄養剤の投与は血清アルブミン濃度、QOL,生存率を改善することがエビデンスとして示されている。


 2018/08/04

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