ノベルジンとプロマックの用量換算

ノベルジンの用法は食後?空腹時?  プロマックとの力価換算 それぞれの亜鉛含有量

ノベルジンは酢酸亜鉛を主成分とする亜鉛製剤。

適応には低亜鉛血症に加え、ウィルソン病というものが含まれている。

用法をよく見ると適応によって異なっている。

ノベルジンの用法

ウィルソン病(肝レンズ核変性症) 
成人:通常1回50mgを1日3回経口投与する。最大投与量は1日250mg(1回50mgを1日5回投与)とする。
6歳以上の小児:通常1回25mgを1日3回経口投与する。
1歳以上6歳未満の小児:通常1回25mgを1日2回経口投与する。
なお、いずれの場合も、食前1時間以上又は食後2時間以上あけて投与すること。 

低亜鉛血症 
成人及び体重30kg以上の小児:1回25~50mgを開始用量とし1日2回経口投与する。
体重30kg未満の小児:1回25mgを開始用量とし1日1回経口投与する。
最大投与量は成人及び体重30kg以上の小児では1日150mg(1回50mgを1日3回)、体重30kg未満の小児では75mg(1回25mgを1日3回)とする。
なお、いずれの場合も、食後に投与すること。


ウィルソン病と亜鉛の作用

ウィルソン病について

難病情報センター
"ATP7B遺伝子の変異により銅の胆汁中への排泄が阻害され全身臓器に銅が沈着して組織障害を引き起こす。(精神神経症状、肝機能障害等)
早期に診断され、適切な治療を続けた場合は予後良好なことが多い。治療の中断は致死的である。
現在、酢酸亜鉛(商品名:ノベルジン)、トリエンチン(商品名:メタライト)、ペニシラミン(商品名:メタルカプターゼ)の3種類の飲み薬があります。大切なことは、空腹時(食事との関係:食前1時間以上前、食後2時間以降)に服用することです。"

患者数は約3000人と推定されている。


ノベルジン(亜鉛)の作用
ヒトは亜鉛やカドミウムなどの重金属を摂取すると、メタロチオネインというキレート作用のあるタンパク質が生成される。

ノベルジンを投与すると、メタロチオネインが誘導され、ウィルソン病で過剰になっている銅とキレートを作り、排泄を促進することができる。

メタロチオネインは様々な臓器で生成されるが、ノベルジンの作用機序は腸管細胞でのメタロチオネイン誘導及びそれによる同吸収阻害がメインで、さらに吸収された亜鉛による肝臓等による効果も考えられている。※1

メタロチオネインの誘導には約5日程度かかるため、ウィルソン病であることが判明し、治療開始となった場合、すでに過剰になっている銅の排泄も早急に行わなければならないため、トリエンチンなどのキレート剤を併用することになる。

この際、ノベルジンと同時服用してしまうと亜鉛とキレート形成してしまうため注意。


服用時点が異なる理由

ノベルジンのインタビューフォームに以下のように記載されている。

"亜鉛の吸収は、飲食物(パン、野菜、果物、卵、ミルク、コーヒー等)の影響(吸 収阻害)を受けることから、設定した 。 特にフィチン酸と繊維を中心とした食物中成分は、亜鉛と結合し、腸管細胞への 亜鉛の取り込みを阻害し、亜鉛の吸収が遅延することが報告されている 。 本剤を空腹時に投与した場合、悪心・嘔吐等の消化器系副作用が出現しやすくな るといわれている 。ウィルソン病においては疾患の重篤性を鑑み、亜鉛吸収における食物の影響を避けるため用法を厳密に設定した。 

一方、低亜鉛血症においては、消化器系副作用を可能な限り回避するため食後投与と設定した。低亜鉛血症患者を対象とした国内臨床試験において、本剤を食後投与として実施した結果、有効性が確認されている。また、副作用として悪心が 5.4%(4/74 例)、嘔吐が 4.1%(3/74 例)に認められたがいずれも軽微であり、食 後投与とすることに問題はなかった。 これらの理由により、ウィルソン病と低亜鉛血症では用法が異なった記載となっ ている"

ウィルソン病では銅過剰になることが致命的であるため、確実に亜鉛を吸収させたいから食間。一方亜鉛欠乏症では亜鉛の吸収が多少阻害されることは問題にならないため、吐き気軽減のため食後服用になっている。


プロマックとノベルジンの亜鉛含量

適応はないが亜鉛欠乏でよく処方されるのがZn含有の胃薬プロマック。
ノベルジンは25㎎1錠269.5円(H30.8現在)、プロマックは75mg29円と約10倍の差がある。

そりゃプロマック使いたいですね。
ノベルジンは亜鉛25㎎含有、プロマックは75㎎中に16.8㎎含有※している。

ノベルジン25㎎2錠=プロマック75㎎3錠 といったところ。

※プロマックの構造式は[C9H12N4O3Zn]なので、分子量を求めると289(g/mol)。
プロマック75㎎=75×0.001(g)/289=0.0002595mol
よってプロマック75㎎中には0.0002595×65(Znの原子量)×1000=16.8(mg)のZnが含まれている。
血中濃度を見るとプロマック75㎎単回はノベルジン10~25㎎の間くらいに入っている。


まとめ

ウィルソン病:効果優先 食間(食前1時間以上、食後2時間以上)
低亜鉛血症 :吐き気の予防優先 食後
プロマック75㎎=亜鉛16.8㎎ ノベルジン25㎎=亜鉛25㎎

※1 ノベルジンインタビューフォーム

 2018年8月9日

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