アリセプトとイクセロンパッチの比較

イクセロンパッチは吐き気などの消化器系症状が出にくい?


認知症治療薬にはコリンエステラーゼ阻害薬のドネペジル(アリセプト)、リバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ)、ガランタミン(レミニール)とNMDA阻害薬のメマンチン(メマリー)がある。

メマリーは唯一作用機序が異なり多剤と併用可、副作用もコリンエステラーゼ阻害薬に見られる吐気、下痢、嘔吐などの消化器系副作用が少ない代わりに眠気、便秘、めまい、ふらつきが出やすい。※1第3章

コリンエステラーゼ阻害薬は基本的に有効性・副作用に関しては大きな差がないと言われているが、経皮吸収型のリバスチグミンは消化器系副作用が少ないといわれている。

どのくらい異なるのか気になったので調べてみました。
まずは全体的な違いについて。

認知症治療薬4剤の比較

有効性(アルツハイマー型)

ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンにおいて有効性に大きな違いはないとされている。※1第6章

コリンエステラーゼ阻害薬間では作用機序が若干異なるものの、有効性、副作用について有意な差はない。ただし、副作用の傾向(リバスチグミン:皮膚症状、その他は消化器系)や行動障害や全般的機能の改善にわずかな差がみられてはいるとのこと。


適応

ドネペジル:低~高度アルツハイマー型認知症(先発のみレビー小体型認知症に適応あり)
リバスチグミン:低~中度アルツハイマー型認知症
ガランタミン:低~中度アルツハイマー型認知症
メマンチン:中~高度アルツハイマー型認知症


副作用

コリンエステラーゼ阻害:嘔吐、吐き気、下痢 (重篤:徐脈、QT延長、失神)
NMDA受容体阻害薬:眠気、便秘、めまい、ふらつき、頭痛 (重篤:失神、精神症状)



次にコリンエステラーゼ阻害薬の中でも副作用に差があるとされているリバスチグミンとその他の比較。


アリセプトとイクセロンパッチの比較

副作用の比較

ガイドラインには経皮吸収型製剤は血中濃度が安定しやすく、消化器症状が出にくいが、貼付部位の皮膚反応がでやすいと書かれている。

確かにイクセロンパッチに皮膚紅斑・掻痒感は高頻度で見られる。
添付文書の臨床試験時は紅斑404例(37.7%)、そう痒感393例(36.6%)、接触性皮膚炎273例(25.4%)となっており、3人に1人は何かしら症状が出ることになる。

在宅で使用されている患者さんでも2人に1人は中止にならない程度の紅斑・痒みがみられ、5人に1人くらいは中止になっている印象。

ではその分どの程度消化器症状がでにくくなっているのでしょうか。

インタビューフォーム上では
イクセロン:嘔吐7.8%、悪心7.6%(安全性解析の対象となった1073例中)
アリセプト:嘔吐0.9%、悪心2.2%(承認までの臨床試験457例中)

使用成績調査では
イクセロン:?
アリセプト:胃腸障害3.8%(122/3240、内訳:悪心1.7%、嘔吐0.6%)

となっており、イクセロンパッチのほうが吐き気が多くなってしまっている。

ドネペジルからリバスチグミンのパッチ製剤に変えたことで吐き気が3.8%から0.8%に減ったとする報告もある。※3

ドネペジルからリバスチグミンの経皮吸収製剤又はカプセル剤に変更した際は、経皮吸収型製剤で吐き気3.8、嘔吐4.2%に対し、カプセル剤で32.9%、24.1%とかなり高くなっている。※2

経口剤のリバスチグミン(日本未承認)よりは貼付剤のリバスチグミンのほうが吐き気はでないようですが、上記のデータからはドネペジルとイクセロンだとどちらが出ないのかはよくわかりませんでした。

Drに聞くとやはりイクセロンのほうが消化器症状は出にくいとおっしゃる方がほとんど。

ちなみにレミニールは承認時臨床試験において吐気12.4%、悪心14.9%とかなり高頻度。


※1 認知症疾患診療ガイドライン2017
※2 Int J Clin Pract. 2010 Jan;64(2):188-93.
※3 Am J Alzheimers Dis Other Demen. 2009 Jun-Jul;24(3):267-75
 2018年8月12日

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