HIF-PH阻害薬(HIF活性化薬)の比較

腎性貧血の経口剤HIF-PH阻害薬とは?

先日の慢性腎不全(CKD)の勉強会にて、今後の腎性貧血治療薬として期待が集まっている薬剤としてHIF-PH阻害薬というものがあるとのことでした。

腎障害になると、腎臓でのエリスロポエチン産生量が低下することで腎性貧血となる。

エリスロポエチン製剤は注射剤であり、投与経路は透析患者の場合透析経路からの静脈内投与、CKD患者では皮下注射となっている。

HIF-PH阻害薬は経口剤であり、エリスロポエチン製剤にとって代わるのではないかと期待されているそうです。

ここ数年で一気に販売されているので随時整理。



HIF-PH阻害薬について

作用機序

HIF-PH:低酸素誘導因子(HIF)-プロリン水酸化酵素含有タンパク質(PH)の略。

HIF:細胞への酸素供給が不足すると産生される転写因子。
血管新生や造血反応など様々な遺伝子発現に関与するのだが、そのうちの1つにエリスロポエチンの産生がある。※1

このHIFは通常PHによってすぐ分解されてしまう
HIF-PH阻害薬はHIF-PHを阻害することで、HIFの分解を抑制し、エリスロポエチンの産生を増やすことができる。


HIF-PH阻害薬の効果は、人間が酸素が薄い場所(高地)にいった際に体内で起こるメカニズムと一緒とのこと。


ドーピング対象薬剤?

作用機序的にドーピングに引っ掛かりそうなので検索。

Global DROの検索ではまだ表示されませんでしたが、禁止表国際基準という世界アンチドーピング機構が策定している禁止薬物一覧には記載あり。

日本語版抜粋
”以下の物質および類似の化学構造又は類似の生物学的効果を有する物質は禁止される。
1. エリスロポエチン(EPO)および赤血球造血に影響を与える因子 以下の物質が禁止されるが、これらに限定するものではない: 1.1 エリスロポエチン受容体作動薬 ダルベポエチン(dEPO);エリスロポエチン(EPO); EPOの構造に基づいて作製された化合物[EPO-Fc、メトキシポリエチレングリコール-エポエチン ベータ(CERA)等]; EPO模倣ペプチドおよびそれらの作製された化合物[CNTO-530、ペギネサタイド等]等 1.2 低酸素誘導因子(HIF)活性化薬 コバルト;ダプロデュスタット(GSK1278863);IOX2;モリデュスタット(BAY 85-3934); ロキサデュスタット(FG-4592);バダデュスタット(AKB-6548);キセノン 等 1.3 GATA阻害薬  K-11706 等 1.4 形質転換成長因子β(TGF-β)シグナル伝達阻害薬 ラスパテルセプト;ソタテルセプト 等 1.5 内因性修復受容体作用薬 アシアロEPO;カルバミル化EPO(CEPO)等”



HIF-PH阻害薬の発売状況


2021年7月現在、以下の5成分が薬価収載されている。

ロキサデュスタット(アステラス):2019年11月発売(商品名エベレンゾ)
バダデュスタット(田辺三菱):2020年8月発売(商品名:バフセオ)
ダプロデュスタット(グラクソ):2020年8月発売(商品名:ダーブロック)
モリデュスタット(バイエル):2021年4月発売(消費名:マスーレッド)
エナロデュスタット(鳥居):2020年12月発売(商品名:エナロイ)


基本情報の比較

各添付文書、インタビューフォームから作成

適応はすべて同じ。

用法・用量について

用法・用量がかなり複雑。
CKDと透析(腹膜、血液)で分かれているのもあれば分かれていないものもある。

基本は初回量があり、ヘマトクリット値(Hb)を見ながら決められた増量幅、間隔で増量していく。

食事の影響について

マスーレッドは食後投与、エナロイは空腹時投与。 それ以外は指定なし。(影響なし)

エナロイの食事の影響を調べた試験では100㎎と通常の25倍の量で行われている。


半錠について

エナロイのみ半錠のデータがしっかりある。
インタビューフォームに何故か分割ハサミで分割するように記載されている。(メーカーに来たが、試験でそうしたからであり、特殊な理由はないとのこと)


相互作用について

似ている者同士もあるが、全然異なるものもある。

一部は透析患者で使われるリン吸着剤と相互作用があるため注意。


HIF-PH阻害薬の副作用

HIF-PH阻害薬の副作用として心配されているのが、HIFによる血管新生に関連する副作用。

先ほど記載したように、HIFは血管新生に関するVEGFの産生も促進してしまう可能性がある。

VEGF(血管内皮細胞増殖因子)はがん細胞の増殖、糖尿病性網膜症における異常血管新生の進行、リウマチの炎症等に関与しているため、HIF-PHによりこれらの疾患が発生・進行するのではないかと心配されている。


腎性貧血について

腎性貧血とは,腎臓においてヘモグロビンの低下に見合った十分量のエリスロポエチンが産生されないことによって引き起こされる貧血であり、貧血の主因が腎障害以外に求められないもの。

貧血を合併するCKD患者は鉄欠乏・鉄過剰となることがあるため定期的な鉄評価を行う必要がある。
鉄欠乏や鉄過剰を診断する検査法は確立していないが、血清フェチリン、TSATの測定を推奨している。
経口鉄剤は貯蔵鉄量を確認しながら100~200mg/日を投与する。 ※2




※1 日本透析医学会 2015 HIFと貧血と鉄代謝 田中哲洋
※2 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン 日本透析医学会 2015

 2018/08/18

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