HIF-PH阻害薬(HIF活性化薬)とは

腎性貧血の経口剤HIF-PH阻害薬とは?

先日の慢性腎不全(CKD)の勉強会にて、今後の腎性貧血治療薬として期待が集まっている薬剤としてHIF-PH阻害薬というものがあるとのことでした。

腎障害になると、腎臓でのエリスロポエチン産生量が低下することで腎性貧血となる。

エリスロポエチン製剤は注射剤であり、投与経路は透析患者の場合透析経路からの静脈内投与、CKD患者では皮下注射となっている。

HIF-PH阻害薬は経口剤であり、エリスロポエチン製剤にとって代わるのではないかと期待されているそうです。



HIF-PH阻害薬について

HIF-PH:低酸素誘導因子(HIF)-プロリン水酸化酵素含有タンパク質(PH)の略。

HIF:細胞への酸素供給が不足すると産生される転写因子。
血管新生や造血反応など様々な遺伝子発現に関与するのだが、そのうちの1つにエリスロポエチンの産生がある。※1

このHIFは通常PHによってすぐ分解されてしまう
HIF-PH阻害薬はHIF-PHを阻害することで、HIFの分解を抑制し、エリスロポエチンの産生を増やすことができる。


HIF-PH阻害薬の効果は、人間が酸素が薄い場所(高地)にいった際に体内で起こるメカニズムと一緒とのこと。

エリスロポエチン製剤同様ドーピング対象薬剤でしょうね。


HIF-PHの開発状況

第3相試験

ロキサデュスタット(アステラス):2018年度中に発売→2019年8月審議入予定:商品名エベレンゾ→2019.11月発売済み
バダデュスタット(田辺三菱):2020年に発売?
ダプロデュスタット(グラクソ)
モリデュスタット(バイエル)


ロキサデュスタット
遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤(rHuEPO)またはダルベポエチンアルファ(ネスプ)製剤による治療歴を有する血液透析期のCKDに伴う貧血患者を対象として、有効性および安全性をダルベポエチンアルファと比較した第3相試験において、主要有効性評価項目において、ネスプと非劣勢※2

バダデュスタット
標準治療薬である赤血球造血刺激因子製剤(ESA)のダルベポエチンアルファ(ネスプ)を対照薬として検証するランダム化非盲検比較試験を進行中。
ヘモグロビン値の改善効果/ESAからの切替および維持効果をダルベポエチン アルファと比較し非劣性を示すことで、腎性貧血に対するMT-6548の治療効果を評価するとのこと。※3

エベレンゾ

2020年.7月時点で唯一発売されているHIF-PH阻害薬。

有効性に関してはダルベポエチン(ネスプ)と非劣勢。

注意すべき副作用としては脳梗塞、心筋梗塞などの血栓塞栓症。
以下警告の内容
”透析期の腎性貧血患者を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験(国内第Ⅲ相比較試験(HD)[CL-0307]、国内 ESA 未治療患者対象試験(HD)[CL-0308]、国内長期投与試験(HD)[CL-0312]、国内一般臨床試験(PD)[CL-0302]) において、副作用として「シャント閉塞」7 例/444 例(1.6%)、「脳梗塞」3 例/444 例(0.7%)、「医療機器内血 栓」2 例/444 例(0.5%)、「ラクナ梗塞」1 例/444 例(0.2%)、「深部静脈血栓症」1 例/444 例(0.2%)、「頚静脈 血栓症」1 例/444 例(0.2%)、「網膜静脈閉塞症」1 例/444 例(0.2%)、「急性心筋梗塞」1 例/444 例(0.2%)が認 められた。また、血液透析患者対象の国内第Ⅲ相試験(CL-0307、CL-0308 及び CL-0312 試験)の併合データ において、本剤群ではダルベポエチンアルファ群と比較して血栓塞栓症関連事象の発現割合が高い傾向が認められ(本剤群 11.3%、ダルベポエチンアルファ群 3.9%)、重篤な血栓塞栓症関連事象の発現割合についても、本剤群で高い傾向が認められた(本剤群 8.2%、ダルベポエチンアルファ群 2.6%)。本剤投与中に重 篤な血栓塞栓症があらわれ、死亡に至るおそれもあることから、本剤の使用に際しては十分な注意が必要 と考えられるため警告として設定した。”


HIF-PH阻害薬の副作用

HIF-PH阻害薬の副作用として心配されているのが、HIFによる血管新生に関連する副作用。

先ほど記載したように、HIFは血管新生に関するVEGFの産生も促進してしまう可能性がある。

VEGF(血管内皮細胞増殖因子)はがん細胞の増殖、糖尿病性網膜症における異常血管新生の進行、リウマチの炎症等に関与しているため、HIF-PHによりこれらの疾患が発生・進行するのではないかと心配されている。


腎性貧血について

腎性貧血とは,腎臓においてヘモグロビンの低下に見合った十分量のエリスロポエチンが産生されないことによって引き起こされる貧血であり、貧血の主因が腎障害以外に求められないもの。※4

貧血を合併するCKD患者は鉄欠乏・鉄過剰となることがあるため定期的な鉄評価を行う必要がある。
鉄欠乏や鉄過剰を診断する検査法は確立していないが、血清フェチリン、TSATの測定を推奨している。
経口鉄剤は貯蔵鉄量を確認しながら100~200mg/日を投与する。 ※4





※1 日本透析医学会 2015 HIFと貧血と鉄代謝 田中哲洋
※2 アステラス 2018.5.31 プレリリース
※3 田辺三菱製薬 NEWS RELEASE 2017.11.1
※4 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン 日本透析医学会 2015

 2018/08/18

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