医療ビッグデータの種類と使用方法(NDB,MID-NET,JADER)

医療ビッグデータの種類と使用方法

近年製薬会社の研究開発に医療ビッグデータ(リアルワールドデータ)を用いる試みが進んでいる。

医療ビッグデータとは、実臨床から収集した膨大な医療データ。
これをを解析することで、わざわざ臨床試験や市販後調査を行わなくても、安全性や副作用発現、他剤との比較等を調べることができる。

平成30年4月1日にはGPSP省令が改定され、ビッグデータを製造販売後調査(使用成績調査、特定使用成績調査等)に用いられるように法整備がされた。
(もちろん使用できるデータベースは基準が決められており、今のところMID-NETは要件をちゃんと満たしている?)


医療ビッグデータには厚労省が主導で行っているNDB(ナショナルデータベース:レセプト情報・特定健診等情報データベース)やPMDA(+厚労省)主導のMID-NET、PMDAの副作用報告情報JADER、FDAの副作用報告情報FAERSなどがある。

NDB:レセプト情報
MID-NET:契約医療機関からの医療情報
JADER:副作用自発報告
FAERS:副作用自発報告


これらの情報はどのように用いればいいんでしょうか。
簡単に使えればよいのですが、そうもいかないようです。

NDB

もともとは医療費の適正化を行うために収集されていたものなので、主に国や都道府県における医療費適正化計画作成等に用いられている。

現在では第3者(研究機関、大学等)も使用することができる。

NDBデータのうち、汎用性の高い基礎的な情報については、集計表が作成されており、誰でもみれるオープンデータとして公表されている。(こちら)

もっと本格的に使用する場合は、申請や審査等があり、かなり大変なよう。
何より解析には専門的な知識が必要で凡人にはできないでしょうか。

活用促進のために、オンサイトセンターという施設を設立し、そこで情報解析を行えるようにしたらしいが、それも今のところほとんど使われていないとのこと。


レセプトデータには傷病名、診療実施数、投薬、処置などに関する情報が含まれているため、これらの情報を解析することである疾患の合併症リスクを調べたり、副作用発現(疾患情報だからベンゾジアゼピン系服用患者の骨折率とか)等を分析することができるようです。


MID-NET

PMDAが協力医療機関(10拠点23病院)から情報を収集し、データベース化している。

NDBでは収集されていないDPCデータや電子カルテのデータも収集されているため、より詳細な情報を解析できる。

JADERなどの自発報告と違い、能動的に副作用情報を収集できる、副作用の発現率がわかる、非投与群の副作用発現も分かるなとのメリットがある。


MID-NETもNDB同様、第3者が利用する場合には申請・審査が必要。

リン酸コデインによる呼吸抑制リスクの評価や、プラザキサとワーファリンの出血リスクの比較などの解析が試験的に行われた。



全然深く理解できていないので、どんなことがどの程度わかるのは、いまいちわかりません・・・

薬局薬剤師がビックデータからさらっと副作用発現率や有効性の比較などを検索できるようになれば嬉しいですね・・



次は自発報告による副作用情報のデータベースについて。
こちらは薬局薬剤師でも頑張ればなんとなく使えそう・・・と思って見ていましたが、そう簡単にはいかなそうでした。

PMDAが行っているJADERと、FDAが行っているFAERSがあるが、とりあえず日本のJADERについて調べてみました。

JADER

概要

PMDAの医薬品副作用データベース(Japanese Adverse Drug Event Report database)。

薬機法に基づき、医療機関から報告された副作用情報をデータベース化したもの。

PMDAのホームページから誰でもダウンロード可能。

ダウンロードすると、次の4つのエクセルファイルがでてくる。

・demo:症例(性別、年齢、慎重、体重、報告年、)
・drug:薬剤(医薬品名、被検薬or併用薬、投与経路、期間、用法・用量、適応)
・hist:副作用(有害事象、転帰、発現日)
・reac:原疾患(原疾患名)

それぞれすべてに識別番号がついており、同じ識別番号が同じ症例ということになる。


解析方法

まずは解析したい(シグナル検出したいと表現する?)有害事象を正確に拾い上げなければならない。

ここで用いられるものが、MedDRA標準検索式(SMQ)というもの。

"MedDRA標準検索式(Standardised MedDRA Queries:SMQ)は、ある定義された医学的状態または関心のある領域に関連するMedDRA用語のグループで、通常は基本語(Preferred Term:PT)レベルで構成されている。"※2

何言っているかあまり理解できないのですが、SMQという大枠の疾患に対し、それである可能性のある疾患をPTとして設定し、拾い上げるようです。


※例
SMQ:間質性肺炎疾患
PT:間質性肺炎、リウマチ肺、急性肺損傷…など

PTは解析時に設定するため、SMQを示す可能性の高いPTのみを設定したり、可能性のある疾すべてを拾えるように多くのPTを設定する場合もある。(狭域、広域)

JADERを用いて間質性肺炎疾患のシグナル検出を行っている論文では、間質性肺炎が重篤な副作用であることから、もれなく拾うためにPTが58個も設定されていた。※3

調べたい対象薬剤における目的の有害事象の発症率と、全報告数における有害事象の発症率を比較することでシグナル検出※を行う。

※世界保健機関(WHO)の定義では、「それまで知られなかったか、もしくは不完全にしか立証されていなかった薬剤と有害事象との因果関係の可能性に関する、さらに検討が必要な情報」とのこと。



勉強不足でまだまだ理解できないのでざっくりメモとして・・・

とりあえずNDB,MID-NETはコスト面からも知識面からも普通には使用困難
JADERはもう少し解析方法を勉強してみようかと思います。


※1 医薬品・医療機器等安全性情報 No351 2018.3
※2 MedDRA 標準検索式(SMQ)手引書
※3 Jpn.J.Drug Inform. 17(3):145-154(2015)
参考:薬の有害事象と薬剤疫学 https://czeek.com
 2018年8月19日

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