腎機能障害で副甲状腺機能亢進症はなぜ起こる?
副甲状腺からはパラソルモンというホルモンが分泌されている。
パラソルモンはカルシウム受容体に作用し、骨吸収を促進することで血中カルシウム濃度を上昇されせる。
骨は主にカルシウムとリンからできているため、この際同時にリンも放出される。
腎臓ではカルシウムの吸収を促進し、リンの吸収を抑制する。
リンは骨からの放出より腎臓からの吸収抑制(排泄促進)のほうが大きくなるため、結果的に血中リン濃度は低下する。
パラソルモン分泌=血中Ca↑、血中P↓
副甲状腺機能亢進症
副甲状腺機能亢進症とは副甲状腺からのパラソルモン分泌が過剰になっている状態。
副甲状腺機能亢進症には、副甲状腺自体の肥大が原因となる原発性副甲状腺機能亢進症と、原因疾患があり、それにより引き起こされる二次性副甲状腺機能亢進症とがある。
二次性副甲状腺機能亢進症を引き起こす代表的な疾患として腎不全がある。
腎不全による副甲状腺機能亢進症
正常な腎臓ではビタミンDの活性化及びリンの排泄が行われているが、腎不全になるとビタミンDを活性化できなくなり血中カルシウム濃度が低下し、さらにリンは排泄できなくなり血中リン濃度は上昇する。
腎不全患者=血中Ca↓、血中P↑ (副甲状腺機能亢進前)
このような状態になるとカルシウム濃度上昇及びリン排泄を目的としてパラソルモンの分泌が亢進する。
パラソルモン分泌が亢進し、副甲状腺が長期間刺激され続けると、副甲状腺は肥大化し、やがて血液中のカルシウムの値に関係なくパラソルモンが分泌され、血液中のカルシウム濃度が高値となる。(=副甲状腺機能亢進状態)
さらに腎不全(透析)患者ではリンの排泄ができないためリンもに高値となってしまう。
腎不全かつパラソルモン過剰=血中Ca↑↑、血中P↑↑
過剰なカルシウム、リンは全身の心血管系に蓄積し石灰化することで、動脈硬化などの心血管系障害の原因となる。
過剰なカルシウム、リンは全身の心血管系に蓄積し石灰化することで、動脈硬化などの心血管系障害の原因となる。
レグパラ(シナカルセト)の作用機序
パラソルモンはカルシウム受容体を介して分泌が制御されている。
血中カルシウム濃度が上昇するとパラソルモン分泌は抑制されるが、上記のように腎不全患者の場合カルシウムに関係なくパラソルモン分泌が亢進してしまう。
レグパラはカルシウム受容体に作用し、パラソルモンの分泌を抑制する。
従来透析患者の副甲状腺機能亢進症に対してはパラソルモン分泌抑制目的として活性型ビタミンDを投与していた。
しかし、ビタミンDを投与するとパラソルモン分泌は抑制できても既に起こっている高カルシウム状態を悪化させてしまう場合がある。
これに対し、レグパラはカルシウム濃度を上げることなくパラソルモン分泌を抑制することができる。
レグパラの注意すべき副作用には低カルシウム血症がある。
低カルシウムに対しては活性型ビタミンD製剤を併用することでうまくコントロールする場合がある。