β遮断薬の違いと使い分け

β遮断薬の種類と使い分け カルベジロールとビソプロロールの比較

β遮断薬の種類(抜粋)

・カルベジロール(アーチスト)
・ビソプロロール(メインテート)
・インデラル(プロプラノロール)

※カルベジロール、ビソプロロールで処方の8割を占める



カルベジロール、ビソプロロールが使われる理由は後に述べる生命予後改善エビデンスと心不全に適応があること。
※心不全への使用に関する詳細はこちらも。


β遮断薬の分類

β遮断薬はβ1選択性α遮断作用ISA(内因性交感神経刺激作用)の3つの特徴により分けられる。

β1選択:末梢血管収縮や気管支収縮作用による副作用を軽減。
α遮断:末梢血管収縮抑制による降圧作用。
ISA:わずかにβ刺激作用を持ち、徐脈を防止する。

選択的β1刺激薬
・ビソプロロール (β12)=75:1
・アテノロール  (β12)=35:1
・メトプロロール (β12)=20:1

αβ遮断薬
・カルベジロール )=1:8  12)=7:1
・アロチノロール )=1:8 βは非選択

ISA(+)薬剤
・アセブトロール、セレクトール、カルテオロールなど
※ISA(+)薬剤での生命予後改善エビデンスはあまりない。 

生命予後エビデンス

β遮断薬は心不全、心筋梗塞後の死亡率を減少させる効果が大規模臨床試験で証明されている。

特にカルベジロールとビソプロロールの2剤にエビデンスが集中している。

主な臨床試験
・カルベジロール:US Carvedilol study、CARRICORN、COPERNICU
・ビソプロロール:CIBIS
・COMET:カルベジロールの死亡率がメトプロロールより優位に低かった。


心不全に使用する際の注意
・初期に一時的に心機能低下がみられる場合がある。(基本的には長期的に予後改善効果があるため継続)

・NYHA分類Ⅲ以上では原則入院時から投与、少量から、3日~2週間かけて増量していく。

・憎悪時でも中止しないほうが予後良好とする報告あり。





各薬剤の特徴は以下の通り。


カルベジロール(アーチスト)

・αβ刺激薬。
・α刺激作用による末梢血管収縮抑制作用あり。
・β1選択性は低く心機能抑制を抑制しすぎないため重度の慢性心不全に有用。
・心不全では1日2回、1回1.25㎎~10㎎。高血圧、狭心症等では1日1回10-20㎎。
気管支喘息に禁忌
・胆汁排泄型:腎障害でも血中濃度はあまり変化しない。
・食事の影響あり(用法は食後 Tmaxが食後のほうが遅い Cmax,AUCは差なし)
・エビデンスがビソプロロールより豊富といわれている。

ビソプロロール(メインテート)

・β1選択性12=75:1)
・β1選択制が高く心機能抑制作用が強いため軽度~中度の慢性心不全、頻脈がある場合に有用
・心不全の憎悪がやや高頻度。
・β2作用が弱いため低血糖リスクが小さい
・心不全では1回0.625~5.0㎎、1日2回。高血圧では1日1回5㎎。
・気管支喘息でも投与可能。
重度の末梢循環器障害に禁忌→末梢血管収縮抑制できるカルベジロールのほうが〇
・未変化体尿中排泄あり:中等度以上腎機能障害で血中濃度上昇
・食事の影響は受けない。

イデランル(プロプラノロール)

・β選択性なし、α刺激なし。
・半減期が短いため、頻脈発作時や甲状腺機能亢進症に対して頓服で処方される。
・片頭痛に対して適応あり。

その他

・β遮断薬は交感神経抑制作用により血圧を下げるため、ストレス性患者に対して有用。

・アロチノロールは振戦に対して適応あり。

まとめ

カルベジロール
軽度~重度まで使いやすい。喘息には×。腎機能に左右されない。食後投与。エビデンス豊富。

ビソプロロール
重度にはやや使いにくい。喘息は使用可能。頻脈に〇。低血糖リスク↓。


β遮断薬が向いている患者についてはこちらの記事参照。


 2017年2月27日

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