アトピーの基本治療 保湿剤の塗布順とプロアクティブ療法について

ステロイド外用剤とヒルドイドソフトの使用順は? プロアクティブ療法って?

ステロイドと保湿剤の順番

ステロイドとヒルドイドソフトなどの保湿剤の順序を調べると、ステロイドが先といった意見もあれば、保湿剤が先という意見も見ます。

マルホが医師に行ったアンケートによると、医師の指示としてはステロイドを先が49.9%、指示なしが20.8%、保湿剤を先が14.6%となっています。

ステロイドを先に塗る理由としては、ステロイド塗布後、保湿剤で覆うことでより効果を引き出す・先に直接塗ることで効果を上げるといったことを目的としているそうです。

しかし、ラットを用いた実験においては、ステロイドと保湿剤の順番で副作用に差は出なかったとの結果があり、このことから、副作用が同じ=吸収量に差はない=効果も同じと考えることができます。

外用剤は油脂性基剤→W/O型クリーム→O/W型クリームの順に吸収率が上がります。

基剤が油脂性基剤であれば、ヒルドイドソフト(W/O)などのクリーム剤と混ざったほうが吸収量が上がるため、先にステロイドを直接塗ったからと言って吸収量があがるわけではありません。

ただし、ステロイドの基剤がクリームで、先にワセリンなどの油脂性基剤軟膏を塗ってしまうとステロイドの吸収率は下がる場合があります。


ここで、次に考えることはステロイドの塗布範囲です。

ステロイドは通常炎症を起こしている部位にのみ塗布し、むやみに塗り広げないで使用します。逆に保湿剤は広く塗り広げて使うことが多いと思います。

上記より、ステロイドを先に塗ってから保湿剤を塗ると、保湿剤と一緒にステロイドも広範囲に塗り広げられてしまいます。

塗る順序で効果・副作用は変わりないですが、塗る必要のない部分にまでステロイドを塗れば当然その部位にも副作用が出る可能性が出てきます。

これを考慮すると、医師の指示がなければ保湿剤→ステロイドの順番、指示がある場合は指示通り使ってもらえばよいと思います。



次にアトピー治療におけるプロアクティブ療法について。


ステロイド外用剤のプロアクディブ療法

アトピーの基本治療

アトピーは季節やストレスなどにより悪化がみられます。アトピーの悪化がみられた場合は基本的にステロイド又はプロトピックで速やかに炎症を抑える必要があります。

ステロイド・プロトピックの使用により寛解し、その後使用をやめても症状がみられない場合は、ヒルドイドソフトなど保湿剤などでスキンケアを行います。


プロアクディブ療法

憎悪と寛解を薬返すような場合は、症状が改善しても週2回程度ステロイド・プロトピックを継続して使用するプロアクティブ療法が効果的と言われています。


以下はアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016を参考にまとめたものになります。

同ガイドライン中でプロアクティブ療法はエビデンスレベルAとされております。

アトピーは、見た目上症状(炎症)が改善していても炎症か残っており再燃を起こしやすい状態になっています。

プロアクティブ療法を行うことで残っている炎症もしっかり抑えることで再燃する可能性を低くすることができます。

憎悪がみられている間は連日しっかりステロイド等で治療する必要があるため、どのタイミングでプロアクティブ療法に移るかは医師に皮膚の状態を見てもらう必要があるため自己判断で使用回数は減らさないように。


抗ヒスタミンの是非

抗ヒスタミンなどは痒みを抑えるだけで、炎症を抑えるわけではないためエビデンスレベルB。

抗菌剤+ステロイド

リンデロンVGのように抗菌剤を含む薬剤があるが、通常炎症部位に感染症がある場合は内服等別の感染症治療を考えるべきであり、ステロイドと同時に塗布する必要はない。

その他

ステロイドは1日2回と1日1回で効果に差がないとするメタ解析が多数ある。ただし憎悪期は1日2回が一般的。

皮膚萎縮,毛細血管 拡張,ステロイドざ瘡,ステロイド潮紅,多毛,皮膚萎縮線条,細菌・真菌・ウイルス性皮膚感染症の悪化 などが時に生じうるが,皮膚萎縮線条を除いて多くは 中止あるいは適切な処置により軽快する。

プロトピックは以下の1日上限があるため注意。
13歳以上(50㎏以上):5g
2-5歳(20㎏未満):1g
6-12歳(20-50㎏未満):2-4g

 2017年2月6日

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