鼻から吸っても効果はあるのか?
添付文書の使用上の注意にも「口腔内への吸入投与にのみ使用すること」と記載がある。
ただし、年に数件~数十件は鼻から吸ってしまったと患者さんから連絡が入るらしい。
思わず笑ってしまいそうになるが、これは薬剤師の服薬指導が徹底されていないわけであって、笑っている場合ではない。(笑ったけど)
うちに来た処方箋で、イナビル 2本 経鼻吸入 って書いてあるのを1度だけ見たことがある。(もちろん間違いです)
でも、鼻から吸っても効果があるのではないか?
イナビルの添付文書を見ると、in vivoではマウスやフェレットを使って試験をしているため、経鼻投与での試験となっている。(動物に口からあれを吸わせるのは困難でしょうね、子供でも難しいのに)
上記試験では、経鼻投与により肺中ウイルス量の優位な減少がみられている。
よって、人間で鼻から吸ってしまったとしても多少効果はあると思われるが、経口と同じくらいの効果になるのか?
以下は経鼻(鼻呼吸)と経口(口呼吸)の吸収量(沈着率)を調べたデータである。(U.S.EPA, 2004)
このグラフは上気道(気管支より口側)に沈着してしまう量を示している。
沈着率が大きいと、その物質は上気道に付着してしまい、気管支より下(気管支~肺)に入ってこないことになる。
これをみると粒子径によって、経鼻だと吸収量がやや減ると思われる。
シムビコートなどのドライパウダー製剤の粒子径は2.5ugが多く、イナビルの粒子径もそれぐらいと考えると口からだとほぼ吸入できるが、鼻からだと40%近くが上気道に沈着してしまうと思われる。
以上より、鼻吸入では効果が落ちることはほぼ間違いないと思われる。
良い子にはまねさせないでください。
余談
イナビルは上手に吸えると薬が口に残らず、ほとんど味はしないが、吸入が弱いと苦味を感じる。
小さい子だと、1回目の吸入で嫌がってしまいきちんと吸えないことがある。
この場合は鼻からでも吸わせたほうがいいのかもしれないのかもしれませんね。
もしくはリレンザのほうが苦味が少ないので、吸入回数が問題にならない場合なら、初めからそちらにしてもらうのもありかと。