透析導入の基準値とラシックス投与

透析導入の基準 腎機能が残っていればラシックスは使える?

利尿剤は糸球体で濾過された水の再吸収を抑制することで尿量を増加させる。
※利尿剤まとめはこちら

一度糸球体で濾過されなければならないので、腎臓が機能していないと利尿剤を投与しても意味がない

では、透析を必要とするほど腎機能が障害されてしまっている透析患者さんに利尿剤は効果があるのでしょうか。


腎機能障害と透析

透析を行っている=腎臓は機能していないと思われがちだが、腎機能がまだ残っている場合が多い。

これは透析導入のタイミングによって異なる。

透析導入のタイミング

透析導入のタイミングは、合併症の有無・基礎疾患・年齢・生活環境など様々な要因を考慮しなければならず、腎機能(eGFR)のみで評価することが難しいため明確な数値の基準がない

厚労省が平成3年に提示した基準もあるが、腎機能をCcrで評価しており、高齢化が進んだ現在では、Ccrのベースが現在のほうが低値になる(高齢者=筋肉量↓=Ccr↓)と考えられ、優れた基準とは言えない。


以下は厚労省が提案している基準

透析導入適応の基準
以下の点数の合計が60点以上が透析導入が必要な状態

 (1) 症状・所見 
・ 水の貯留(むくみ・胸に水が溜まる)
・ 酸塩基電解質異常(高カリウム血症、酸の貯留) 
・消化管の症状(吐き気・嘔吐・食欲不振) 
・心臓の症状(呼吸困難・息切れ・心不全・著明な高血圧) 
・神経の症状(意識混濁・けいれん・しびれ)
・血液の異常(貧血・出血が止まりにくい) 
・目の症状(目がかすむ) 
このうち3つ以上の症状 = 30点、2つの症状 = 20点、1つの症状 = 10点 

 (2) 腎機能  
・持続的に血清Cr8mg/dl以上(あるいはクレアチニンクリアランス10ml/min以下)=30点 
・血清Cr 5~8mg/dl(Ccr 10~20ml/min未満)=20点 
・血清Cr 3~5mg/dl 未満(Ccr 20~30ml/min未満)=10点 

(3) 日常生活の障害の程度 
・ 起床できない高度 = 30点 
・著しい制限中等度 = 20点 
・運動・労働が出来ない軽度 = 10点 

10歳以下または65歳以上の高齢者または糖尿病、膠原病、動脈硬化疾患など全身性血管合併症の存在する場合は10点を加算する。 小児においては血清Crを用いないでCcrを用いる。

早期導入と晩期導入の比較

以前は尿毒症や電解質異常による合併症が予後を悪化させるとして早期の導入を推奨していた。

しかし現在では、ある程度の腎機能が残存している状態での早期導入は予後を悪化させるとするコホート研究やランダム化比較試験の結果が多くみられ、早期導入は見直されている。

これらの臨床試験結果を踏まえ、日本透析医学会では導入によるメリットがリスクを上回る場合、eGFR<8.0での導入が示されている。

また、eGFR<2.0では導入するように推奨されている。

透析患者と利尿剤

上記のようにeGFR<8.0、患者さんの状態によってはもっと早期に透析導入となることがある。

この場合、eGFRが悪くても利尿作用を示すとされているラシックスが高用量で投与されることがある。

どのくらい尿がでなくなったらラシックスを中止するかはDrによって判断が異なるようだが、私の知る病院では300mlを切ってくると中止になる人が多い。

添付文書上では無尿(100ml以下)では禁忌となっている。



まとめ

透析導入:eGFR<8で考慮(<2未満で強く推奨)

透析患者のラシックス投与:尿量<300mlで中止(添付文書は<100mlで禁忌)

 2017年3月28日

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