ポラキスとバップフォーの違い

ポラキスとバップフォーの有効性や副作用の違いは?

過活動膀胱(神経因性膀胱)に使用される抗コリン薬にはデトルシトール、トビエース、ベシケア、ポラキス、バップフォーと多数あります。

ポラキス、バップフォーはその膀胱収縮抑制作用を生かし、適応はありませんが小児の夜尿症に使われる場合もあります。

夜尿症ガイドラインにもポラキス(2-3㎎/日)、バップフォー(10㎎/日)の投与に関しての記載はあるが、有効性は確立していないとのことです。

普段うちではバップフォー+ミニリンメルトが多いのですが、今日はポラキス+ミニリンメルトで来ていました。

夜尿症に限らず、通常の過活動膀胱でもどちらもみることがあるので何が違うのか気になったので調べてみました。

薬理作用

共に抗コリン作用により、ムスカリン受容体を遮断し、膀胱収縮を抑制し、かつカルシウム拮抗作用も持っており直接平滑筋の収縮を抑制する。

受容体に対する作用の違い

ムスカリン受容体はM1~M5まであり、膀胱収縮にかかわるのはM2,M3、中枢にはM1が存在し、認知機能に係る。


ポラキス
膀胱のムスカリン受容体以外にも唾液線(膀胱の10.9倍)や大脳皮質(膀胱の13.9倍)のムスカリン受容体への結合親和性(抗コリン作用)も高く、解離も遅い。

また、ポラキスは脂溶性が高く、血液脳関門を通過してしまうため、高齢者においては認知機能障害の原因となるため注意。※1

ポラキスのみ高齢者への投与は可能な限り避けるべきとされている。※2


バップフォー
唾液腺や大脳皮質に対する抗コリン作用は膀胱に対するものと同程度であり、解離に関しては膀胱のムスカリン受容体には長時間結合するが、唾液腺に関してはすぐに解離する



このためポラキスのほうが口渇の副作用が多くなりそうですが、ポラキスが8.9%、バップフォーが9.0%と差はありませんが、ポラキスで起こる口渇のほうがよりひどく、バップフォーによる口渇は軽度との報告があります。


膀胱容積

最大膀胱容積(膀胱の広がり具合)に関しては、バップフォーがポラキスより優れています。(バップフォーIF)

つまり、膀胱に対する抗コリン作用はバップフォーのほうがポラキスより強いようです。

残尿量の差

ポラキスやバップフォーは膀胱収縮を抑制することで尿意切迫感を改善しますが、収縮を抑制してしまうことでうまく排尿できず残尿感が残ってしまう場合があります。

残尿量に関してバップフォーとポラキスを比較している試験がありますが、バップフォーでは増加がみられていないのに対し、ポラキスでは増加がみられてしまっています。


ただこれまた残尿感の副作用報告を見てみると、バップフォー0.6%、ポラキス0.2%となっており、ポラキスのほうが少ないです。

ポラキスのほうが全体的な作用がマイルドそうです

臨床成績の比較

過活動膀胱


ポラキス
神経因性膀胱56.7%181/319)、不安定膀胱57.1%96/168(ポラキスIF)

バップフォー
神経因性膀胱53.6%149/278)、不安定膀胱:70%(42/60)(パップフォーIF)
(使用咳咳調査だと神経因性、不安定ともに65%程度 n≒12000)

※尿漏れ、尿意切迫感の原因が神経からきていることがわかっている場合は神経因性膀胱、原因不明の場合は不安定膀胱。

ポラキスは使用成績調査の対象外のため対照人数が少ないデータしかありませんでした。

これを見ると、トータルでバップフォーのほうがやや優勢でしょうか。


夜尿症

今回の患者さんが夜尿症の方だったのでこちらのエビデンスも。

ポラキス

50%以上改善率は8.3%と不良(夜尿症診断ガイドラインより)

バップフォー
最終全般改善度では改善以上が 15.2(16 /105 )、やや改善以上48.6(51 /105 )(パップフォーIF)

冒頭で述べた通り、どっちもメタアナリシスの結果では有効性は見られていないのですが、使うとしたらバップフォーのほうがまだ有効性がありそうです。

イミプラミンやミニリンメルトによる改善率のほうは有効とのエビデンスあり。

(参考:夜尿症診断のガイドライン)


薬物動態

ポラキス
Tmaxは0.7時間と立ち上がりが早く、半減期が1時間と短い。
このため1日3回の投与が必要。

血液脳関門を通過してしまう。


バップフォー
プロピンベリン及びその活性代謝物のTmaxは約1.5時間、半減期は10~14時間と長い。
このため1回投与で十分。


夜尿症に使う場合、夜だけ効果が出ればいいならポラキスでのいいかもしれませんが、夜中~朝方には効果がなくなってしまうため、そのくらいの時間に失禁してしまう場合はバップフォーのほうが合っているんでしょうか。

有効性。副作用をみてポラキスを使う理由があまりないように思えます。

※1 過活動膀胱の病態と薬物治療
※2 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015

 2017年4月20日

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