ざ瘡の種類と治療薬

にきびの治療に用いる外用薬、抗生剤の使い分けは?

ニキビ(尋常性ざ瘡)は、皮脂が毛穴(脂腺性毛包)につまり、炎症を起こす慢性の炎症性皮膚疾患。

ニキビは炎症の状態、アクネ菌の増殖具合などによって適切な治療薬がある。

ニキビ(ざ瘡)の経過

ニキビは通常、面皰(めんぽう)→炎症性皮疹→嚢腫といった症状をたどる。

炎症が落ち着き、面皰のみとなった状態(維持期)でも炎症の再発予防のため治療が必要となる。

面皰:白ニキビ、黒ニキビ

皮脂の分泌が多くなり、毛穴(毛包)がふさがり、皮脂が溜まってしまっている状態。初期は白い状態(いわゆる白ニキビ)だが、時間が経過し、皮脂が更に溜まり表面に出てきて酸化されると黒くなる(いわゆる黒ニキビ)。

この状態ではまだアクネ菌は増殖していないが、毛穴がふさがり(嫌気状態)、皮脂が溜まっている状態のため嫌気性菌のアクネ菌が繁殖しやすい状態。

面皰の治療薬

主に用いられる薬剤は

・過酸化ベンゾイル(ベピオ、エピデュオ、デュアック)
・アダパレン(デュフェリンゲル)

面皰ではまだアクネ菌が増殖していないため抗菌剤は不要
無駄は抗菌剤の使用は耐性菌を生む可能性があるため避ける。

塞がってしまっている毛穴を治すために、皮膚剥離作用のある過酸化ベンゾイル(ベピオ、エピデュオ、デュアック)や角化(皮膚が固くなり、毛穴を塞ぐ)を正常化させるアダパレン(ディフェリンゲル)を使用する。

上記薬剤により効果がいまいちの場合、漢方(十味敗毒湯、清上防風湯)を用いることもある。


炎症性皮疹:赤ニキビ、黄ニキビ

炎症の程度により紅色丘疹、膿疱がある。

紅色丘疹は皮脂分泌、アクネ菌の増殖が進んでしまい、炎症が起こってしまっている状態。赤いニキビとなる。

膿疱は毛包が化膿し、炎症がひどくなった状態。黄色いニキビとなる。

炎症性皮疹の治療薬

主に用いられる薬剤は

・過酸化ベンゾイル(ベピオ、エピデュオ、デュアック)
・アダパレン(デュフェリンゲル)
・内服抗菌剤(ミノサイクリン、ルリッドなど)
・外用抗菌剤(ダラシンT、アクアチム、ゼビアックス)
・イオウ製剤(イオウカンフルローション)

炎症が軽度(ニキビが1~5個)の場合、内服抗菌剤は不要。また、外用剤も単剤でよいためエピデュオやデュアックはあまり用いらない。

中等度(ニキビが5~20個)~重度(20~50個)の場合、抗菌剤の内服が使用される。外用剤は2剤程度併用される。

通常3か月程度の治療が必要となる。


嚢腫:紫ニキビ

毛包の周りが皮脂により押し広げられ炎症がさらに悪化した状態。線維化も起こり硬結(硬くなった状態)が起こる。見た目は紫色のニキビ

嚢腫の治療薬

主に用いられる薬剤は炎症性皮疹の場合と同じ。

維持期

炎症が落ち着き、面皰が主体となっている状態。基本的には面皰を治療するのと同じ。

維持期の治療薬

主に使われる薬剤は面皰の場合と同じ。

ここでも耐性菌を作らないため抗菌剤は使用しない。(アクネ菌予防で抗菌剤を使わないように)

その他食生活、睡眠、スキンケア等を行う。(後半に詳しく記載)



各薬剤の特徴と有効性

次は各薬剤の特徴及び有効性について

外用剤(ビタミンA誘導体)

ディフェリンゲル(成分:アダパレン)

・角化した上皮を正常にし、毛穴の塞がりを改善する。
・効果が出るまでやや時間がかかるが、継続使用により再発予防が期待できる。
・全ての状態のニキビで使用される。
・使い始め2週間以内に紅斑、皮膚脱落、刺激感が高頻度で見られるが、通常継続使用にて落ちつく。(良くならない場合は使用中止)
・面皰形成予防のために顔全体に塗って良い。

過酸化ベンゾイル製剤(BPO製剤)

ベピオゲル(成分:過酸化ベンゾイル)

・皮膚剥離作用により面皰を改善すると同時に、強い酸化作用があるため殺菌作用も示す。
・通常の抗菌剤と違い、耐性菌の報告がないため長期使用でも問題ない。
・全ての状態のニキビで使用される。
・ディフェリンゲルほどではないが、紅斑、刺激感が見られることがある。


エピデュオゲル(成分:過酸化ベンゾイル+アダパレン)

・ベピオとディフェリンが混合された製剤。
・中等度以上の炎症性皮疹に用いられる。
・ディフェリンとベピオの併用により紅斑、皮膚剥離、刺激感が増強される場合があるため注意。
・抗菌剤は入っていないため長期投与も問題ない。
・ディフェリン、ベピオのニキビ減少率が33%だったのに対し、エピデュオは41%であった。

デュアック(成分:過酸化ベンゾイル+クリンダマイシン)

・ベピオと抗菌剤のクリンダマイシンが混合された製剤。
・中等度以上の炎症性皮疹に用いられる。
・クリンダマイシンを含んでいるため、耐性菌を作らないために12週を超える長期投与は避ける。

デュアック(成分:過酸化ベンゾイル+クリンダマイシン)

・ベピオと抗菌剤のクリンダマイシンが混合された製剤。
・中等度以上の炎症性皮疹に用いられる。
・クリンダマイシンを含んでいるため、耐性菌を作らないために12週を超える長期投与は避ける。

外用抗菌剤

ダラシンT(成分:クリンダマイシン)
アクアチムローション、クリーム(成分:ナジフロキサシン)
ゼビアックスローション(成分:オゼノキサシン)

・炎症性皮疹に用いられる(主にアクネ菌が増えている膿疱に用いる)
・上記3剤の有効性に差はほぼなし。
・耐性菌出現予防のため4週程度で改善がみられない場合や改善によりニキビが治ったら中止。

内服抗菌剤

ミノマイシン(成分:塩酸ミノサイクリン):A
ビブラマイシン(成分:ドキシサイクリン):A
ルリッド(成分:ロキシスロマイシン):B
オゼックス(成分:トスフロキサシン):C1
ファロム(成分:ファロペネム):B
※アルファベッドはガイドライン中の推奨度

・中等度以上の炎症性皮疹に用いられる。
・ミノマイシンが良く処方されるが、他より確実に優れているというエビデンスはない。(ミノサイクリン、ロキシスロマイシン、ファロペネムのいずれかを4週間内服した RCTではいずれの群でも開始前と比較して炎症性皮疹数は有意に減少し、3群間で有意差はなかった)
・上記以外にも様々な抗生剤が使われる。


その他

イオウカンフルローション

・OTCでもあるイオウ剤。
・脱脂作用、角質剥離作用により効果を示すが、明確なエビデンスはない。
・乾燥しやくすくなるためニキビ以外には塗り広げない。

スタデルム(成分:イブプロフェン)

・NSAIDsの1つで、抗炎症作用を期待して軽度の炎症性皮疹に対して使われる。

漢方薬

十味敗毒湯、荊芥連翹湯、清上防風湯

・他の治療が無効の場合に考慮される。
・どの状態のニキビに対しても使うことは可能。


ニキビのスキンケア

薬物療法のほか、ニキビの治療・予防にはスキンケアが有効とされている。

主なスキンケア方法に面皰圧出、ケミカルピーリング、スキンケアがある。

面皰圧出

・皮脂を出してしまうことでそれ以上炎症、アクネ菌増殖が進まないようにする。
・個人的には面皰の時点で自分で絞り出すとすぐ治ったが、本来患部を消毒し、レーザーや針で綺麗に穴をあけて跡が残らないようにするため、自分でやらないように。

ケミカルピーリング

・グリコール酸、サリチル酸マクロゴールを用いて、角質を剥離し、面皰を改善する。
・刺激感、乾燥を生じる。
・通常の薬剤治療が無効の場合に考慮される。

スキンケア

・1日2回の洗顔。(ぬるま湯、水)
・基礎化粧品(化粧水、乳液、クリーム)は有効とされている。
・なるべく低刺激性(ノンコメドジェニック)を選択するほうがよい。


参考:尋常性痤瘡治療ガイドライン 2016

各薬剤のエビデンスはガイドライン上に詳しくまとまっています。

 2017年4月12日

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