学校薬剤師の仕事
学校薬剤師は、学校保健安全法第16条により小学校~高校に設置が義務付けられています。学校薬剤師と聞くと、プールの検査や空気の検査、理科室にある薬品の管理などが思い浮かびますが、実際どこまでやるのでしょうか。
健康計画なんでいわれても、なにすればいいの?
浄化装置の掃除なんて薬剤師関係なくない?
大腸菌なんてどうやって調べるの?培養するの?
ザルツマン法なんて学校でできんの?
と疑問にお思いの方々、安心して下さい。
学校環薬剤師になったからといってこれらすべてを自分でやるわけではありません。
学校薬剤師の業務内容
学校保健安全法施行規則第24条には学校薬剤師の業務として以下のものが挙げられています。
・学校保健計画
・環境衛生検査 ←これが学校薬剤師の主業務
・健康相談
・保健指導
・医薬品、毒物、劇薬の管理
・健康管理に必要な用具及び材料の管理
・健康管理に関する専門的事項に関する技術及び指導
これだけのことが決められていますが、
実際に薬剤師が出向いて実施するのは環境衛生検査の一部になります。
学校薬剤師が全てやらなければならないのではなく、実施の手配をするのは学校であり、薬剤師はその一部を委託されて行うといった形。
例えば、学校保健計画についてですが、大抵の学校には学校保健委員会が設置されており、ここで学校保健計画の作成が行われます。
マニュアルを読むと薬剤師が一緒に作成するような表現がされていますが、実際に薬剤師が一緒に考えるというよりは、既に出来上がっている計画を見て、問題があれば助言を行います。
その他業務に関しても、現場の先生が日常的にやっている内容であり、問題・疑問があれば薬剤師に相談し、薬剤師は助言するといった形になります。
環境衛生検査
環境衛生検査は日常検査、定期検査、臨時検査に分けられます。
定期検査、臨時検査は以下の一覧の通りさらに細かく分類されております。(臨時検査は食中毒等必要時のみ)
定期検査、臨時検査は以下の一覧の通りさらに細かく分類されております。(臨時検査は食中毒等必要時のみ)
学校薬剤師は定期検査の一部を学校に出向いて行うことになります。
前述したように、実際にやるのは定期検査の中でもさらに一部であり、測定方法が複雑な物や専門的な検査機器が必要なものに関しては基本的に学校が民間に委託する形になっています。
どれを学校薬剤師がやらなければいけないという決まりはなく、民間委託でやるのか、薬剤師がやるのかは学校ごとに異なってきます。
法律上学校は全ての項目の実施が義務付けられていますが、実際の実施率は低いものだと60%前後となっているのが現状です。
法律上学校は全ての項目の実施が義務付けられていますが、実際の実施率は低いものだと60%前後となっているのが現状です。
ここからは薬剤師が学校で実際にやることが多い検査について述べていきます。
学校薬剤師として検査に行くまでの流れ
まず、各検査項目について述べる前に、学校に行くまでの簡単な流れを説明します。
1.学校薬剤師になると学校から新年度に連絡が来る。(こなければこちらから)
2.担当教員の方(主に用務員の方が多いようです)と日程調整を行う。
3.検査日が近くなったら管轄の薬剤師会の支部から器具を借りてくる。
4.当日検査実施、検査を終えたら助言を行う。
こんなところでしょうか。
前任者の方と連絡がとれるようなら具体的な流れを確認しておきましょう。
通常年に2回(夏、冬)で検査しに行くことが多いようですが、学校によってもっと頻繁に出向くこともあるみたいです。
測定する場所は、二酸化炭素のように生徒がいるところで測るものもあれば、明るさのようにどこでもいいものもあります。学校にいくと何処で測定してほしいか指示されると思います。
授業中にクラスに入ってやるなんて中々やりにくいですよね… 絶対じろじろ見られるし(笑)
測定する場所は、二酸化炭素のように生徒がいるところで測るものもあれば、明るさのようにどこでもいいものもあります。学校にいくと何処で測定してほしいか指示されると思います。
授業中にクラスに入ってやるなんて中々やりにくいですよね… 絶対じろじろ見られるし(笑)
生徒に見られてもしっかり任務を遂行できるよう、次は検査機器の使用方法、基準値について見ていきましょう。
各検査項目の検査方法・基準値
薬剤師が現地でやる場合が多い項目は以下の通り。
・換気(二酸化炭素)
・温度
・相対湿度
・浮遊粉じん
・気流
・一酸化炭素
・二酸化窒素
・照度、まぶしさ
・騒音レベル
・飲料水、水泳プール(すぐに測れる残留塩素濃度、pH)
これら以外も行う場合もあれば、上記内容でも学校側が事前にやってくれており、結果のみを見せてもらうこともあります。
それでは各項目について見ていきましょう。
換気
検査対象:二酸化炭素
基準値 :1500ppm以下
基準値 :1500ppm以下
測定回数:年2回
使用機器:検知管
使用機器:検知管
検知管の使い方ご存知ですか?
薬品の入ったガラス棒を、空気入れみたいのに付けて空気吸って二酸化炭素量を測定します。
機器に説明書がついているのでそれを見てください。
ものによって多少操作が異なりますので。
二酸化炭素濃度が基準値を超える場合は換気が足りていないので、喚起するように助言します。
二酸化炭素を1500ppm以下にするには4.4回/時間の換気が必要とされています。
こちらは授業中(開始~終了まで継時的に又は授業直後)に行います。
基準値は10~30℃ですが、最も学習に適している温度は冬季18~20℃、夏季25~28℃といわれています。
使用機器はアスマン通風乾湿計と記載されていますが、それと同等以上の測定器であれば良いとされています。(通常自動で簡単に測れるものを使っています。)
注意点としては、窓際、廊下側などで温度が異なるため数か所で測定すること。
薬品の入ったガラス棒を、空気入れみたいのに付けて空気吸って二酸化炭素量を測定します。
機器に説明書がついているのでそれを見てください。
ものによって多少操作が異なりますので。
二酸化炭素濃度が基準値を超える場合は換気が足りていないので、喚起するように助言します。
二酸化炭素を1500ppm以下にするには4.4回/時間の換気が必要とされています。
こちらは授業中(開始~終了まで継時的に又は授業直後)に行います。
温度
検査対象:温度
基準値 :10℃以上30℃以下
基準値 :10℃以上30℃以下
測定回数:年2回
使用機器:アスマン通風乾湿計
使用機器:アスマン通風乾湿計
基準値は10~30℃ですが、最も学習に適している温度は冬季18~20℃、夏季25~28℃といわれています。
使用機器はアスマン通風乾湿計と記載されていますが、それと同等以上の測定器であれば良いとされています。(通常自動で簡単に測れるものを使っています。)
注意点としては、窓際、廊下側などで温度が異なるため数か所で測定すること。
相対湿度
検査対象:相対湿度
基準値 :30~80%
基準値 :30~80%
測定回数:年2回
使用機器:アスマン通風乾湿計
使用機器:アスマン通風乾湿計
基準は30~80%ですが、人間が最も快適に過ごせるのは50~60%くらいだそうです。
こちらもアスマンでなくてもOKです。
普通アスマン通風計での湿度の出し方なんて覚えていないですよね。
こちらはストーブを使っていない時は省略可となっているので、教室での測定は冬季の1回になるかと思います。(夏季においては、実験室など燃焼器具を使用する部屋で行う)
基準値の根拠として、一酸化炭素は0.02~0.04%の部屋に1~3時間いると軽度の頭痛・吐き気がみられ、0.08%になると45分でめまい・吐き気・痙攣、2時間もいると意識障害がでるといわれています。
測定方法は器具があれば自動測定器でも大丈夫です。
一酸化炭素同様、夏季は燃焼器具のある部屋で行います。
測定方法はザルツマン法(二酸化窒素をいろいろ反応させ、最終的にザルツマン試薬とジアゾ化させて吸光光度を測定)となっていますが、これも今までの説明同様、自動測定器あります。
ただし、この装置での測定は30分かかるので、最初にこれをセットしてその間に照度や騒音、二酸化炭素などを測ると効率的です。
測定の結果0.06ppmを超えている場合は外でもう一度測定します。外で基準値を超えている場合は周りの工場などが原因の可能性があるため、学校がどうにかできる問題ではなくなってきます。
基準値ですが、教室は300Lx以上、コンピュータ室は500~1000Lxとされています。
測定場所は黒板の左上、左中、左下、中央上、ど真ん中、中央下、右上、右中、右下の9か所(要は9等分)+生徒の机9か所(窓際3、真ん中3、廊下側3)の計18か所を測定。
照度計は計りたいところに置くとすぐ数値がでるのでどんどん計っていきます。生徒がのぞき込むと暗くなっちゃうので注意。
騒音計はテレビとかでも見たことありますかね。線路の近くこんなにうるさいです的なニュースとかでキャスターさんがもっていやつです。
基準値の根拠は先生の声が大体65dBくらいだからだそうです。
こちらもアスマンでなくてもOKです。
普通アスマン通風計での湿度の出し方なんて覚えていないですよね。
浮遊粉じん
検査対象:PM10
基準値 :0.1mg/m3以下
基準値 :0.1mg/m3以下
測定回数:年2回
使用機器:デジタル浮遊粉塵計
使用機器:デジタル浮遊粉塵計
浮遊粉じんは平成29年度の改定で削除予定とのことです。
現時点ではまだありますが、H29の途中~30年度にかけてなくなるのではないでしょうか。
カタ温度計聞き覚えありますでしょうか?
大学の講義で一回使った記憶はありますが、もうすっかり忘れています。ある温度まで下がる時間を計測し、気流算出表もしくは計算式により求めます。
カタ温度計で計算できたらかっこいいかもしれませんが、微風速計(熱線風速計)ですぐ測れるのでこちらが主流じゃないでしょうか。
現時点ではまだありますが、H29の途中~30年度にかけてなくなるのではないでしょうか。
気流
検査対象:気流
基準値 :0.5 m/s 以下
基準値 :0.5 m/s 以下
測定回数:年2回
使用機器:カタ温度計、微風速計
使用機器:カタ温度計、微風速計
カタ温度計聞き覚えありますでしょうか?
大学の講義で一回使った記憶はありますが、もうすっかり忘れています。ある温度まで下がる時間を計測し、気流算出表もしくは計算式により求めます。
カタ温度計で計算できたらかっこいいかもしれませんが、微風速計(熱線風速計)ですぐ測れるのでこちらが主流じゃないでしょうか。
一酸化炭素
検査対象:一酸化炭素
基準値 :10ppm(0.01%)以下
基準値 :10ppm(0.01%)以下
測定回数:年2回
使用機器:検知管
使用機器:検知管
こちらはストーブを使っていない時は省略可となっているので、教室での測定は冬季の1回になるかと思います。(夏季においては、実験室など燃焼器具を使用する部屋で行う)
基準値の根拠として、一酸化炭素は0.02~0.04%の部屋に1~3時間いると軽度の頭痛・吐き気がみられ、0.08%になると45分でめまい・吐き気・痙攣、2時間もいると意識障害がでるといわれています。
測定方法は器具があれば自動測定器でも大丈夫です。
二酸化窒素
検査対象:二酸化窒素
基準値 :0.06ppm以下
基準値 :0.06ppm以下
測定回数:年2回
使用機器:ザルツマン法
使用機器:ザルツマン法
一酸化炭素同様、夏季は燃焼器具のある部屋で行います。
測定方法はザルツマン法(二酸化窒素をいろいろ反応させ、最終的にザルツマン試薬とジアゾ化させて吸光光度を測定)となっていますが、これも今までの説明同様、自動測定器あります。
ただし、この装置での測定は30分かかるので、最初にこれをセットしてその間に照度や騒音、二酸化炭素などを測ると効率的です。
測定の結果0.06ppmを超えている場合は外でもう一度測定します。外で基準値を超えている場合は周りの工場などが原因の可能性があるため、学校がどうにかできる問題ではなくなってきます。
照度、まぶしさ
検査対象:明るさ
基準値 :300~1000Lx
基準値 :300~1000Lx
測定回数:年2回
使用機器:照度計
使用機器:照度計
基準値ですが、教室は300Lx以上、コンピュータ室は500~1000Lxとされています。
測定場所は黒板の左上、左中、左下、中央上、ど真ん中、中央下、右上、右中、右下の9か所(要は9等分)+生徒の机9か所(窓際3、真ん中3、廊下側3)の計18か所を測定。
照度計は計りたいところに置くとすぐ数値がでるのでどんどん計っていきます。生徒がのぞき込むと暗くなっちゃうので注意。
騒音
検査対象:音
基準値 :窓閉:50 窓開:55dB以下
基準値 :窓閉:50 窓開:55dB以下
測定回数:年2回
使用機器:普通騒音計
使用機器:普通騒音計
騒音計はテレビとかでも見たことありますかね。線路の近くこんなにうるさいです的なニュースとかでキャスターさんがもっていやつです。
基準値の根拠は先生の声が大体65dBくらいだからだそうです。
飲料水、水泳プール
検査対象:飲料10項目、プール8項目
基準値 :省略
基準値 :省略
測定回数:年1回
使用機器:省略
使用機器:省略
飲料水、プールの検査項目を見るとものすごい数がありますが、実際行えるのは残留塩素とpHくらいです。(他は民間委託)
遊離残留塩素はDPD法で測定します。
試薬を入れると塩素濃度によって紫色に変化しますので、基準と見比べてどのくらいなのか確認します。
水道水は0.1㎎/L、プールは0.4㎎/L(かつ1.0mg/Lが望ましい)となっています。
pHはガラス電極法(ガラス棒水にいれると出るやつ)で測定します。 基準は5.8~8.6です。
飲料水の原水が井戸水だと項目が52項目になります。
貯水槽がない直結給水の学校は検査対象外となります。(殆どの学校はあります。小さい学校だと貯水槽がなく、一般家庭のように直結給水の場合あり)
以上、検査項目が多く、検査方法も小難しいものも多いですが、実際薬剤師がやることは意外と少ないと思います。
やることは地域差があるためやはり前任者や他の薬剤師がやっている学校に一度見学にいかせてもらうのがよいでしょう。
最後に金銭面の話ですが、市町村によって差があるため各市役所のHPで非常勤職員の報酬を調べてみてください。5万円前後が多いみたいです。