PPIの長期投与と副作用

PPIの長期投与で本当に上昇する副作用は?


PPIで胃酸を長期に抑制すると、カルシウムの吸収が落ちたり、胃酸による殺菌作用が低下したりと様々な異常が出る可能性があるとされている。


PPIの副作用

PPIの長期投与により生じる可能性があるといわれている副作用には以下のようなものがある。

・ビタミンB12欠乏:吸収に胃酸による活性化が必要なため

・鉄欠乏(貧血):酸性条件で吸収がよいとされているため

・感染症:胃酸による殺菌作用低下のため

・骨折(骨粗鬆症):胃酸によるカルシウム含有物の分解が抑制されるため


しかし、実際は上記副作用リスクが全て上昇するといった確実なエビデンスはない。

PPIの長期投与によりリスク上昇が確実といわれているのは腸管感染症とのこと。

サルモネラやカンピロバクター、ビブリオなど酸に弱いため、胃酸が抑制されることでその感染リスクが増加する。

その他の副作用に関してはリスク上昇のみを示す報告はないとのこと。

各副作用のエビデンスは以下の通り。(参考:日経DI2015.5)

ビタミンB12欠乏

通常食をとれている患者で見られることはほぼなし。


鉄欠乏(貧血)

鉄欠乏症に関連するデータはほぼなし。

鉄吸収は胃酸が必要と言われているのを目にするが、胃酸に還元作用(Fe3+→Fe2+)はなく、胃酸により鉄がイオン化され、その後ビタミンCなどの還元物質により2価の鉄となる。

骨折(骨粗鬆症)

研究によりリスク増加あり、なしともにあり、一貫性がない。

転倒による骨折リスクの増加がみられたとの報告※1もあれば、10年以上顕著な骨密度低下は見られなかった※2との報告もある。

※1J Bone Miner Res. 2014 Nov;29(11):2489-97.
※2Am J Gastroenterol. 2012 Sep;107(9):1361-9.

炭酸カルシウムなどをカルシウムイオンにし、吸収できるようにするためには胃酸が必要ではあり、添付文書では「海外の観察研究で骨粗鬆症に伴う股関節骨折、手関節骨折、脊椎骨折のリスク増加が報告されている」となっている。


市中肺炎

リスク上昇の報告なし。


ただし、認知症患者においてリスク上昇の報告(コホート研究)もあり。※1

※1Ho SW, et al. J Am Geriatr Soc. 2017;65:1441-1447.

腸管感染症

クロストリジウム・ディフィシルなどの腸管感染症リスク上昇。


これらの結果より、PPIの長期投与は安全性が確立されていると考えられており、日本老年医老学会は高齢者に対してH2ブロッカーよりPPIを推奨している。

 2017年4月4日

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