マクロライド系抗生剤の違いは?
・エリスロマイシン(エリスロシン)
・クラリスロマイシン(クラリシッド、クラリス)
・アジスロマイシン(ジスロマック)
ロキシスロマイシン(ルリッド)もぼちぼち処方を見ますが、上記3薬剤の違いや特徴についてまとめました。
共通事項
マクロライド系は静菌的抗生剤であるため、髄膜炎、心内膜炎、好中球減少時などの重篤な感染症のときは原則使用しない。
世界的に肺炎球菌に対する耐性化が問題となっており治療できないことが多い。
古い順に
エリスロマイシン→クラリスロマイシン→アジスロマイシン
となっており新しくなるにつれて消化器系の副作用が減り、半減期が長くなっていく。
エリスロマイシン(エリスロシン)
スペクトラム
グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌への耐性化は深刻)
グラム陰性菌(インフルエンザ菌、モラキセラ)※腸球菌には効果弱
非定型肺炎(マイコプラズマ、クラミドフィラ、レジオネラ)
特徴
14員環系で、3種類の中で唯一注射剤がある。
現在耐性化が進み内服薬はほとんど使われることはない。(小児に対してDSはよくみますが意味ないのかな?)
静脈注射による非定型肺炎のカバーが主体。
長期少量投与による抗炎症作用は認められている。
CYP阻害作用が強いため、併用禁忌、注意多数。
副作用(市販後)
嘔吐、吐き気(1.2%)、下痢(0.9%)
クラリスロマイシン(クラリシッド、クラリス)
スペクトラム
グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌への耐性化は深刻)
グラム陰性菌(インフルエンザ菌、モラキセラ)
非定型肺炎(マイコプラズマ、クラミドフィラ、レジオネラ)
非定型抗酸菌(クラリスロマイシン+リファンピシン+エタンブトール)
ピロリ菌(クラリスロマイシン+アモキシシリン+PPI)
特徴
14員環系で、抗菌力はエリスロマイシンと同等とされているが組織移行性はクラリスロマイシンのほうが優れている。
エリスロマイシンよりは弱いが、それでもCYP阻害作用が強いため併用禁忌、注意多数。
副作用(市販後)
発疹(0.18%)、下痢(0.14%)
アジスロマイシン(ジスロマック)
スペクトラム
グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌への耐性化は深刻)
グラム陰性菌(感受性があれば細菌性腸炎にも使用される)
非定型肺炎(マイコプラズマ、クラミドフィラ、レジオネラ)
特徴
15員環系で、グラム陰性菌に対する抗菌力は3つの中で最高。
特にクラミジア、マイコプラズマに強い抗菌力を示す。(クラミジアは1g1回の単回投与で治療可能)
他の2剤と比べCYP阻害が弱く併用禁忌はなし。
3日間の投与で7日間効果が持続。
副作用(市販後)
下痢(0.91%)、嘔吐(0.4%)
まとめ
エリスロシン:耐性化深刻 消化器系副作用多い
クラリシッド:CYP阻害はエリスロシンより弱いがそれでも強め
ジスロマック:CYP阻害は弱く、併用禁忌はなし
参考:感染症まるごとこの一冊 南山堂