ジェミーナ、ルナベル、ヤーズの違い

LEP製剤の比較 血栓リスクや男性ホルモン作用の違い

以前ルナベルとヤーズについて比較してみましたが、新たにジェミーナが薬価収載されたので更新。

女性ホルモン関係の薬についての基本はこちらで。


成分の比較

ルナベルLD 

卵胞ホルオン:エニチルエストラジオール(0.035㎎)※
黄体ホルモン:ノルエチステロン(1㎎)
 ※ルナベルULDは0.02㎎

ヤーズ 

卵胞ホルモン:エチニルエストラジオール(0.02㎎)
黄体ホルモン:ドロスピレノン(3mg)

ジェミーナ 

卵胞ホルモン:エチニルエストラジオール(0.02mg)
黄体ホルモン:レボノルゲストレル(0.09mg)


ルナベルULDはエチニルエストラジオールを減量させ0.02㎎となっており、3剤すべてエチニルエストラジオールは同じものがある。



血栓リスクの比較

卵胞ホルモンについて

卵胞ホルモンは肝由来の凝固因子を増加させ、抗凝固作用のあるアンチトロンビンⅢを減らしてしまうため、血栓のリスクとなる。※1

卵胞ホルモンは3剤ともエチニルエストラジオール。
含量はジェミーナ、ヤーズのほうが少ないため血栓リスクはヤーズ、ジェミーナのほうが少ないと考えられそうですが、報告をみるとそうでもない。

ヤーズは発売4年で因果関係が否定できない血栓症による死亡者が3名報告されブルーレターが出されました。(PMDA:ヤーズブルーレター)

この結果は卵胞ホルモンだけでなく、黄体ホルモンが血栓リスクに関与しているからでしょうか?



黄体ホルモンについて

黄体ホルモンもまた血栓のリスクに関わっている。
その機序として、アンドロゲン作用によるLDL-コレステロール上昇、HDL-コレステロール低下等が考えられている。※2

コレステロール上昇による血管障害となると動脈硬化なので、卵胞ホルモンの場合と血栓の種類が異なってくる。
卵胞ホルモン:抗凝固系阻害=静脈血栓
黄体ホルモン:動脈硬化亢進=動脈血栓
ですが、黄体ホルモンでも静脈血栓のリスク上昇は報告されている。簡単に区別はできないようです。

黄体ホルモンとしてレボノルゲストレルを使用しているジェミーナは血栓症リスクが低いと海外では報告されているそうです。※3,4

※2資料ですと、黄体ホルモンの世代が古いほうが血栓リスクが少なかったとのデータが示されている。

ルナベルは第1世代のノルエチステロン、ジェミーナは第2世代のレボノルゲストレル、ヤーズは第4世代のドロスピレノンなので、
ルナベル<ジェミーナ<ヤーズになりそうですが…どちらでしょう。

レボノルゲストレル(ジェミーナ)のほうが低いとする試験結果と、ノルエチステロン(ルナベル)のほうが低いとする試験結果両方ともあるようですね。



血栓リスクの比較

では、実際の臨床試験の結果みてみます。
卵胞ホルモンは同成分なので、比較するのは黄体ホルモンになってきます。(プロゲスチン=人工の黄体ホルモン)
こちらを見るよヤーズの成分が群を抜いて静脈血栓リスクが高い
ルナベルとジェミーナは同程度。

続いては先ほどの世代に関する比較データ。
ジェミーナの成分レボノルゲストレルがベースになっている。
確かに古い世代のノルエチステロンが一番低いが、ICが0.36-1.6と広範囲。

インタビューフォームにあるように、ジェミーナ優勢のデータもあるのでこれだけでは判断するのは・・・といった感じでしょうか。



服用方法※添付文書より


ルナベルLD、ULD 

1シート:21錠 21日間服用後、7日間休薬が1サイクル。 
開始:月経1~5日目
21錠シート1枚+7日休薬=1サイクル(28日間) 

 ヤーズ、ヤーズフレックス 

ヤーズ
 1シート:28錠 最後の4錠がプラセボで、この間が休薬期間となる。
開始:月経1日目
28錠シート1枚=1サイクル(28日間) 

ヤーズフレックス 
1シート:28錠 すべて実薬 最大120日連日投与可能(次のサイクルまで4日間は休薬) 
開始:月経1日目
28錠シート4枚+8錠+4日休薬=1サイクル(124日) 

ジェミーナ 

1シート:21錠、28錠シートの2種類が発ある
開始:月経1~5日目
用法は21日間服用後7日休薬にするか、77日間服用後7日間休薬の2パターンある。
・21錠シート1枚+7日休薬=1サイクル(28日間) 
・28錠シート2枚+21錠シート1枚+7日休薬=1サイクル(84日間)


有効性の比較

月経困難症に対して3剤共にプラセボ対照二重盲検試験が行われていますが、月経困難症スコアの変化量は以下の通り。

ルナベルULD:-1.0【IC:-1.47~-0.43】 月経困難症159例
ルナベルLD :-1.2【IC:-1.7~-0.6】 月経困難症107例
ヤーズ:-0.92【IC:-1.49~-0.34】 月経困難症119例
ヤーズフレックス:プラセボ比較見つからず
ジェミーナ:-1.8【IC:-2.1~-1.6】 月経困難症245例

直接比較ではないので参考程度に。

有効性のみでなく、消退出血をなるべく起こさないほうがQOLが良いことを考えると、ヤーズフレックスやジェミーナの連続投与が良いのかと思います。(途中で不正出血が起こる割合も多いですが)



アンドロゲン作用

ルナベルの成分ルエチステロンは弱いながらアルドステロン作用がある※5

ジェミーナのレボノルゲストレルは第1世代のノルエチステロンより黄体ホルモン作用を強力にしたのだが、アンドロゲン作用も強くなってしまっている。※5,7

一方のヤーズのドレスピロンは男性ホルモン作用はほぼない※6

→ヤーズ<ルナベル<ジェミーナ

このため、ヤーズはプロゲステロン活性のみが働き、にきびにも有効とする報告もある
また、アンドロゲンは前述したとおり、動脈硬化を亢進すると考えられている。



作用機序

前の記事にも書きましたが、卵胞ホルモンと黄体合成ホルモンとの配合剤服用中は、フィードバックによりエストロゲン、プロゲステロン分泌が抑制されることで、これらのホルモンによる子宮内膜増殖、排卵が抑制され、いわゆる生理痛が軽減される。(下記図)

ルナベル・ヤーズ・ジェミーナ

内因性エストロゲン、プロゲステロン抑制

子宮内膜増殖抑制、排卵抑制

プロスタグランジン類産生抑制

子宮収縮抑制 = 生理痛緩和

少量のエストロゲン、プロゲステロンにより視床下部、脳下垂体に負のフィードバックがかかり、ゴナドトロピン(FSH,LH)の分泌も抑制され、排卵も抑制される。

ただ、ルナベルのインタビューフォームを見るとFSHは抑制されない(以下IFより)


健康成人女性 14 名にルナベル配合錠 LDn=7)又は ULDn=7)を月経 3 日目から
21 日間反復投与し、血清中の卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモンの濃度を測定
した。
ルナベル配合錠 LD 又は ULD 投与により、血清中黄体形成ホルモン(LH)濃度の低下は認められたが、血清中卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度への影響は認められなかった
LHだけ抑えられれば排卵は抑制できるんでしょうか?
ジェミーナを見ると、FSHも抑制されておりますが・・・


まとめ

成分
卵胞ホルモン:共通
黄体ホルモン:3剤とも異なる

用法
ジェミーナ、ヤーズフレックス:28日を超えての投与可能
その他は28日周期
ジェミーナは同製剤で選択可能

血栓リスク
ジェミーナ≦(≧?≒?)ルナベル<ヤーズ

アンドロゲン作用
ルナベル<ジェミーナ<ヤーズ

参考
※1 第66回⽇本産科婦⼈科学会学術講演会 東京国際フォーラム 2014.4.17 
※2 東京女子医科大学 産婦人科学助教授 日産婦誌54巻9号  
※3 ジェミーナインタビューフォーム
※4 日経メディカル 2018.8.24 国内初、レボノルゲストレルを含む月経困難症治療薬 
※5 持田製薬 プロゲスチンの世代分類
※6 ヤーズインタビューフォーム
※7 Diagnosis, Treatment and Management of Gynecologic Diseases 日産婦誌61巻10号
 2017年5月5日

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