歯科治療前のビスホスホネートの休薬期間

歯科治療の前後2ヵ月休薬が基本? 顎骨壊死との関連性


先日、ボナロン服用中の患者さんが来局しました。

近々歯科治療を予定しているとのことで先生に相談したら、別にやめなくてもいいけど気になるなら12回やめていいよと言われたそうです。

歯科治療時のビスホスホネート製剤の休薬は以前から賛否両論あるですが、休薬期間はしっかり決められているのでしょうか。

とりあえずメーカーさんに問い合わせてみたところ、
2016年各学会で意見の統一が行われて、現在はビスホスホネート製剤を4年以上継続服用している場合、歯科治療の前後2ヵ月休薬することになっている
といった内容の回答がありました。

何のことを言っているんでしょうか・・・
調べてみるとこんなものが出てきました。

ビスフォスフォネート関連顎骨壊死に対するポジションペーパー
(ビスフォスフォネート関連顎骨壊死検討委員会)

この委員会はビスホスホネート製剤の顎骨壊死に関する正しい情報提供、予防策や対応策について統一見解を出すために、日本骨粗鬆症学会、日本骨代謝学会、日本歯周病学会等協力のもと、骨研究を専門とする各科医師により構成されてたそうで。

この内容をもとにまとめてみました。

顎骨壊死の発生機序

明確な機序はわかっていないが、発生のリスクファクターとして以下のものが上げられている。

・口腔衛生の不良
・歯周病や歯周腫瘍などの塩素付疾患の既往歴
・注射ビスホスホネート>経口ビスホスホネート※1
・窒素含有ビスホスホネート>非窒息含有ビスホスホネート※2 などなど…

1 2012年のポジションペーパーだと注射>経口となっているが、ボノテオの経口、注射においてリスクに差はなく、2016年ではこの項目の記載はなし。
2よく見るビスホスホネートは全て窒素含有、非含有はダイドロネル、クロドロネートのみ。

休薬期間

まず前提として、休薬することで顎骨壊死を防げるという明確なエビデンスはなく、休薬を積極的に支持する根拠はないとしている。

ビスホスホネート製剤投与中の歯科治療は避けるべきかということに関してもその是非を確定しているものはない。

この前提条件及びリスクファクターを考慮しつつ、委員会はFDAAAOMSなどの海外グループが発表している以下の休薬期間及びその対象に賛同している。

休薬が必要

・ビスホスホネート製剤を4年以上継続している場合、治療前後2ヵ月間休薬。(2016)
・ビスホスホネート製剤投与3年未満だがリスクファクターがある場合。(2012年版)

休薬が不必要

・ビスホスホネート製剤継続3年未満かつリスクファクターがない場合原則休薬は必要なし。(2012年版) 

判断困難

・継続3年未満でもリスクファクターがある場合は判断が難しく、歯科治療の内容及び各医師の裁量となってくる。(2012年版)


以前のポジションペーパーでは注射剤の場合継続期間に関わらず休薬不要となっていたが、20122016年版にはその記載がなかった。

また、休薬期間が長ければ長いほどリスクが減るといった報告もあり、2012年版では3か月以上の休薬と記載されていた。

その他

休薬の必要がないという意見がでるのは、やめることによる通常の骨折リスク増加のほうが、やめたときの顎骨壊死予防リスクを上回っているという報告があるため。

ビスホスホネート製剤だけでなく、デノスマブ(ランマーク、プラリア)でも顎骨壊死の報告があることから、骨吸収に関わる薬剤により顎骨壊死リスクが高まる可能性も示唆されている。

感染症は顎骨壊死に大きくかかわっているため、歯科治療後の感染予防が重要となってくる。

20122016でも内容が結構変わっていますね。
なかなか一致したエビデンスがないことが伺えます。

まとめ

休薬する場合:4年以上ビスホスホネート製剤を継続している場合は歯科治療の前後2ヵ月休薬


ただし、休薬による顎骨壊死リスク低下の明確なエビデンスはなく骨粗鬆症の状態、歯科治療の内容、医師の考えによって変わってくる。

 2017年6月2日

関連記事