ラミシールとニゾラールの違い

抗真菌薬の外用剤ラミシールとニゾラールの有効性に差はある?

以前水虫に対してはラミシール(テルビナフィン)が一番人気(処方が多い)という記事を見かけました。

2番人気はニゾラール(ケトコナゾール)でした。
今回はこの2剤の違いについて調べてみました。


基本情報

剤形

ラミシール
クリーム、外用液、外用スプレー、(125㎎錠)

ニゾラール
クリーム、ローション

適応(外用のみ)

ラミシール
白癬、皮膚カンジダ、癜風


ニゾラール
白癬、皮膚カンジダ、癜風、脂漏性皮膚炎


脂漏性皮膚炎に対してはニゾラールしか適応がない。
脂漏性皮膚炎の原因は明確ではないが、マラセチアという真菌が関与していると考えられている。

マラセチアは10種類以上存在し、脂漏性皮膚炎に関わっているのはマラセチア・フルフルと教わったことがある。

かわいい名前のこいつだけではなく他の種類も関わっているみたいですが。

ラミシールにはスプレータイプがある。
手が汚れなくて使いやすいらしい。(見たことないです。)

作用機序

両剤とも真菌の細胞膜の成分であるエルゴステロールの合成を阻害する。
その阻害過程が微妙に違うだけ。

ラミシール(テルビナフィン)

スクアレンのエポキシ化(Oが付く反応)の段階で真菌エルゴステロールの生成を阻害する。

ニゾラール(ケトコナゾール)

CYPによるラノステロールのメチル化を阻害することでエルゴステロールの生成を阻害する。

この違いが何だって話ですが…
耐性機構を考えるときには必要ですかね。

白癬菌に対しては今のところ問題となるレベルの耐性菌は見られないみたいですが。

感受性の比較

もっともよく処方される白癬菌に対する感受性を比較。


T.rubrum(白癬)

ラミシール:0.003μg/ml
ニゾラール:0.46μg/ml

T.mentagrophytes(白癬)

ラミシール:0.003μg/ml

ニゾラール:1.18μg/ml


(各インタビューフォームより)

ただし、以下論文ではT.mentagrophytesに対してはニゾラール0.0625、ラミシール0.5となっており、ニゾラールのほうが感受性が良い結果となっている。
T.rubrumに対しては特に差はないとされている。

そしてこっちでは使用したT.mentagrophytes(49株)全てラミシールのほうが感受性が良かったとなっている。

耐性は地域差もあるのでその辺の違いなんでしょうか


初めに述べた脂漏性皮膚炎の原因と考えられているマラセチア・フルフル(Malassezia furfur)に対してはラミシール0.2~0.8(μg/ml)、ニゾラール0.51(μg/ml)となっており、ラミシールは適応がないだけで効果はありそうです。(各IF)


副作用

抗真菌の外用剤は割と接触性皮膚炎の副作用が多いと効きますが、この2剤は以下の通り。


ラミシールクリームor外用液

使用成績調査:2018例中14件(0.69%)

ニゾラールクリーム

使用成績調査:6346例中件97件(1.5%)

ニゾラールはローションも1.4%と同じくらい。



有効性に関しては、白癬菌でラミシールが70-90%、ニゾラールが80-90%となっている。(各IF)

先ほどの感受性と合わせてどちらでもよい良いような気がします。

ちなみにラミシールは1日1回と1日2回で有効性に差はなかったとのこと。


 2017年6月22日

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