グレースビットとジェニナックの違い

ニューキノロン系薬剤グレースビットとジェニナックの使い分けは?

2000年代に販売開始されたグレースビット(シタフロキサシン)とジェニナック(ガレノキサシン)ですが、使い分けは何かあるのでしょうか。


適応症の比較

グレースビット


咽頭・喉頭炎、扁桃炎 (扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎、膀胱炎腎盂腎炎、尿道炎、子宮頸管炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎

ジェニナック

咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎


グレースビッットは呼吸器系に加え、尿路感染、歯科領域にも適応を獲得している。

ただし、ジェニナックの適応菌を見ると大腸菌は入っているので効果はあるでしょうね。抗菌力を後で見てみます。

用法・用量

通常量

グレースビット
1回50㎎を1日2回又は1回100㎎を1日1回
不十分な場合1回100㎎を1日2回

ジェニナック
1回400㎎を1日1回


腎障害・透析患者への投与量

グレースビット
30<Cr<50:1回50㎎1日1回
10<Cr<30:1回50㎎2日に1回
透析:透析で23%除去されるとの報告あり。1日1回50㎎透析後又は1日1回100㎎透析日のみ(Tsuruoka S,et al:Ther Apher Dial 17:319-24,2013)

ジェニナック
Cr<30:AUC50%増加がみられていることから1回200㎎から開始する。
透析:通常用量でAUC,Cmaxの増加は見られないため通常用量でOK


キノロン系は濃度依存なので通常1日1回のほうが抗菌力が高く、耐性化を抑制できると言われているが、グレースビットは発売当初1日2回でした。

その後1日1回100㎎投与でも1日2回と有効性に差がないことが確認されたため、1日1回の用法が追加された。

クラビットの500㎎が承認されたのが2009年4月だそうなので、ちょうど時期的に1日1回にしていこうという動きがあった境目の時期なんですかね。

ジェニナックのほうがグレースビットよりちょっと販売遅いけどこっちは初めから1日1回ですが…

キノロン系は1日1回の印象しかなかったので、グレースビット分2を見るといつも違和感。


抗菌力

肺炎球菌

市中肺炎、中耳炎、副鼻腔炎などの原因菌で、近年マクロライド耐性菌が増加している。
肺炎球菌による肺炎の場合、基本はペニシリン系ですが、ペニシリン耐性の場合キノロン系を使う。(市中肺炎診療ガイドライン)


肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae ATCC 49619)に対するMIC
グレースビット:0.025(ug/ml)
ジェニナック:0.05(ug/ml)

肺炎球菌に対するブレイクポイントはおおむね2(ug/ml)なのでどちらも十分効果がありそうです。

※ブレイクポイント:有効と考えられるMICの値。米国臨床喫準協会(CLSI)や日本化学療法学会など様々な機関が出している。

大腸菌

単純性膀胱炎(基礎疾患のない膀胱炎)の70%以上が大腸菌によるもの。(プロテウスやクレビシエラ属などを含めグラム陰性桿菌=腸内細菌が約8085%、グラム陽性球菌は約1520%に検出)

基本はセフェム系で90%が感受性ありだが、ESBLという第3セフェム系に耐性を示す耐性菌の場合、カルバペネム系やキノロン系が使われる。(ただしESBLの70%近くがキノロンにも耐性と言われている)

2011年のJAID/JSC 感染症治療ガイドラインではキノロン系が第一選択となっていたが、キノロン耐性発生抑制のために使用は抑えるべきと考えられている。(JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015)



大腸菌(E.coli)に対するMIC(臨床分離株)
グレースビット:0.06~8(ug/ml)
ジェニナック:0.00625~100(ug/ml)


大腸菌(ESBL)に対するMIC
グレースビット:NO DATE
ジェニナック:0.1~6.25(ug/ml)

膀胱炎に対するキノロン系のブレイクポイントはおおむね4(ug/ml)なのでジェニナックはESBLに対しても有効そう。

グレースビットは臨床で見られる大腸菌のほぼすべてをカバーできそうなデータ。
ちなみに各インタビューフォームのE.coliに対するレボフロキサシンのMICを見ると、グレースビットIFでは0.06~64、ジェニナックIFでは0.01257~100となっている。

薬物動態

代謝

グレースビット
腎代謝:48時間以内に70%が未変化体で尿中排泄。

ジェニナック
肝・腎代謝:24時間以内に39%、72時間以内に49%が未変化で尿中排泄。半分は糞便中。


用法の項目を見てわかるように、腎障害時にはジェニナックのほうが使いやすそうです。(クラビットもいろいろ調整が必要なので注意。)

組織移行

どちらも血漿中濃度と同程度まで移行しており、良好な組織移行性がわかる。
レボフロキサシンもおおむね1以上なのでそこまで突出した特徴じゃないようですが…


 2017年6月22日

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